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カペル王国 東部

 カペル

 カペルは、川沿いの低木層と草原地帯を中心とする平野が多い国であり、ヒトと自然の交流が多い。気温は冷涼であるが凍える寒さになることは無く、降雨量も多い。その点、非常に生物にとって住みやすい環境である。花の女神カペラの名に恥じない、美しく豊かな土壌と言えよう。

 森林帯は北方に多く、広葉樹林と針葉樹林や隣り合うように固まっているが、これはヒトによる平野の開拓の結果でもあり、今後森林が減少する懸念がある。

 緩やかな丘陵地帯と平野による優れた住環境、そして広大な大河ロウム川によって運ばれる肥沃な土壌が生み出す様々な恩恵を受けた種が生息している。

 例えば、他の地域では珍しい多くの竜種がおり、竜種でも比較的小柄なドラン種が生態系の中で重要な役割を担っている。その他、伝承に歌われる種によく似た種を多く要するため、「神の愛したもうた土地」との渾名に恥じない。

 海にも面しているが、今回は主に陸上の生物に重点を置いて紹介する。


 カペル東部

 カペル東部の地域はエストーラノーシュタット地方とほぼ同様の生物が暮らしている。但し、降雨量の多さという違いにより、幾つかの種の生存が困難なため、異なる生物が草原地帯で生活する。

 魔物種の多くが社会性昆虫であるという特徴があるが、詳細は分かっていない。私見では、捕食者の目を紛らわすために集団で営巣するほうが望ましいためではないか、と考えている。

 カペル東部における魔物の食物連鎖は以下のようである。

 ・草の葉・死肉→ ヤト・グンタイアリ→アナムジナ・ホーネット → ポイズンウルフ・ロートドラン


 主な魔物


 グンタイアリ……体長約1cmの虫である。集団で生息し、女王蟻を中心とする巣を形成する。複雑な巣の中にはいくつもの部屋があり、最深部に女王蟻の産卵室がある。その上へと登るたびに子供を育成する部屋、働きアリの部屋がある。

 雌を中心とする営巣環境が完成しているため、雄蟻は一生を巣の中で過ごす。主に草や生物の死骸を回収して摂取するため、彼ら自身が他の生物を捕食するということは無い。逆に、ウルフの死骸を小分けにして巣へと運搬する姿さえ目撃されており、その食料は非常に幅広いものと言える。

 魔法は使用しないとされている。しかし、グンタイアリは名の通り生物の死骸を見つけると集団で回収に向かう習性があり、突然現れたように思われることから、魔法の使用を唱える者もいる。私見としては、これは一般的な蟻が生成する粘液を辿っているものと考えられ、魔法の類ではなく、単なる生成物であろうと考えられる。これは、時折グンタイアリが見せる奇怪な周回行動(集団で何度も同じ場所を歩き回る行動)からも推察できる。もし魔法であれば、このような奇怪な行動はとられないからである。

 そのため、本種は魔法を使用しない魔物である、という事が出来よう。


 ホーネット……体長約5cmの大型の虫である。ホーネットの生態は概ね蜂に近く、強い攻撃性を持つため、その危険性もよく知られている。

 集団で生息し、女王蜂を中心とした巣を形成する。雄は全て女王蜂の庇護の下で家畜のように過ごし、産卵が終わると女王蜂の食料としてその生涯を終える。従って、動物やヒトを襲うホーネットは殆どが雌であり、雄は巣の中の一種の産卵機構に過ぎない。巣は六角形に近い形をした幾つかの小部屋があり、この小部屋で子供を飼育する。

 主に虫を捕食するが、場合によっては鼠のような小動物も捕食する場合がある。さらに、女王蜂の産卵した子供は食料が減少すると臨時の食料となる。

 魔法は使用しないが、腹部に魔力を生成する器官が存在する。捕食生物から甘い蜜を作り、それを巣に保管すると言われているため、この生成に利用している可能性は否定できない。この蜜は恐らく食用に保存されるものであるが、詳細は判然としない。なお、蜜同様、子も美味である。


 ポイズンウルフ……カペル広域に群生する狼の仲間であり、体長は85cm-95cmである。集団で行動する点など、ラートナーと同様の生態も持つが、ポイズンウルフの方が、ラートナーよりも広範な縄張りを持ち、一集団の規模が大きい。そして、数匹の雄を中心とするハーレムを形成するため、ラートナーの特徴である「お見合い交配」も見られない。

 名前の由来は牙に溜め込んだ麻痺毒であり、狩りの際に首筋を噛む際に注入する。ポイズンウルフの毒腺は魔力を生成する器官(ポイズンウルフの場合には、魔力腺と呼ばれ、唾液腺の付近にある)と繋がっており、毒の生成のために魔法を使用しているようである。

 ラートナーと比較して引き締まった肉体をしており、持久力に劣るが、これは一集団の規模が大きいことと関係しているものと考えられる。


 ロートドラン……体長300cm-500cmの大型竜種。ジェヴォーダンと並ぶカペルの最大捕食者であり、多くの魔物の中でも極めて大型の生物である。

 一方で、天敵と呼べる存在がおらず、ヒトにもあまり害を与えない、温厚な魔物である。発情期に縄張りに入った場合、まずは大きな鼻息で威嚇し、それでも立ち去らない場合には襲い掛かる。

 古くからの研究成果により、この巨大生物の生態は概ね解明されている。一例では、睡眠中の手入れや食料の一部の提供などと引き換えに、害獣から畑や集落を保護するエルフとの共生関係がある。ヒト種に対する攻撃性が低いのはエルフがヒトと比較的類似した身体的特徴を持つためとする考察もなされている。

 魔法は非常に短期的かつ強力なものを使用する。主に熱魔法による周囲の発火や、火炎放射などがあり、他の魔物と比べ、魔力の使用効率が悪い。そのためか、捕食に魔法を使わない。

 肉食性であり、近寄ったポイズンウルフやヤトを呼吸で吸い込み捕食する。

 発情期は春から夏、秋から冬にかけての各一か月程度であり、発情期を除いて、そのほとんどの期間を睡眠によって過ごす。なお、睡眠中の呼吸によって鼻まで吸い寄せられた生物は反射的に捕食されるため、ヒトに友好的であるからと言って不用意に使づくのは危険である。


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