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ムスコール大公国 ツンドラ

ツンドラ

タイガよりもさらに北方の、海に面した広大な苔地帯である。森林も少なく、余りにも寒いため、生物の生存には適しておらず、ほとんどの種が固有の生物である。


 ツンドラにおける魔物の食物連鎖は以下のようである。

・コケ類・水草など→エルク・サンダ=ヴィクセント・レミング →リュンクス・オールリー・ウルヴァリン →アルクトス・フェンリル


主な魔物

・サンダ=ヴィクセント……体長120cm-220cmの大型草食獣。保温性に優れた熱い体毛を持ち、エルクによく似ているが、角は縦に長く、エルクよりも複雑に枝分かれしており、雌にも角がある。

この角は、雄同士の雌を巡る争いだけでなく、雪に埋まった食物を掘り起こすために利用される。


 大きな群れを形成し、リーダー格の二匹が繁殖を支える。例外はあるが、角の大きさがリーダーの基準になることが多いようである。


 大きな蹄を持ち、重力を分散させることで、雪の上を自由に歩くことが出来る。足の埋まったサンダ=ヴィクセントが見られないのはこのような特徴のためである。

 角は年中生えているわけではなく、雄が春、夏に生え、雌が秋、冬に生える。これは両性が狩りをする時期とほぼ共通しており、関連性があるだろう。

 魔法は用いないが、夜間に鼻が赤く発光する事例が確認されており、これを魔法であると考える者もいるようである。


しかし、私見ではこれは血管の集中した部分が赤く目立つ現象と考えており、魔法は用いないのではないかと考えられる。実験として、優れた嗅覚や鼻への接触に敏感に反応する姿も確認されており、この説を裏付ける証拠であると思われる。


・レミング……体長7cm-15cmの鼠の様な魔物。極小の生物であり、多くの肉食獣の格好の獲物である。


耳は小さく、地上のコケや草を好んで食べる。巣は穴や隙間に作り、冬眠はしない。冬の間を巣の中で安全に過ごすために、大量の草を頬袋に入れて巣に持ち帰る習性がある。


 繁殖力が異様に高く、森に向かえば数十匹は簡単に見つけられる。巣にはこの繁殖力によって大量の子供からなるコロニーを形成し、冬に近づくと巣の中から小さなレミングは勝手に脱走して海に飛び込むという。大量繁殖の結果賄いきれない分を身投げによって補っていると考えられているが、実際の理由がどのようなものかは判然とせず、また、これが事実であるという確証もない。比較的小さなレミングは冬季までには自然に捕食されることが多いため、自殺をする必要もないのではないかと考えられる。

 重なり合った小さな縄張りを持ち、他のコロニーのレミング同士が隣り合って草を頬に溜め込む姿は盛んにみられる。


 魔法の使用に関する詳細は不明である。食物同様に体内に魔力をため込む習性があり、恐らく何らかの魔法を使用しているのであろうが、観察した限りでは見られなかった。巣の中で魔法を用いる姿が見られるのかもしれない。


・リュンクス……体長80cm-120cmのヤマネコ型の魔物。赤褐色と黒い斑点のある体毛を持つ。猫の中では大きく、タイガの森林では多く見られる。


 地上で単独行動することが多く、群れは作らない。

主にレミングの様な小さな動物を狙い捕食するが、それ以外の大型動物も捕食することがある。夜行性であり、殆ど鳴かずに、動きの鈍くなった獲物を捕らえて食べる。


白色の体毛を持たない理由は、タイガの森の深い地域に生息することが多く、雪が必ずしも地面全体を覆っているわけではないことや、夜行性のため、却って白色が目立つためと考えられる。


魔法は、手の先から空気砲を放つことがよく知られる。これは、獲物である小動物の巣に手を入れ、空気砲をうつことで、別の穴から獲物を引き摺り出すために用いているようである。


・アルクトス……体長250cm-300cmの熊と近縁の魔物。滅多に生じることは無いが繁殖は可能なため、クマとアルクトスの混血が稀に見られる。


 体毛は基本的には薄い赤褐色であるが、衣をまとったような白色の体毛も混ざる。

アルクトスは雑食であり、木の実や小動物、大型草食獣、魚などを捕食する。狩りの方法は非常にシンプルであり、遭遇した動物を爪で切り裂く。基本的に一匹で生活し、縄張りを周回しながら、木の実、川魚、小動物を捕食する。

冬眠をするための巣は頻繁に変えるが、これは狭い縄張りに自分のにおいを残すためと考えられる。


巣や食料への執着が非常に強く、アルクトスはそれらが奪われた場合には優れた嗅覚でそれを追いかけ、激しく攻撃する。この特性の為に、地面に横たわったティンクチャーの死骸を拾うと、その夜にアルクトスが家に現れるという逸話がある。アルクトスに食料を奪われた場合は、絶対にそれを回収するべきではない。


周囲の水分を一気に氷結させる魔法を用いる。これは、獲物を長期保存する為に用いられるほか、狩りの際には逃げる獲物の身動きを止めるために用いる。場合によっては血液を氷結させ、窒息死させることもあるという。


・フェンリル……体長300cmの巨大な狼型の魔物。ツンドラの最大捕食者であり、食物連鎖の頂点に君臨する。


 巨大な体に似合わない俊足を武器に、小規模の群れで狩りを行う。非常に知能が高く、根気強く餌を与えれば飼育も可能である。但し、ヒトの顔の違いやにおいの違いを見分けられてしまうため、特定の人物以外に懐くことは絶対にない。そのため、集落での飼育は困難である。

 雌雄共に異性と行動を共にすることを嫌い、群れは子供を除き、概ね同性である。発情期に入ると、異性の群れと同時に交配を行い、「見合い交配」に対比して「コンパ交配」と呼ばれる。子供は雌がすべて養い、雄は次の雌を求めてすぐに去っていく。そのため、発情期前の雌は凶暴になり、狩りを盛んに行う。子供はある程度成長すると雄の子供を群れから追い出し、雌の子供は親を守る役目を担い、親の妊娠中には狩りも代行する。

このような特徴から生殖機能は成熟まで時間がかかる。


 銀色の体毛に身を包み、激しい呼吸で歯の上にできた氷柱を牙のように使い、敵の動脈を正確に攻撃する。動脈を傷付けた後は全体重をかけて獲物を踏みつけ、傷口の付近を舐めまわして氷を溶かし、流血を促す。

虹彩は黄金色であり、盛んに震える。理由は判然としないが、その姿から「気狂いの王」とも呼ばれている。

魔法は個体ごとに様々なものを使うが、高温の青い炎を噴く魔法や、空中の水分を凝固させて氷柱を落とす魔法などを使う。狩りに使う事もあるが、雄の場合には、雌に対する一種のアピールとして使うことがある。なお、交配をする雄は何匹の雌とも交配するが、交配を未経験の雄はとことん異性と交配できない。現実は非情である。


・オールリー……体長60cm前後のフクロウの一種である。羽毛は白く、雪原に適応している。厚い羽毛は手触りもよく、ずんぐりとした体形も愛らしいため、ペットとして非常に人気がある。


フクロウではあるがあまり飛翔は得意ではなく、地上で生活することが多い。これは、主たる餌であるレミングが洞穴や岩間で生活することが多いためと考えられており、狩りの際には翼や足で激しく地面を叩くことによってレミングをおびき出し、一瞬で捕らえるという方法を用いる。この手法を用いるため、飢えをしのぐために大型生物を狩らざるを得ない場合には、集団で激しく地面を叩き、注意を集中させ、逃げる先にいるオールリーの仲間が群がり、足を啄み、転ばせるという奇襲戦法を用いる。

通常のフクロウ同様、オールリーも音を立てずに飛行することができる。しかし、長時間の飛行は苦手としており、休憩も岩間などの狭い場所で行う。


餌の多い夏季には巣を作らず単独で行動するが、冬季には群れを作って行動し、冬の終わりに交配する。冬季の巣は捕食者を嫌い、樹上に作るが、飛行を苦手とするオールリーにとっては樹上での営巣は非常に困難であり、それを補う為に冬季に群れを形成するものと考えられる。


魔法は、長時間響かせる鳴き声を断続的に聞こえるように空気を揺する「タンキング」と呼ばれる魔法を使うが、その理由は判然としない。私見ではあるが、このタンキングには一種のコミュニケーション・ツールとしての役割があり、仲間に餌の位置を知らせるために用いているのではないかと考える。

実際に、彼らのタンキングはほかの生物には風で葉が靡くような音に聞こえ、これを解除した魔術師には音程の異なる一続きの鳴き声として聞こえることが知られている。そのため、オールリーはタンキングを利用して仲間にだけ理解できる暗号のような、高度なコミュニケーションを取っているのではないかと考えられる。


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