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The Rampage 2021 - Sweet blood death dawn  作者: 冬野 立冬
『表』────思惑
16/72

9話 場外乱入


 パーティー会場付近。


 フェイルは会場から追い出された後、特に行く当ても無く───かと言ってここから離れるわけにもいかずに会場付近をブラブラしていた。

 街に吹く夜の春風が心地良いのか、フェイルは顔に笑顔を貼り付けてながらウロウロとしている。

 追い出されたことに関してフェイルは自分が一方的に悪いと理解している為、特に不満を抱いたりなどはしていなかった。

 唯一の残念な点で言えば、知り合いであるハルネの顔を見れなかったぐらいだろうか。


 ハルネとフェイルは1912年の頃に初めて出会って以降、お互いが不死者という共通点から会えば度々話す仲になったのだ。

 特別な友人という関係まではいかないが、不死者同士何か惹かれ合うものがあったのだろう。


 特にフェイルは昔からハルネを気にしている節が見える。

 フェイルはハルネが度々見せる独特の作り笑いを昔から見続けた結果、彼は真に心を開いている人間はいないのではと感じていたのだ。

 勿論違ったら失礼なので本人にその事を言うことはないが、ハルネの関係性にフェイルは少なからず興味があった。

 特にハルネの横にいる大柄の男。

 プラトからは死の匂いが()()()()()のだ。


 フェイルの特徴とも言える死の匂いを嗅ぎ分ける事はどんな人間にでも有効である。

 それは勿論不死者にでもある。

 死なずの身体とは言え、ダメージを負えば一時的な瀕死状態に陥る。

 よって不死者からも死の匂いはするのだが────プラトからはその匂いが一切感じられない。

 原理は不明である。元々フェイルの特技も科学的な証明ができるものでは無いが……

 少なくともプラトは()()()()からずっとそんな調子である。


 ────今頃プラト君は何をしているのかなあ。


 そんなプラトの事を思い出していると会場の入り口付近まで戻ってきてしまっていた。

 正面玄関には警官が二人立っており、決して関係者以外の立ち入りを許さないという面構えだった。


 ────流石に侵入は無理かなあ?


 と思っていた矢先だった。

 フェイルは思わぬ形でこのパーティーの騒乱に巻き込まれる事象が起きる。



「あぁ……やっと見つけた」


{遅えよ!危うく寝ちまう所だったじゃねえか}


「ごめん……」


【そのまま寝ておけば良かったんじゃない?】


{あ!?メイナてめぇな……}


《ほら、喧嘩はやめなさい》



 ────何だ?


 フェイルがギャレスを見た第一印象は『不思議』だった。

 役者のように喋り方を変えながら独り言を続けている。

 声帯の種類は様々で、中には女の子の声も聞こえたような気もする。


《すみませんね。会って早々に騒がしくしてしまって》


「……俺に言ってる?」


 唐突に話しかけられたフェイルは驚きの表情を露わにしつつ確認の意を込めて聞き返した。


{あぁ、テメェだ!うろちょろしやがってよお?黙って突っ立ってろよ}


 ────また口調が変わった……


 今度はチンピラのような口調の男に変わった。

 この瞬間、フェイルはある違和感を目の前の男に感じた。


「あの、多分貴方ここにいたら死にますよ?」


 目の前の男から()()死の匂いが発せられたのだ。

 ここまで明確で、不自然な死の匂いに何故近くに来るまで気付かなかったのかは些か疑問だが、とりあえずフェイルは忠告をしておくことにした。


[死の匂い?なんだいそれは]


 ────死の匂いが薄れた……


 今度は男の声から一変して女の声に。

 先程の女の声とも少し違い、こちらは大人びた雰囲気を感じる。

 何より疑問なのは死の匂いがほぼ消えた事だ。

 こんな事は今までで初めてだったので、フェイルは思わず興味を惹かれた。


「ええと……役者さん?どういう原理でそんな声の切り替えを?」


《役者か、悪くない言われようだ》


 今度は誠実そうな声をした男の声が────


〈ふむ……ワシらを不気味がるどころな興味を示しておる。変わった奴よ〉


 今度は老齢の声をした男が────


{んでもいいんだよ今はそんな事。てかテメェ、さっきの死ぬってどういう事だ?喧嘩売ってんのか}


 ────あっ、また死の匂いが強まった。


 フェイルは口調が荒い男の時だけ死の匂いが強い事に気付くと、口調が変わらない内に簡単に死の匂いについて説明してみせた。


「俺の鼻は昔から死の匂いを嗅げるんですよ。特に口調が荒い人はその匂いが強いから気を付けてって意味なんですけ────」


「そんな事どうでもいい……」


 フェイルの説明を遮るように、最初に聞こえた声が帰ってきた。


「あ、変わっちゃった?」


 再び死の匂いが薄れたことにより、口調が荒い人物は消えたのだとフェイルは察した。

 フェイルは忠告が聞こえていたかを確認する為にあの人に変わってくれないかと頼もうとしたが────


「あの────」


「君は、僕の為に死んでくれる?」


「へ?」


 再び言葉を遮られたと同時にフェイルの視界が()()

 気付けばフェイルはパーティー会場の入り口に位置する警官の元まで飛ばされており、その時にようやく感じた痛覚によって自分は殴られたのだと自覚した。


「君!大丈夫か!」


「ん……?あっ、警官さん逃げた方がいいよ」


「あ?」


 次の瞬間、フェイルに対して再び強い衝撃が走った。

 フェイルと警官が元いた場所にはギャレスが立っており、警官は思わずもう一度殴られたと思われるフェイルはどこにいるのかと探した。

 すぐ横で間一髪、フェイルに吹き飛ばされた事により助かった警官はフェイルを探しつつも、とりあえずギャレスの侵入に対して無線を走らせる。


「……侵入者です!」



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