カペル王国 カペル西部
カペル西部
カペル西部は海に隣接する地域も多く、海上交易も盛んである。また、緩やかな流れのロウム川下流域に沿って、水棲生物も散見される。魔物にも、このような湿潤な地域に適応したものが多く存在する。
カペル西部における魔物の食物連鎖は以下のようである。
・草の葉→ キャタピラ・ヤカドラン→ セーブミンクル・スライム→ ポイズンウルフ・アハイシュケ
主な魔物
キャタピラ……体長10cm-30cmにも及ぶ、巨大な昆虫。毒針に守られた赤黒い体は捕食者に対する警戒色として役立っている。動きは鈍重で、草本の他、他生物の皮脂や汚れを栄養とする。さまざまな栄養の摂取に適応しており、胃も雑食生物に近い形質を持つ。
羽化すると鮮やかに羽の色を変える巨大な蛾になり、光を反射する毒鱗粉を落としながら空中を舞い、雌を誘う。鱗粉が失われた雄は雌に変化し、結果的に短い寿命の中で雄が多くの子孫を残すために雌と交配することができる。
魔法を使う例は確認されていないものの、摂食をあまりせず、魔力を用いて体内で栄養素を生成できるのではないかと考えられている。魔法といえども栄養素の生成には何らかの先立つものが必要であるため、呼吸によって吸収される空気中の粉塵からそれを摂取している可能性がある。このような前提に立つと、世界は何らかの物質で満たされているという仮説にも一定の合理性が認められるが、消費した物質の行く先が不明であり、真空の中に微細な粒子(専門的にはアトムと呼ばれる)が存在していることとの分別が困難なため、詳細な言及は避ける。
ヤカドラン……体長20cm-40cmの小型の竜種。名前の由来は住居を意味する古語(yhacca)に由来し、実際に家の隙間に進入している姿が目撃されている。秋の麦畑のような美しい黄土色をしており、鱗は光沢がある。翼はあるが退化しており、飛ぶことはできない。その代わり、第二の手として器用に使用する姿が確認されている。
臆病な性格であり、物音に敏感に反応する。群れは作らず、出会った異性と交配する。穴を掘り、すぐに卵を地面に埋めると、何事もなかったかのように別れる。
半年周期で定期的な鱗の交換(換鱗)が行われ、交換直後の新たな鱗は柔らかく、数日で硬化する。昆虫の脱皮と近い現象と考えられ、成長段階に何らかの影響を与えていると考えられる。換鱗後の鱗は一部を摂食するが、一部を放置する。この鱗は竜の鱗として、お守りなどに加工されて高額で取引されるが、実際には比較的潤沢な資源であり、さほど貴重なものとはいえない。
動きは竜種の中では素早く、天敵を見つけると途轍もない砂埃を上げながら逃亡する。
魔法は一般的な竜種と同様に火炎放射に使用する他、巻き上げた砂埃を凝固させて隔壁を作るといった形で使用される。
ヒトとのかかわりとしては、鱗や食用肉採取のための家畜化や、ペットとしての飼育間で多岐にわたる。総じて、ヒトとは友好的な種であるといえる。
セーブミンクル……体長10-50cmのイタチ型の魔物。体毛は撥水製に優れ、水袋などとして好んで利用される。また、前後肢に水かきを持ち、水中を器用に泳ぐ。そのため、陸上の昆虫やヤカドランのほかにも、水中の魚や甲殻類も好んで捕食する。
葦や藁などを束ねて水上に巣を作り、天敵から身を守る。一夫一妻制で家父長的な群れを形成しする。父個体の死後、巣をもっとも大きな雄個体と、もっとも小さな雌個体が継承する。雄は巣立つと水辺を沿って移動し、草を集めながら新たな営巣に入る。そのため、大きな雄個体と小さな雌個体ほど死亡率が低く、両性の体格差が大きい。
魔法は使用しない。劣化した器官はあるが、使用の痕跡は一切ない。この事実を踏まえると、この種は自然消滅するのではないだろうか。
スライム……体長1cm-80cmの、不定形の魔物。体液は保水の役割と捕食のための役割とを持ち、生命維持に必要不可欠である。体長は不定形ゆえの大きさの揺らぎであるため、普段は10cm程度の大きさで活動することが多い。
通常天井や岩陰、水中から獲物の顔に飛びつき、窒息死させて捕食する。肉眼で視認できる巨大な細胞核をもち、細胞核を傷つけることによって、その機能を停止させることができる。
この種を動物と見るべきか植物と見るべきかには争いがあるが、可動機能と捕食機能を持つことから、動物あるいはそれに類する種であると仮定する。
繁殖には他の個体を必要とせず、核の分断によってその機能を停止させても、数時間後には二つの別個体として分裂する。そのため、高湿度の洞窟などではほとんど数が減ることがない。種の維持という面では他の動物の追随を許さない。
魔法は体液の不足時に保水のために水魔法を使うことがある。捕食者に対しては、水鉄砲で応戦し、水中に逃れる。
アハイシュケ……体長160cm-210cmの海岸沿いに生息する馬のような魔物。えら呼吸と肺呼吸の双方の呼吸が可能であり、馬と思い捕食しようとした動物や、人間を水中に引きずり込み、窒息死させる。食事は水中で行い、血を嫌う。その体は体毛の下に粘土の高い体液を放出する汗腺があり、捉えた動物を水中に留まらせるために、盛んに利用する。
その油は保湿効果に優れており、化粧品として人気がある。
魔法は、擬態魔法を使う。馬のような生物であるが、時には人魚になり、時には被食者の仲間に化けるため、捕食性効率は格段に高い。
近縁種であるケルピーは淡水性であり、アハイシュケは海水性であるため、両者は互いに獲物をめぐって争うことは少ない。交配は可能なようだが、雑種の目撃例はほとんどない。