ヒトとの関係
ヒトの生態的位置づけ
ヒトとは、学術的にはホモ・サピエンスと名付けられ、その高い知能に特徴を見出すことが出来る。
道具の使用をする生物はほかにも存在するが、ヒトはその中でもとりわけ応用力に優れ、また、住居や衣服などの開発によってさまざまな生態に適応することが出来た。
また、言語と文字を用いた高度なコミュニケーションによって、その技術を後世に伝え、また、発達させることで、次々に、複雑かつ利便性の高い技術の開発を繰り返してきた。
このようなヒトの知能の高さは、彼らの生息域を著しく拡大させ、現在のような高度な文明を作り上げている。
しかし、その結果、他の野生生物とは一線を画す、大規模な捕食と他生物の排除を可能とし、結果的にヒトは多くの野生生物の減少に主要な役割を担うようになった。
以下では、ヒトの生活によって野生魔物に与えた影響を個別に紹介する。そして、その結果ヒトが被る被害にも言及する。
開墾と野生魔物
ヒトは生存の為に、森林の伐採や草原の開発を通して、開墾を盛んに行う。このような行動は、ヒトの生存のために必要不可欠なものであり、昨今の人口増加による食料状況の改善も重要な国家政策である。
しかし、過度な開発の結果、野生魔物の住処を減少させる懸念があることに注意が必要である。野生魔物の住処の減少は当然に野生魔物の数の減少に繋がり、種の絶滅に結びつく危険がある。
また、種の絶滅に結びつかない場合にも、集落に野生魔物が侵入し、食物を漁るといった問題が生じるリスクが増す。
このように、開墾は十分な計画の上で行わなければならない。
狩猟と野生魔物
ヒトは、雑食であるため、狩猟によって多くの生物を獲得し、食事する。これは一種の捕食であるため、生物間で行われる狩りと基本的には同質のものである。
しかし、ヒトは道具を用い、環境を支配する能力があるため、過度の狩猟(一般に相応しい用語がないため、以下、「乱獲」という用語を用いる)によって、野生魔物に限らず、野生生物全般が減少傾向にある。
このような乱獲によって減少した野生魔物は、ヒトを警戒し、無害な人間に対しても攻撃的になる懸念がある。また、開墾同様にヒトの狩猟は野生魔物の適応地域への避難を促す。
野生魔物の大規模な避難が生じると、これまであった広大な土地の中で分割された縄張りが一気に減少するため、同種間での縄張り争いや、食料の取り合いを助長する。その結果、個体数が減少するリスクが高まると考えられ、絶滅を助長する。
狩猟の際には出来る限り計画的に、安全な時期に限定して行い、国家が継続的に野生動物からの恩恵を受けられるような調整を図るべきであろう。
野生生物の減少と野生魔物
上記の開墾や乱獲の結果、食物連鎖の下位に所属する野生生物が減少すると、それより上位の野生魔物も、その数を減少させる。
これは、捕食できる個体数の減少に起因するものであり、一部の野生魔物の保護によっては解消できない問題である。
この問題を解決するためには、野生動物の減少を助長するような過度な乱獲や開墾は控えるべきである。
実際の例を挙げる。過度な狩猟の例としては、ティンクチャーの乱獲の結果、ウルヴァリンの数が一気に減少したという事例がある。
ティンクチャーは良質なアーミンを獲得できるため、乱獲が行われた。畑を荒らすことがしばしばあるレミングの害獣処分も手伝い、ティンクチャーは個体数が激減した。そして、これを捕食するウルヴァリンなどが餌不足に陥り、餓死する事例が増えた。
現在、ムスコール大公国はティンクチャー保護のため、貂とティンクチャー、オコジョ等のイタチ類生物の毛皮取引を特権として一部の商会に限定している。このような取り組みの結果、ティンクチャーはその個体数を何とか回復することが出来た。その結果、同様に毛皮としての人気があるウルヴァリンも自然と個体数が増加した。
ティンクチャーとウルヴァリンの例では特に顕著であるが、個体数の減少はヒトの利用可能な資源の減少にもつながる。持続可能な生産活動のためには、過度な開発や狩猟は、却って国家全体の不利益になることを意識して、活動しなければならない。
ヒトの特異性を生かした食物連鎖の調整
前述の通り、ヒトは高度な知能を持ち、様々な野生魔物に大きな被害を与えてきたものの、それは、裏を返せば、その数を調整する能力をも持つことを意味する。言い換えれば、ヒトの行動如何によっては、絶滅が懸念される野生魔物を保護し、その数を自然な形で増加させることも可能なのである。
ティンクチャーとウルヴァリンのように、狩猟を制限するという手法も非常に有効である。
その他に、ヒトの開発した移動力を駆使して、様々な事情により細分化された、野生魔物を集約・保全することによって、地域的に見れば減少傾向にある同種の個体数の増加も図ることが出来る。このように、ヒトには、食物連鎖の中で減少傾向にある個体を保護し、その数を維持することも可能なのである。そして、このような取り組みによって、突発事象によって激減した野生魔物の数を健全な数に戻すことも可能となるのである。