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The Rampage 2021 - Sweet blood death dawn  作者: 冬野 立冬
パーティーの幕開け
13/72

6話 主催者が動き出す


 パーティー会場のとある部屋。

 取り付けられた大きな窓からは札幌の街を一望する事ができ、一目でその部屋がビルの中でも裕福層向けの部屋という事が理解できる。

 そんな部屋の真ん中に位置するソファに、パーティーの主催者は座っていた。


 ハルネは腕時計を気にしながらも、ギリギリまでその部屋に居座っていた。

 しかし決して緊張しているという理由でその部屋に居座っている訳では無い。

 ハルネは先程から嫌な予感をなんとなく感じ取っており、その予感が何なのかを探っているのだった。


 ────追分(おいわけ)元市長は必ず妨害をしてくる……それは予想済みだ。


 ────しかし先程から拭えないこの予感はなんだ……?


 ハルネは追分から何かしらの妨害を受ける事は予想していたのだった。

 その為に街で最強と呼ばれている男────沙羅(さら) 篶成(すずなり)を雇ったのだから。

 しかし何故かそれだけでは万全とは言えない気がしていた。

 何かしらのイレギュラーが入り込む気がする。

 そんな曖昧な予感を抱きながらも刻一刻とパーティー開幕の宣言時間は近付いてくる。


 地下に用意してある景品も移動を始めただろう。

 何かあれば即座に自分に連絡が来る手筈である。

 今の所不法侵入者の連絡もない。


 ハルネは珍しく顔を(こわば)らせながら不安要素について考えていた。

 しかしそんなハルネを嘲笑うかのように、時間はハルネの背中を掴む。


 二分前。

 流石に遅いと感じたのかプラトがハルネの部屋に様子を見に来たのだ。


「おい、もう時間だぞ。今さら緊張してるとかじゃねえよな?」


「違うよ。今行くよ」


 プラトが部屋に顔を出した瞬間、ハルネはいつも通りの作り笑いを浮かべて部屋を後にする。


 開幕宣言が行われる一階まで降りるエレベーターに乗り込むと、ハルネは念の為プラトに自身の予感を告げた。

 プラトは護衛隊として地下を見張る事になっている為、告げておいて損はしないだろうと考えたのだ。


「プラト。地下の護衛は少し警戒した方がいい。悪い予感がする」


「……?追分さんの事か?」


 プラトはハルネが珍しく警戒の色を強めた事に驚きつつも、予め想定していた事なのではと質問をする。

 しかしハルネは首を横に振ってその質問を否定した。


「恐らくもっと危険な何かだ。あくまで予想だけど……胸に留めておいてくれ」


「おう。まあ、地下は任せてくれ。お前は一階でお偉いさん方に顔を広めておくだけで大丈夫だ」


「頼りにしてるよ」


 会話が終わるジャストタイミングでエレベーターは一階へと到着を果たした。

 ホールには既に人が密集しているのか廊下にもワラワラとした声が響いている。


 その声を聞いたハルネは白のスーツジャケットを軽く羽織り直し、その舞台へ足を踏み込む。

 ハルネが入場すると一気に会場に響いていた声は消え去り、代わりに無数の拍手がハルネを迎えた。

 ハルネは歩きながらその拍手に手を振って答えつつ、祭壇へ登る。

 祭壇には一つのマイクが設置されており、誰もが見てもそこで開幕宣言をするのは明らかであった。


 ハルネはマイクの前に立つと、軽くマイクの位置を調整し、そのスイッチを入れる。


「この度は私の市長就任パーティーに参加頂き、誠にありがとうございます。このような形でしか感謝を示すことは出来ませんが、今宵は皆様の為に上質な酒、そして食事を用意しております。どうぞ、最後までお楽しみください」


 手短に挨拶を終えるとハルネは軽く一礼をしてみせ、再びマイクに口を近づける。

 そしてパーティーの────血飛沫(あまね)く夜の始まりが告げられる。


「それでは、パーティーの幕開けです」


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