第八話 お茶会メンバー
第八話
お茶会メンバー
・・・・?
ここ・・・どこだ?
あれ?姉さん?
どうしたの?そんな怖い笑顔浮かべて・・・・え?本?
・・・・ね、姉さん?まずその物騒な釘バットを下ろして・・・・
違う違う!!私じゃなくてあのウサ野郎が・・・・っ!!
いっ・・・いやァァァアアアア!!!!
「むっ・・・むぐっ!?」
目を開くと、そこにはドアップでこちらを見るかわいい顔が。
あれ・・・夢か・・・・。
まるで私の結末を現実にしたような夢だな・・・・。恐ろしい。
と、口に何か入っていることに気づく。
なんか・・・・甘い?
〔おいし?帽子屋のケーキ♪〕
もごもご・・・
「・・・・・」
・・・ああ、ケーキ。なんかフワフワだなあ〜って思ってたら。
って私・・・・
「生きてるッ!!?」
がばっ
[ふゎっ]
小さな男の子が後ろによろめき、とんっと何かにもたれる。
それと同時に小さなため息。
[・・・三月。毎度毎度、お客さんに妙なもん突っ込むな]
〔だぁって〜おいしんだもんこのケーキ〜〕
[関係ないやろ・・・]
三月と呼ばれた男の子が、シルクハットを被った男性にすり寄った。
と、その男性と目が合った。いやん。
[あんたすまんかったな・・・今は一番大事な時期でな、敵に襲われたら困るんや]
「はぁ・・・」
大事な時期?敵??
まさか・・・・!!
「思春期のライバル?」
[ちゃうわッ!!いきなり何言うんやあんた!びっくりするわホンマ!!]
思春期はもう過ぎたっちゅーにとかブツブツ言う男を無視し、さっきの三月って子が私の腕に巻きついた。
〔帽子屋はぁ、マフィアのボスなんだよ〜。だから敵グループに狙われることがしょっちゅーなの♪〕
「マフィア??」
ごほんっ
[挨拶が遅れたな。わいは帽子屋。そっちの三月の言う通り、マフィアのボスや。よろしゅうな]
〔はいはいはーい!!三月ウサギの三月でぇ〜っす♪生まれてこの方12年と三か月!将来の夢は帽子屋の奥さん!!〕
[こいつの発言は9割が嘘や。覚えとき]
〔嘘じゃないもんっ〕
三月ちゃんがぷんぷんと怒って帽子屋を睨む。
ああ・・・やっぱウサギなのね・・・・その耳を見るとなぜか懐かしさとイライラ感が蘇るよ・・・・。
<僕は・・・ヤマネ・・・・>
異色の人たちに気をとられ、かすかにした声でもうひとつの存在を思い出した。
いたじゃん。ものっそカワイイ生物が。
[ああ、そいつはヤマネ。ほとんど寝とるから気にせんでいいで]
「・・・・っ」
かわっ・・・なにアレッ!!何の癒し生物体だよ!!!
リストラされたオッサンが入ったリラックマよりかわいいじゃん!!ってかアレかわいいの基準になんないよ!!!
〔ねーねー君の名前はぁ??〕
「ん?ああ、私はアリス。よろしくね」
[アリスはこれ届けにきてくれたんやろ?]
帽子屋がくっついてくる三月ちゃんをひっぺはがし、小さな白い箱を差し出した。
あーそうだった。私はこれをウサ野郎にせがまれてここに届けに来たんだった。
「それ何なの?」
[これは企業秘密や♪]
帽子屋が人差し指を口に当ててにっと笑った。
・・・まあ、マフィアの企業秘密なんて物騒なのに興味ないけど・・・・。
[アリス、これからヒマやろ?ちょっと寄ってかへんか?お茶会]
「え。コレお茶会だったの?」
[他に何があるねん・・・]
「会議」
[わいらはどこのPTAや!!そこまで忙しない!!]
ヒマなんだ・・・マフィアのボスともあろうお方が・・・・
〔最近は青パトが頑張ってるらしいよ〜?〕
「あーいるいる。毎朝うっさいよね〜。元気に登校しましょ〜♪とか。言われなくても行くって話だし」
〔あれのガソリンとかもったいないよね〜〕
「今は地球温暖化の時期だってのにね〜ホンットどんだけヒマなんだか。あの中年のニート共が」
[ちょっ・・・そこらの中学生みたいな話やめへん?なんかそれ、言い出したら止まれへん話題ベスト1やで]
むしゃむしゃとお菓子を頬張る私と三月に、帽子屋が焦って話を中断させた。
まー確かに話し出すと止まらないよね〜あの無駄すぎる存在は。
「あ、そういえば。」
〔そういえば?〕
「さっきから二人して結婚がどうとかって言ってたけど、二人付き合ってるの?男同士で」
[ぶふゥゥゥゥッ!!!]
帽子屋が森の方に向って紅茶を吹いた。
おー虹ー。
[なっ、何言っとんねん!!この年齢差で付き合うも何もないわ!!!]
「あーら照れちゃってもう!おばちゃん全部分かってんねんでぇ〜♪」
[どこの大阪のオバハンや!!どこのヒョウ柄Tシャツ着て値切っとるオバハンやッ!!!]
〔年齢差なんて気にしない!愛さえあれば、誰だって結婚できるよ♪帽子屋♪〕
「せやでぇ〜大阪の愛はホンマもんや!あっははははは!!」
[お前ら黙らんかいィィィイイイ!!!]
あっはっはっはっ。いや〜愉快愉快。
「ってか男同士なのはいいんだ?」
[?何言うとんねん]
〔僕は女の子だよ〜??〕
「あ。じゃあ大丈夫だね。すみませーん!婚姻届一枚くださーい!」
〔帽子屋、ウエディングドレスはどんなのがいいかな?あ、やっぱミニスカ?それとも和風?〕
[お前ら死にさらせェェェエエエエ!!!!]
<・・・うるせーな>
・・・・・ん。んん?
今なんか変ななんか・・・・ん?
ふと、黙り込んだ二人を見る。
帽子屋は、地雷踏んだ!!みたいな切羽詰まった顔。
三月は、うわ〜おとか言って口笛吹いてた。
私自身、何が起こってるのか・・・・。
と、椅子の引きずられた音と誰かが立ち上がった気配。
ゆっくり、恐る恐るとその人物に目を向ける。
「・・・・ヤマネ」
さっきのうとうとしてたかわいい状態とは打って変わって、灰色の鋭い瞳がこちらをギッと睨んでいた。
<人が黙って寝てりゃギャーギャー喚きやがって・・・殺されてえかテメーら。あ?>
だっ・・・誰ェェェェエエエ!!!?
え、なっ何コレェェェェェェ!!誰!?何!!?マジでさっきのカワイイ男の子!?
ただの怖いヤンキーみたいになってるじゃん!!!
「え・・・あの、ヤマネさん・・・・ですよね?」
<あ?何言ってんだテメー。そうに決まってんだろ。お前の脳みそはクソかゴミか?どこで俺が変わったってんだよ。言ってみろよオラ>
「あっははーですよねーヤマネさんですよねーあははヤだなもーなんか私の頭おかしくなったのかと・・・」
<お前の頭は前々からバグってんだろがクズが>
「あははーですよねー」
「ちょっとォォォォオオオ!!!帽子屋説明しろよォォォォ!!!誰だよアレ!!もうカワイイのが見る影もねえじゃねえかァァァァアアア!!!」
[落ち着けアホッ!!あっちに聞こえるやろが!]
とりあえず本人には聞こえないよう、3人で陣組んでこそこそと話し合う。
「で、なんだっての!!ヤマネに何があったの!!!」
[簡単に言うと、ヤマネは生まれつき二重人格なんや。いつもはおっとりして寝てる方なんやけど、その眠りを妨げたらもう一方の人格が出てくるんや]
〔あっはは〜♪どんだけぇ〜♪〕
[今がその人格。ものすごい不良っぽいから気ィつけや。油断してたらやられるで!]
「どうやって戻すの!!」
[これ食べさせたら戻るんやけど・・・・]
帽子屋がポケットから小さなアルミを取り出した。
ガサガサ・・・
「これって・・・・!!」
[チーズや]
「なんで乳製品なんだよ!!カルシウム摂ってる場合かッ!!!」
[違うわ!これをヤマネに食わすんじゃ!!]
〔ヤマネはね、チーズを食べることで違う方の人格に変わるんだ♪〕
「スゲーな。さすがネズミだな。それとも本能か?」
[どっちでもええわ!!はよ食わせ!]
・・・・・・・。
「私がかよッ!!」
[はよ!]
ドンッ
「んぎゃっ」
気がつけば、暴走モードのヤマネと対立してる状態で、私はチーズを握りしめていた。
戦車VSチーズ!!!
もう戦いは見えてるじゃんかァァァァァアアア!!!
やる意味ねーよッ!!止めろ!!誰か私を止めろォォォォォォ!!!
<なんだよ。お前が相手か。せいぜい楽しませろよなブス>
ピクッ
「・・・なんて・・・・?」
<ブスはブスだろーが。間違っちゃいねえだろ?ああ、もしくはデブだな。第七話で丸太割ってたし。くくく・・・>
「・・・・・」
<どうした?もう終わりか?ははっ!やっぱブスは顔も根性も最悪だな>
ブチッ!!!
「帽子屋。ちょっと貸して」
ガコッ
[あっ!わいのマシンガン・・・ってまさかアリス・・・・・]
ジャカッ!!
<!!>
ズガガガガガガガガッ!!!
<実弾かよ・・・っ!!タチ悪・・・・>
「はははははッ!!逃げろ逃げろドブネズミ!!穴だらけにして一夜干しにしてやらあ!!あははははは!!!」
ガガガガガガッ!!!!
〔・・・ねえねえ帽子屋。なんか目的が違ってなくない?ヤマネ死ぬよ?〕
[せやなぁ・・・でも止めにかかったらわいかて死ぬで?ってかアリス、主人公とは思われへんくらいの悪役面やな・・・]
<コイツ・・・殺す気かよ・・・・っ>
ヤマネが身軽に弾をよけながら走る。
ネズミなだけにやっぱ速いな・・・じゃあそろそろ・・・・・
ごそっ
「喰らえェェェェエエエエ!!!」
ビュッ
<んなっ・・・!!>
ぱくんっ
<・・・・っ!?>
〔あ。喰らった〕
ヤマネがその場で力なく倒れる。
あ。死んだ?
帽子屋が急いでヤマネのもとへ生死を確認する。
大丈夫かな・・・?ちょっとマジでやっちゃうかもとか思ったんだけど・・・・。
[生きとる生きとる!すっかり元に戻って眠っとるわ]
「お〜よかったよかった〜」
〔んじゃあ一件落着だね!ささ、早く続きしよ!〕
「続き?」
〔お茶会だよ!早く座って座って!〕
「うん、あ。ヤマネ持ってかなきゃ」
[ええよ、わいが持ってくから]
〔じゃあ早くお茶会お茶会♪〕
[今度は静かにせえよ!]
〔ふぁ〜い♪〕
「あ、三月!紅茶こぼしてる!!」
〔じゃあアリスにもかけちゃう♪〕
「いやぁぁぁあああ!!おニューの服がぁぁぁあああ!!!」
〔アリスーおニューって死語なの知ってたー?〕
[お前らイテまうぞゴルァァァアアアアアアア!!!!]
ダム&ディー
カフェを営んでいる正反対の双子。
赤い瞳がディーで青い瞳がダム。それからおとなしいのがダムで、生意気ブラコンがディー。
これくらいしか二人を区別できるものがない。
常連であるシロウサギからは、城でのグチを聞かされている。
ちなみに彼女ナシ二人目と三人目。
彼女ナシグループ3人で、たまに話したりする。
悲しいな・・・
次回、ついにヤツが現れる・・・・!!
ヒントは〜・・・にゃんっ♪