第十五話 カフェの訪問者
またまた舞台はカフェです。
そこで繰り広げられる魂の叫び(笑)。
なんてコトがあったりの十五話です。
さて、待ってました僕らのヒーロー!!
カモン!ウサ野郎ーーーーーッ!!!
第十五話
カフェの訪問者
「バイトしない?」
それはそれは天使のような笑顔で、ダムは寝起きの私に言った。
「・・・・は?」
「バ・イ・ト♪今なら自給1000円だよ〜」
その言葉にカッと脳細胞が目覚める。
「マジかッ!!?」
目を輝かせながら叫ぶ私に、ダムがクスクスと笑った。
「マジだよ。どう?やってくれる??」
「もちろんですともッ!!・・・ってかなんで急に?」
布団をたたみながら笑顔のダムに尋ねる。
ダムはエプロンをかけていて、どうやら仕込みを終えたところらしい。
「それがね?ディーが買い出しに行ったまま帰ってこないんだよ・・・・」
「へーどっかで行き倒れてんのかな、あの役立たず」
「行き倒れたついでに昇天してくれててもいいんだけどね」
あははは・・・・
「・・・とまぁそういうワケで、ちょっと手伝ってほしいんだよね。そろそろ開店だし」
「らじゃーす!んで、何したらいいの?」
ダムがふふっと楽しそうに笑う。
・・・嫌な予感。
「接客と会計と掃除。それからあのバカの探索連行をよろしくしようかな」
(よろしくされたくねェェェェ!!!)
「いいよ、ね・・・・?」
ダム・・・笑ってるのに目が笑ってない・・・・。
「は、はい・・・」
「じゃあ頼んだよ。僕はちょっと用事があるから、店番よろしくっ」
「エ、うそっ・・・ちょまっダm」
バタンッ・・・
「逃げんなァァァァアアア!!!」
ガチャガチャ・・・
「うぅ・・・なんで私がこんな目に・・・・」
そもそもみんな扱いが雑だよ・・・なんだよもー主人公だってのにさ・・・・。
愚痴りながらコップを棚に入れていると、コツコツとドアの向こうから足音。
チッ・・・客か・・・・。
からんからん・・・
ドアの鈴が鳴るのと同時にくるりと振り向く。
とりま営業スマイル営業スマイル・・・・そう!すべては金の為っ¥¥¥
「いらっしゃいま・・・・っ!?」
『げッ!?』
嫌に垂れる目障りなウサギ耳。
見飽きてしまった世間一般で言うイケメン。
ヤツの顔を見た瞬間、やる気が一気に萎えた。
なんでどうしてここにいる・・・・・
「・・・ウサ野郎」
ウサ野郎があからさまに嫌な顔をする。隠せよ。
『お前こそなんでここに・・・・』
「バイトだバイト」
『お前が?バイト?ここで??お前が?バイト??』
「悪いか。ってか何回再確認するつもりだウサ野郎」
ウサ野郎が焦ったままいそいそとカウンターに座った。
どーやら完璧にダムがいると思ってたんだね。
「チューモンナンデスカーオキャクサマー」
『うわっ。ぎこちねっ。片言じゃねえかお前』
「仕方ねーだろーが。初バイトなんだよバカヤローお手柔らかな注文ほざきやがれよ金ヅルが」
『すでに敬語でなくなっている・・・・』
ウサ野郎が不安そうにそうつぶやくと、うーんと少し唸った。
『じゃあここはお手並み拝見とするか・・・・ブラック一つ』
「・・・・ブラックってなに?」
『はぁ!?おまっブラックも知らねえのかこの無知!!コーヒーだよコーヒー!!』
「んじゃハナっからそう言ってりゃ良かったじゃねえかクソウサギ!!
何カッコよくブラックとかほざいてんだよニンジンくれてやろうかこのキザがッ!!!」
『どーでもいいからとっととコーヒー持ってこいやバカ新人!!俺ァお客様だぞ!お客様は神様だろーがッ!!』
「そりゃあテメーらが勝手に考えてるだけだ凡人共!!お客様なんぞタダの金ヅルだこのクズ!!!」
『金ヅルなのかクズなのかどっちかにしろバカヤロー!!っつーかハナシ進まねえから早くコーヒー持ってこいよ!!!』
「ハイハイハイハイ、コーヒー一つね〜・・・・早く飲みてえんなら家ですすってろよクズ(ボソッ)」
『今スゲーアルバイトさんの本音聞こえたんスけど〜』
「あはは〜もうお客様ったら〜♪黙って机に突っ伏して待っててくださいよ〜♪♪」
さて、っと・・・・
コーヒーってどうやって作るのかな??
・・・うん、まあこーなるとか軽くわかってはいたんだけど〜。
んまーイイコトに相手はウサ野郎。
なにしたってこの店が潰れることはないし・・・・
えーと、確かダムは豆潰してたっけ・・・?
なんとか記憶をたどり、棚からコーヒー豆を発見した。
んでからコレを・・・・あ、れ?
重要なことに今さら。そう、今さら気づいた。
これって何で潰すんだ??
「・・・・・」
『・・・・・』
ピーン・・・
「そうだッ!!!」
『うおッ!!?』
ガタタッ
ゴマをすり潰す時のアレでやればいいんだよ!!完璧っ!!
どっかにないかな〜とか思って棚をいじっていると、あったあったありました。
いいタイミングでありましたっ♪♪
さっそく底深い器に豆を入れ、太い棒で砕く。
ガッ ゴッ ゴリゴリゴリ ガンッ ガンゴンッ
『・・・アルバイト〜?さっきからなんかコーヒー作ってるとは思えないほど鈍い音がするんだけど〜』
「安心しろ金ヅル。コーヒーはちゃんとできっから」
ゴリッ ゴォリゴォリゴォリ・・・・ (サラサラサラ〜)
5分後
「でっきたぁあッ!!」
『粉がだろ?っつーかマジでなんだコレ・・・コーヒーの粉ってこんな黒かったっけ?
こんなカケラあったっけ?ってか潰れてない豆フツーにあるんですけど。コレマジでコーヒー?』
「任せろ愚民。こっからが本番だ」
その粉をカップにブッ込み、お湯を注ぐ。
コーヒー特有の苦い香りが辺りに漂った。
軽くかき混ぜた黒い液体を、ウサ野郎の真ん前に置いてやる。
コトッ
「ハイ、ブラック一ツオマタセイタシマシタ〜♪」
『え・・・コレ、飲んでも平気なのか・・・・?ってか飲みもんなのか・・・?』
「おどおどしてねえでとっとと飲めよオキャクサマ。んで金置いてさっさと消えろ」
『最悪なアルバイトだな・・・』
ウサ野郎はしばらくカップを見つめていたが、意を決したかカップを持ち上げた。
「イッキ♪イッキ♪飲め飲め♪のっみほせ♪のっみほせ♪♪」
『・・・・!!』
グイッ!!
「わ〜!!スゲーなオイ勇者か!?」
ごくっごくっ・・・
『・・・・っ』
ウサ野郎の手からカップが滑り落ち、ガシャンッという音と一緒に中の液体が床に広がった。
「あーっ!!バカ!何落としてんだ!!ダムに殺されるだろうがァッ!!」
『ゲホッゴホゴホッ・・・・っバカはテメエだ!!お前コーヒーの他に何入れたッ!!!』
「えっ♪知りたい知りたい??」
『なんで嬉しそうなんだよ!!ちょっとは落ち込め!!!』
「え〜私ただ単にダシ入れた方がいいかな〜って思ってコンブと味な素入れただけだよ??」
『完ッ璧にそれが原因じゃねえかッ!!コーヒーにダシは必要ねえんだよッ!!!』
「ま〜でも、なかなかうまかったろ?未知の味でさっ」
『こっちは未知の世界行くとこだったよバカヤロー!!!』
からんからん・・・
ドガッ!!
『はぶッ』
ドアの鈴が鳴ったので、邪魔なウサ野郎をカウンターに突っ伏させる。
まあつまりはカウンターに乗って頭踏み倒してんのね。
「いらっしゃいま・・・・ってアレ?ダム?ディー??」
そこには、笑顔のダムと状況を見て焦っているディーがいた。
「ただいま、アリス」
「おまっ・・・この状況は何・・・・」
「気にスンナ。野兎がうるさかったから黙らしてたダケ」
「なんか一部片言だぞ」
ダムがカウンターに突っ伏しているウサ野郎と私、それからディーを見て、パッと何かを思いついたような顔をした。
「ねえアリス!帽子屋さんのアジト、このメンバーで行こうよ!!」
「「「・・・は?」」」
「そうと決まれば善は急げだよ!さ、行こう!!」
「え?ちょ、ダ・・・」
ダムがにこやかにスマイルで、私含む三名を引きずってドアを開いた。
「「「なんでェェェェェェ!!!?」」」
バタンッ・・・・
次話はついにお茶会メンバー帽子屋との決着・・・!!
・・・かもしれない。
アリスピンチ・・・・!?
・・・かもしれない。
なんてコトがあるかもしれない次話にご期待を。
・・・しなくていいかもしれない(笑)。