第十話 夜の城にて
皆さんになんっか人気あるヤツを、また復活させました!!
相変わらずですが、どうぞお楽しみください!
第十話
夜の城にて
「・・・アリス?」
「・・・・っ」
だッ誰か助けてェェェェエエエエ!!?
美女が・・・美女が鎌持ってスゲーこっち見てんですけどォォォォォ!!!
一種のホラーじゃねえかァァァァアアア!!!
「もうっ・・・心配したんだから!勝手に城から出ないでちょうだい!」
「はい!・・・ってエ?」
女王が顔をふくらませてぷんっと怒る素振りをした。
おっ・・・怒ってるけど・・・・クビ飛ばない?マジで?
「女王様・・・あの、怒ってないんですか?」
「怒ってるわよ!だから十人ほど兵を殺したんじゃない」
まさかと思い、ちらりと女王の後ろをのぞきこむ。
赤い絨毯からはみ出た飛び散る血。
真ん中に積もった兵の・・・・
「死体・・・・?」
「どうしたの?アリス。顔が真っ青よ?」
ごっごめんなさいィィィィイイイイ!!!
謝って済む問題じゃないけどすんませんでしたァァァァァ!!!
なんか泣けてきたし・・・ううっ・・・・
「シロウサギ!」
『・・・なんですか?陛下』
ウサ野郎がどこからか現われて、女王の後ろに立っていた。
もうびっくりしないもんね!!もう慣れっこだい!・・・死体は慣れないけど。
「もう夜更けだし、アリスを脱兎の間に案内しなさい。疲れているみたいだし」
『だから・・・どうして俺の部屋なんですか・・・・』
「早くなさい。でないとクビが跳ぶわよ!」
ジャキッ
『あー!!わかりましたわかりました!ですから鎌を構えないでください!』
「もう・・・アリス。今日はゆっくりお休みなさいね?」
「え?あ、はい、すみません・・・」
『とっとと来いブス』
「ブチ殺すぞ合成獣第一号が」
カッ カッ カッ・・・
「ふぁあぁああ・・・ねんむ・・・・」
長い廊下を歩きながら、大きくあくびをする。こんな眠いの初めてだし。
『お疲れさん。で、お茶会はどうだった?』
「ん〜マフィアってのはびっくりしたけど、帽子屋はいい人だったよ?それから三月もかわいかったし・・・ヤマネはちょっとムリかなぁ・・・・」
『ははは!だろうな。でも、まあまあ楽しかったろ?』
「うん!また行きたいし」
『ってかお前、あの森をよく一人で出てこれたな。そこがびっくりだぞ俺は』
ウサ野郎が突き当たりのドアをがちゃりと開け、中へ入った。
なかなか広い部屋で、右半分にベッドとクローゼットとタンス。左半分もそんな感じのシンメトリーな部屋だった。
ってか綺麗に整頓されてんのね。案外そこにびっくりだよ私は。
「あーそれはね〜ある猫さんに案内していただいて助かったんだよ〜」
ベッドに駆け寄り、バフッとダイビングして溜息をついて言った。
あ〜ねむ〜死ねる〜。あ。見えた!極楽浄土〜!!
『・・・猫?』
ウサ野郎の声が震えるように聞こえた。
「そーだよ〜チェシャ猫ってゆースゲー無愛想な包帯グル子ちゃん〜」
『チェシャ猫が・・・助けたのか・・・・?』
挙動不審すぎる声を不思議に思って、ウサ野郎の方をちらっと見る。
・・・どうしたウサ野郎。口開いてますよ。魂出てる出てる。お前は太鼓の達人か。
「・・・なんでそんな顔してんの?」
『だってお前・・・チェシャ猫っつったら、無差別殺人猫じゃねえか・・・・!!』
無差別・・・殺人・・・猫・・・・??
あの無愛想が?あ、でも知ってて入ったなら殺してたーとかなんとか言ってたな・・・・。
うーわ。もしかしたら私危なかった?案外危ない人・・・いや、猫と一緒にいた?
『っていうか、俺は元々猫が嫌いなんだ・・・・っ』
「・・・ウサギなのに?」
『そこ関係ないだろ!!昔のトラウマで・・・そう、あれは冬の寒い時期のことだった・・・・』
「おやすみー」
『聞けよ!!そこは聞いてくれよッ!!』
「ヤダめんどくさい。お前の昔話なんぞに興味はねーよ。じゃあな。」
『そんなこと言うなよ!!なんか悲しいじゃねえか!ってか、この流れはちゃんと聞く流れだろーがッ!!』
「この流れは寝る流れ」
もぞもぞ
『寝るなァァァァアアア!!!』
「お前も寝てろ。永遠にな」
ひゅっ・・・
ガンッ!!!
『ぶっほいッ!!』
どさ・・・
すげーナ。目覚まし時計の威力は無敵だな。
ってか悲鳴ダサイ。もっとマシな悲鳴あげろよな。
『お前・・・Sか・・・・っ』
「あれ?まだだったか」
びゅっ・・・
バキャッ!!!
『へぶらばッ!!!』
ぐた・・・
よし、今度こそ寝たかな。
私もそろそろ寝よ・・・・
―――――――二時間後。
『ぐー・・ぐー・・・・』
「・・・・・」
・・・寝れん。
なんで?なんでこんなに眠くない??
さっきまでは極楽浄土へ旅立つことだって可能だったのにな・・・・。
「はぁ・・・・」
コンッ
「・・・!」
後ろの方から、何かが当たった音。
確か後ろは・・・ベランダだったかなぁ?
ってかベランダからなぜ物音がする。
・・・気になる。
「・・・・・」
もそもそ・・・ペタッ
ペタッ ペタッ ペタッ・・・・
冷たい床が足の裏に吸いつく。今の時期って元の世界じゃ夏なんだけどなぁ・・・・。
カラッ
ビュウウゥゥウウ・・・・
「・・・・!」
ガラス戸の隙間から、強い風が差し込む。
その先のベランダの柵に座る人影。
なんっか見覚えが・・・・
周りと同じ暗闇に身を包み、尖った爪と風になびく包帯。
「・・・ドラえもん」
【チェシャだ】
あっ、そうそうチェシャ猫さんでした。
ついついドラえもんって単語しか浮かばなくて・・・・。
「それで、チェシャ猫さんは何の用で来たんだい?」
チェシャ猫が少し間をあけ、顔をうつむかせた。
なんだなんだ。
【別に・・・ヒマだったから】
「あっ、そーですか」
ヒマで来るのもなんだかなぁ〜。
って!!確かチェシャ猫は無差別殺人猫じゃなかったっけ!?
「あの・・・チェシャ猫って無差別殺人してんの?」
我ながら恐ろしい質問。
でも本当なら私ヤバくね?やっと十話まで来たのにここで連載終了とか読者さんに殺されかねないよ・・・・。
ああ、読者様。ここまでのご愛読ありがとうございました・・・・。
【・・・違う】
「えっ!!マジで!?」
読者様!!私まだ終わりませんよ!!しぶといですよ!!!
【ただ縄張りに入ってきた奴らを殺しただけだ】
終了ーーーーーッ!!!連載終了ォォォオオオオ!!!
あ、でも私知らなかったから別にいいのか。ホッ・・・
「・・・でもそんな事してたら、いつまでたっても友達ができないよ?」
【トモ・・・ダチ・・・・?】
チェシャ猫がぎこちない口調で首をかしげる。
おいおいおい、まさか友達も知らんのかこのニャンコは。
「友達っていうのは〜一緒に話したり、なんか楽しいことしたりする時に一緒にいる人のことだよ」
【楽しい・・・コト??】
あー駄目だコイツ。ぜんっぜん理解してねえ。
「じゃあ、私がチェシャ猫の友達になってあげるよ!」
【チェシャの・・・トモダチ?】
「うんっ!んでなんか分かってきたらもっと増やせばいいじゃん?」
【そんなに必要なのか?トモダチって】
「必要必要!絶対必要不可欠!!友達第一だよ!!」
【ふーん・・・・】
「んじゃあ、また遊びに行くから!友達だしね♪」
【トモダチ・・・】
「うん!」
チェシャ猫が少し笑って立ち上がった。
【じゃあな、アリス・・・トモダチだな】
「おう!友達だっ!!」
チェシャ猫の姿が下に落ち、暗闇に消えた。
いや〜友達増えちゃったな〜困った困った・・・・。
「私ももう寝るか・・・・」
帽子屋
かなりの甘党。
年中いつでもお茶会。
一応、マフィアのボス。
三月に惚れこまれている。とりあえず困っている。