都会!!
私は今日から高校一年になる城元 乃亜!歴とした十五歳!!
田舎生まれ田舎育ちの田舎っ子……と言うわけでもなくネットとかで都会情報には街の人の誰よりも詳しい人工都会っ子よ!
実家まで片道四時間の都会のアパートの一室を一人で暮らす……とは行かず、私の次に人工都会っ子の瑠奈姉と二人暮らし。
それでも、都会暮らしという事で胸をルンルンに踊らせ布団から飛び出した!
「あっさだー!!」
「うるさい」
「はい」
既に、人工感が抜けきってまんま都会っ子の瑠奈姉が横並びのトーンの声で私のルンルンの口を黙らせた。
でも!!心はルンルンのまんまなの!!
「瑠奈姉!ふっふっふ、朝ご飯私が作ってあげる!」
「よろー……アパート燃やさないでね」
「はっはっは!私のハートが燃やしちゃうかもね!」
「………」
姉の痛い視線を変え潜り台所に立つ。調理器具は一式揃っている様だ。流石は我が姉!!
朝食の支度を始めて30分ほど、瑠奈姉がやっとこさ起きてきた。
「あと、一分で出来るよ瑠奈ねぇええ!!!」
「ん?どうした?」
「えっと……ど、どちら様でしょうか……」
「………瑠奈だけど?」
「うっそ」
知らない!私知らない!こんな美人知らない!!
「ああ、メイク姿の私、見た事無かったっけ?」
「これが……メ…イク!!」
そんな!ただでさえ可愛い瑠奈姉がメイクで美人に!?たった二年の歳月を都会とともにしただけで人は別人になれるものなの!?
「ところで、この匂い……」
「うん!…城元家秘伝のソースを持ってきたからね!産地直送の新鮮な牛の肉をカラッと揚げました!」
「……私、トーストでいいや」
「え!?あの城元家夕飯合戦で誰よりもかつを手に入れていた瑠奈姉が!?」
「………朝からとんかつは……流石に無い。臭い残りそうだし」
そ、そんな!?……外見だけでなく中身も変わってしまったというの瑠奈姉!?
「……何て……」
「ん?」
「何て素晴らしいの!都会!!私も貴方色に染めて!!」
「……乃亜、二年で何があったの………」
「はぁはぁ、遅刻遅刻〜大遅刻〜!!とんかつ味わって食べていたら登校時間とっくに過ぎてる〜!!こんなんじゃ道の角で、キャ!っていう展開あるわけないじゃん!!」
調子に乗って姉の分を口に運んでしまったのが駄目だったわ。
ああ、どうしよう、クラスのみんなにどう思われちゃうかな………田舎者は時計も読めないのか!とか言われないかな。
「うぅ……ちょっと泣けてきた」
あっ!目の前にいい感じで塀で仕切られた道角がある!
もしかして!これはあるんじゃない?
私は、その予感に胸を更に踊らせ走る速度を上げた。
そして、道角との合流地点、隣に荒い息を感じた!えっ!?
「キャ!」
「あっ!すみません!」
ないと思っていた展開に私は体勢を崩して地面にぶつかってしまいそうになる。
でも、地面とゴッツンする事なく私の身体は止まっていた。
「あ、ありがとうございます」
私の手をとても男らしいがっしりとした手が握ってくれていたのである。
咄嗟にお礼を言いそのご尊顔を拝見……
「ん!君は、香崎西条学園の生徒か?」
「は、はい?あ、貴方は」
「校長だ」
シワを何重にも重ねた顔、太陽光を私にぶつけてくる頭を持った定年に近いおじいちゃんだった。
「こ、校長先生!?何故ここに?」
「あ!そ、そうだった!入学式に遅れてしまう!!」
「私も!!」
私と校長先生は、残り少しの距離を全速力で駆け抜けた。
そして、校門前ついに老体がものをいった。
「はあ…はあ…もうだめだ……」
「校長先生!あと少しです、ほら肩を」
なんで、私は大遅刻をした上、校長先生に肩を貸しているんだろうか。
その後、色々あって教室入りを果たした私。入るとき、教室内の視線が全てこちらに向いて死ぬほど恥ずかしかった。
「城元さんは…あそこね。……っと、その前に自己紹介よろしく」
「へ!?」
「皆んな、自己紹介終わっちゃったし、ちょうど前にいるから」
バカな!?大遅刻しただけで羞恥を感じるのに、更に羞恥させるんですか!?先生、私を死なせる気ですか!?
「え…えと、城元 乃亜、十五歳……遠くから遥々やってきた…田舎ですが……よ、よろしくお願い申し上げます……」
「はい、これからよろしくね。担任の川栄 美佳子です。永遠の二十歳よ!」
「は、はい……十八とかではなく……二十歳……」
「うん!だって二十歳じゃないとお酒飲めないもん!」
パニクってつい、思ったことを言ってしまった。しかし、先生の返しで教室内は大笑い。この期に及んで席に向かい座った。
「君、ズバって聞くね!」
しかし、どうやら注目は未だ私に向いているようだった。
隣に座っている校長先生よりイケメンの男の子が笑いながらそう言った。
「………」
「あ…先生の答えも最高!!毎日お酒飲んでいるんですか!?」
その男の子は私の赤くなった顔を見たか、一瞬笑いを止めてからもう一度笑い先生に話を振ってくれた。
「………」
もしかして、彼は私の事を気遣ってくれたのかな?優しい人だなぁ……
「よ、城元」
「え?……西木!?」
その男の子とは反対側から声をかけられた。振り返りその存在を確認して私は驚いた。
私と同じ田舎生まれ田舎育ちの幼馴染の彼が何故ここに。
「西木あっちの学校に残るって……それに受験の時いなかったし……」
「ははー、推薦で受けてたんだー」
「す、推薦ですと!?」
知らなんだ。もう長い間会えないかもって別れを告げてこっちに出てきたのに!
「まさか、私の後にこっちに!?」
「ははは!城元驚かせたくてな!!」
昔から悪戯好きの悪ガキとして街では有名だった彼、ここまでする様になったか二ヶ月姉の私は嬉しくも悲しくも思うぞ!
「それじゃ、そろそろ時間なので体育館へゴー!!」
やけにテンションの高い川栄先生について行き、大きな体育館に到着した。
「………凄。……中学校のとは別物の部類に入るね」
「そうだな、これを体育館と言ったらあれはただの箱だな」
私と西木は思った感想を述べて入館に試みた。
中に入ると、まだ運動をする所ではなく上履きをしまう下駄箱がズラッと並んでいた。
「一つ一つに蓋付いてるよ……」
「ちゃんと、番号振ってあるよ……」
田舎二人組は周りの視線を忘れてまたまた、感想を述べて上履きをしまい体育館シューズに履き替えた。
その後、大きな階段を上り、やっと椅子が並べられ拍手で迎えられる所に着いた。
「これが、都会……」
「パネェ……」
困惑しながらも指示された場所に移動して椅子に腰をかけた。
他のクラスの人達が全員入館したところで、教頭と思われる人が、マイクに声をかけた。
これから、都会の都会による私の為の青春が始まる!!
初めての現実恋愛の普通の物語です。転生とか異能とかはないものです。
伸びたら続けたい、伸びなくても続けるけど