15話 蠢く者達
ギャレスに手錠が掛けられた頃────
「あれ、あのガタイの良い人負けたっぽいよ?」
「狂人か……混乱を招くのはいい事だが、警官の警戒がこの段階から強まるのは困るな」
パーティー会場で待機していた『NOT』のメンバーは一連の流れを見た後に深い溜息を溢した。
もっとも、新入りの乖穢はいつも通りのテンションなのだが……
「こりゃあハルネって人の暗殺は困難を極めそうだね?これから護衛人数は増えるだろうし。追分運がないな〜」
「承知している。後、貴様は場の空気を壊すからそれ以上口を開けるな」
そんな乖穢の態度を諌めつつ、『NOT』のメンバーの一人は今後どう動くべきかを思案する。
場内が混乱の渦に包まれている以上、逆にハルネを殺すなら今が最大のチャンスと言っても差し支えはないだろう。
しかしハルネの周りにはギャレスのせいで護衛の警官が何人も存在しており、今ハルネを狙おうものなら警官達も何人か犠牲になってしまう。
そうなれば、避難をしている参加者達からさらなる悲鳴が飛び交い、事はどんどん大きくなって行くだろう。
故にまだ避難誘導が終わっていない中狙うのはナンセンスだろう。そこまで事を大きくするメリットよりも、自分達に降り掛かる様々なデメリットの方が多い。
さらに言えば、地下組の作戦が完了するまで下手に動く事はあまり得策ではないだろう。
「一先ず待機だ。市民誘導と地下組の作戦が終わったタイミングで動き出すぞ」
「ん〜、それだと時間がかかりすぎない?」
「何?」
乖穢のわざとらしい態度を装った質問に対して、やはり『NOT』の男は何処と無く苛立ちを募らせながら言葉の意味を問う。
すると乖穢は口元を更にわざとらしく笑わせ、言葉を続ける。
「他人任せじゃ人殺しなんて完遂できないよ。常にイレギュラーに対応しなきゃね?」
「……何が言いたい」
「地下組の人達が優秀なら今頃作戦は終わって、ハルネを暗殺できたかも知れないんだ。でも作戦とやらは僕が思ってたより随分遅い。なら先に時間短縮を図っておこうと思ってね」
すると乖穢は腰から拳銃を取り出し、素早くリロードすると天井に向けて一発の弾丸を放った。
すぐさま拳銃は腰にしまい、何事もなかったかのような顔でエントランスの端に背をもたれかける。
「こういう事さ」
「……やってくれたな」
『NOT』のメンバーは驚きと同時に、忌々しい目線を乖穢に送った。
この男はどこまでも作戦というものを壊すイレギュラーなのだと。
銃声を聞いた市民達は顔を真っ青にして、すぐさまパニック状態に陥る。
ついさっき侵入者を目撃した市民からしたら、今度は何事なのかと驚く者が多いのは仕方がない事だろう。
更には今度は銃声である。
人の命を簡単に奪ってしまう狂気────市民がパニックに陥る理由はその銃声だけで充分であった。
逃げ惑う市民達を見て乖穢は静かに笑い、そして動き出す。
「さあ、僕らも本格的に仕事を始めるよ?」
× ×




