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The Rampage 2021 - Sweet blood death dawn  作者: 冬野 立冬
パーティーの幕開け
12/72

5話 影の勢力は着々と根を張り巡らせる


 パーティー会場内────



乖穢(かいえ)の潜入は上手く行ったようです」


「良し、手筈通りに動け」


 追分(おいわけ)元市長の命令を合図に、今回のパーティーを揺るがす男達が動き出す。


 男達は昔から追分の元で働いていたSPや、雇われの優秀な格闘家、その他警察グループからの引き抜きなどで構成されている組織である。

 命令が下ればその命令を完遂するまで動き続ける。

 『自分の身は(あるじ)の身』。この言葉をスローガンとし、今まで組織は動き続けてきた。

 組織名は『NOT』

 意味は実に簡単で単純────『自分を捨てろ』という意味である。


 そんな『NOT』に所属している隊長の地位に属している男がスーツの裏につけてある小さな通信機器を用いて部隊に指示を入れる。


「作成続行。各自持ち場に着き次第連絡を入れろ」




 パーティー会場、地下駐車場前────


「指示が来た。作成通りいくぞ」


「了」


 指示を受けた部隊は車のエンジンを入れると、顔を黒いマスクで覆い隠す。

 小型バスほどの大きさがある黒塗りの車には眩いライトが付き、勢いよくエンジン音を夜の街に(いなな)かせる。

 そして運転手は勢いよくアクセルを踏み、地下駐車場へその車を移動させる。


 勢いよく迫ってくる黒塗りのバスを視界に捉えた警備員は思わず顔を蒼白にさせる。

 アレは恐らく侵入者だと────


「すぐに連絡だ!」


「あっ……えぇ────────────」


 連絡をしようとした直後、彼の身体は勢いよく弾けた。

 地下駐車場になんとも言えない鈍い音が車のエンジン音と共に響く。


「各自持ち場に付け」


 運転手が指示を出すとバスの後部に位置する扉が勢いよく開き、そこから十五人程の男達が動き出す。

 男達の顔はヘルメットのようなマスク、身体は自衛隊が戦闘で身につけるような重装備に身を包んでいた。

 見るからに異様な男達の内の二人は、すぐさま死体となった警備員の処理へ向かう。

 一人は形容し難い無様な姿で発見されたが、一応男はその死体に脈がない事を確認した。

 しかしもう一人が見つからない。

 二人はすぐに警戒を強める────

 辺りに注意を張り巡らせ、恐らく死んでいないであろうもう一人の警備員を探す。


 生き延びた警備員は地下に立っている柱の影から黒い男達を観察していた。


 ────アイツらは一体何者だ?


 突如現れた男達に警備員は焦りが止まらなかった。

 仲間の警備員は既に人の形を留めていない。

 並の人間がその姿を見れば乱心してもおかしくは無い。

 故に警備員の心は────


 ────すぐに連絡をしねえと!


 冷静な判断など、下せる筈もなかった。


 警備員はすぐに連絡手段である、通信機器のスイッチを入れる。

 すると地下駐車場には独特なピー、ピーという音が響いた。

 警備員の背中には一瞬で冷や汗が滴った。


「早く繋がれよ!!!」


 男の焦燥とは逆に、機械は流暢に設定された音を響かせるのみである。

 冷静な判断が下せていれば今ここで連絡をするのは得策では無いと気付けただろう。

 しかし警備員とはいえ一市民の為、こんな場に慣れている筈がない。

 それが彼の人生をここで終わらせる要因となってしまった。


 通信機が繋がる前に二人の男は警備員を見つけ出し、一人は首に、一人は脳にナイフを突き立てその命を簡単に終わらせた。

 警備員は切り裂かれた首からヒュー、ヒューと空気を漏らしながらすぐに地面に倒れた。

 通信機器はすぐさま切られ、結局警備員は一矢報いる事すら出来ずにその命を終えた。


 理不尽な暴力────

 しかし『NOT』のメンバーはほとんど顔色を変えない。

 追分の指示を遂行する為に────


 ただ一人を除いて。


「こんな簡単に人が死ぬんすね、この組織」


 警備員の首にナイフを突き立てた男────波野(なみの)が死体を回収しながら呟いた。

 波野はつい最近『NOT』に加入したメンバーであり、歳もまだ二十代。『NOT』の中では最年少となる男だった。

 そんな波野の呟きにもう一つの死体を片付ける男が淡々と答える。


「前はこんな仕事は無かったさ。でも今はある。ならば感情を持つな、捨てろ。じゃないとやってられないぞ」


「……相葉(あいば)さんはなんでこの組織にいるんですか?」


 相葉と呼ばれた波野の先輩に当たる男は波野の質問に顔色を変えずに返答する。


「俺は昔から荒々しくてな。警官時代それが原因で組織から省かれちまった。成績は優秀なんだが、どうにも今の警官のダラダラとした体制が気に食わなくてな。それでこっちに引き抜きされた訳だ」


「他の先輩もそんな事言ってたなぁ……みんな事情があるんすね」


「俺達の今回の任務は()()()()()になる事だ。そんなふざけた任務を受けれる狂った人間にお前はなれるか?」


 相葉の質問に対して波野は少し困った顔をして見せた。


「う〜ん。まあ、人を殺した以上もう狂った側の人間なんでしょうけど……人間性は捨てたくありませんよね」


「人間性……?」


 波野の解答に相葉は眉を顰めて思わず言葉の真意を聞いてしまった。

 殺しの現場で周りと違い、ペラペラと会話をしたがる人間が『人間性』という単語を呟いたことに違和感を感じてしまったのだった。


「俺『NOT』に入ってまだ間もないですけど、もう三人殺しました。前の任務は明らかに悪って感じの人だから仕方ないと割り切ったけど今回は善人だった……何の罪もない人を追分さんの都合で殺してしまった訳でしょ?やっぱり多少は心が痛みますよ」


「……そんな感情を抱くならこの仕事は向いてないんじゃないのか?」


「そうかもっすね!でも、『NOT』に入ったら最後抜けられないじゃないですか。うまく言えないけどならもう背負っていくしかないかなって。こっちの都合で殺してしまった罪ってやつを?それがこの組織に必要な『人間性』なんじゃないかなと!こんな事言ってる俺はきっとろくな死に方しないっすね!」


「お前は……いや、話し過ぎたな。急いで前の部隊に合流するぞ」


 相葉は波野がこの組織に入った訳を聞こうとしたが、それは後でもできる為、一旦業務に集中を戻した。

 車の中に死体を積むと運転手に完了したと伝え、すぐさま前の部隊に合流を開始する。

 彼らの目的は────


 ×                         ×

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