21話 篶成 vs 『NOT』
「先輩!」
「波野!先行け!」
一瞬で目の前に現れた篶成に対して、相葉は身体を向け戦闘態勢をとった。
新人の波野に『NOT』のメンバーを何人も薙ぎ倒すこの男の相手をさせた所で勝敗は目に見えている。その為、一先ず波野を先に行くように促す。
しかし篶成はそれを許さない────
護衛人の報酬としてハルネから情報と金を貰うのだから、中途半端な仕事をする事は街の何でも屋としてのプライドが許さない。
篶成は地面を強く蹴ると、相葉の横を軽々と横切り、先に奥へ行こうとしている波野の元へ向かった。
俊足────その言葉が異様に似合うスピードで駆け出した篶成はあっという間に波野の背後に到着し、そのまま波野の首根っこを捕まえた。
────嘘でしょ!?
『NOT』に所属しているだけあって波野も運動神経には自信がある方なのだが、目の前の怪物に常識は通用しない。
一瞬で追い付かれた波野は本能的に篶成には勝てないと悟ったのか首根っこを掴まれても特に抵抗する事は無かった。
それどころか両手を上げて降参の意を示している始末である。
そんな波野を見て篶成は相手に攻撃の意思は無いと判断したのか、攻撃よりも会話を優先させる。
「お前ら、全員同じような服着てるって事は仲間だろ?何が目的だ?」
篶成の問いに対して波野が取り敢えず出任せの嘘を言おうとしたのだが────
「そいつを離せ」
相葉は腰から拳銃を取り出し、篶成に突き付けた。
地下通路に銃声が響く事を危惧して銃の使用は控えていたが、篶成程の怪物が相手となると躊躇っている場合ではない。
ブレーカーを落とし、会場を混乱の渦に陥れると言う目的は達成しているが、まだ任務を完遂した訳ではない。
ハルネの用意した景品とやらを壊し、さらなる混乱を招く為には目の前の怪物は倒さなければ行けない。
相葉は拳銃を構えながらジリジリと篶成に近付いていく。
「離さないなら撃つぞ」
「俺の手の中にいるこの男も巻き添えを食らうかも知れないぞ」
「生憎俺達は仲間の死に些か無頓着でね。そんな脅しは通用しないさ」
「死に無頓着ね……その割には逃げろとか命令すんだな」
「後輩だからな。けどこの状態になれば関係ないさ」
一歩、また一歩篶成に対して相葉は近付いていくが、篶成が波野を離す気配はまるで無い。
相葉はこれまで相手をした中でも圧倒的に肝が座った男だと感心しながらも、いよいよ引き金を握る右手に力入れていく。
狙うは篶成の眉間────相葉は呼吸を整えながら標的を定める。
ここなら間違いなく当てれると言う所まで相葉が近付くと、ピタリと動きを止めて一撃に集中する。
俺に当たるかも知れない────という不安が拭えない波野は身体中に汗を滴らせている。
波野は相葉を信じてはいるが恐怖には勝てなかった。
ましてや後ろにいるのは先程から超人的な動きを連発させている怪物である。
即座に自分を盾にされたらきっと即死するだろう。
神に祈る他無い……そう考えた波野はそっと目を閉じた。
そしてその瞬間は訪れる────
相葉は右手に力を込め、鉛玉を一発放つ。
バァン!という音が硝煙と共に地下通路に響き渡る。
そして篶成は────
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