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話が中々進みませんが、もう少しお付き合いください。
次からの縦割り活動で羽山先輩に話しかけていたら、だんだんと会話も長くなり、今ではすっかり仲良くなった。先輩は人見知りだったらしく、最初の日も少し緊張していたらしい。
それから幾月も経ち、夏になった。
皆んな半袖を着るようになり、外では蝉が鳴くようになった。
学校にはクーラーがなく、扇風機だけしかないので、汗が止まらない。
「暑いよ〜溶ける〜」
「夏休みまで頑張れ」
「もう頑張れない〜」
由美が机に突っ伏し溶けだした。
本当に暑い。夏とはどうしてこんなにも暑いのか?
しかし、今日は希望があった。
4時間目の体育は「プール」なのだ。
この世界の水着は、前世の水着とほぼ同じだった。
違うところといえば、女性のビキニは下がズボンタイプなのが多い。
男性は水着の時は上半身を裸にするが、普段は恥ずかしい事らしい。今より昔の時代は、男性は無闇に肌を見せるべきではないというのが常識だったそうだ。
4時間目になった。
私達の水着は学校が指定したスクール水着だったが、前世のそれとは少し形が違った。下半身の方がズボンのようになっていたのだ。
男子は、普通にズボンタイプの水着だったが、今この水着は良くないと言われているそうで変わるかもしれないそうだ。
まぁ、取り敢えずプールに入れる事が嬉しい。
私は運動音痴だが水泳だけは何故かできるのだ。特に平泳ぎでは幼稚園で一番上手だった。「俊速のカエル」という二つ名も持っている。
「皆んなー静かにしろー!準備体操始めるぞ!ちゃんと真面目にやらないと溺れるかもしれないからな!」
そう、担任の坂部先生が言った。先生もズボンタイプの水着を着ていて、上半身が裸だった。服でわからなかったが、意外と筋肉があり引き締まっている。もしもの時の為に副担任の女の先生もいたのだが、彼女は先生の上半身をガン見していて怖かった。
準備体操も終わり、やっとプールに入る事が出来た。
「ひゃ〜冷たい!でも気持ち〜」
由美はそう言った。溶けなくて良かった。でも本当に気持ちいい。夏の暑さが引いていく。
周りの子も同じなのか、元気に遊んでいる。
私達はまだ一年生なので、特にやらなければいけない課題もないので、自由に遊んでいた。
私はひたすら泳ぎまくっていると、私と同じくらい上手に泳ぐ子を見つけた。
誰なのか良く見ると、なんとアダムくんだった。彼はしなやかにクロールをしていた。
私は彼に近づいていった。
「アダムくん泳ぐの上手いね!」
「水谷も凄い上手いじゃん」
「いやいや、私なんて。アダムくんの方が凄いよ」
「いやいや、そんな事ないよ。水谷の方が凄いって」
「いやいや」
そうやって押し問答を繰り返していると
「じゃあ、勝負してみたらいいんじゃない?」
横からひょっこり雄大が現れた。彼は横槍を入れるのが最近のマイブームなのだろうか。
そんなこんなでアダムくんと勝負する事になった。審判は坂部先生だ。
「位置について、よーい……ドン!」
私達は泳ぎ始めた。種目はクロールだ。
「舞ー!頑張れー!俊速のカエルでしょー!」
由美の応援が聞こえる。いつのまにか周りの子も私達に注目していて、声援を送ってくれた。
「頑張れーアダム!」
「舞ちゃん頑張れー!」
「俊速のカエルって何?」
もう少しでゴールに着く。現在、勝っているのは私だった。
しかし、アダムくんはそこでグングンと速度を増し、私に追いついた。
どちらが勝つか分からなくなった。私は以外と負けづ嫌いだったようだ。限界までバタ足を早くする。
パンッとどちらともなく壁を叩いた。
結果は、同着だった。
「やっぱりアダムくん速いね」
「水谷も速いな。負けるかと思ったよ」
私達は勝負を終えた後、プールから上がってお互いを誉めあった。
「水谷って俊速のカエルっていう二つ名があるんだな」
「ふふん。カッコいいでしょ」
アダムくんは微妙な顔をした。何故だろう。
「カエルだよ。いいの?」
「なんで? カエル可愛いじゃん」
私がそう言うと、アダムくんは少し笑った。
何故笑うのか聞いたら「イヤ、水谷ってちょっと変わってるなって思って。良い意味でだよ」と彼は言った。
今日のプールは気持ち良かったし、アダムくんともっと仲良くなれたので本当に良かった。
お読み頂きありがとうございました。