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春になりました。私達六年生はもうすぐ卒業です。
私達は卒業式の練習に取り掛かった。歌や卒業証書を受け取る練習をした。
「何回も歌わされて足疲れたよ〜 」
由美はそう言った。歌っている間はずっと立ちっぱなしなので、そりゃ疲れるだろう。
「でもさ、卒業式の練習してるともうすぐ小学校生活も終わりかってしみじみするよね」
由美は、しみじみとそう言った。
「そうだね…私達、中学生になるんだよ」
「実感わかないなー」
由美は机に顔を伏せた。
今日、私は買い物に来ている。アダムくんの誕生日プレゼントを買うためだ。
「…そういえば私、アダムくんの好きなもの知らないな」
アダムくんはいつも私にトビタくんをくれるけど、それは私が好きだからであって彼が好きなのかは分からない。
今時の男の子はどんな物が欲しいのだろうか?
「僕? うーん、実用性のあるものが欲しいかな」
雄大はそう言った。なるほど。
「俺? 金だよ金」
光くんはそう言った。うん、それは無いな。
うーん実用性のあるものか〜何だろう? というかアダムくんに欲しい物を聞いた方が早いんじゃないか?
「アダムくんはどんな物が欲しい? 」
「俺? そうだなー……」
「水谷がくれる物なら何でも欲しい」
電話越しで、そう言われた。とても良い声で。
「俺の誕生日プレゼントの事だろう? 貰えるだけで嬉しいから。ありがとな! 」
そうアダムくんは言った。
電話が切れても胸の動悸が激しい。要は、欲しいものは無いから好きに選んで良いという事だろう。でも、なんか言葉が……ドキドキとする。アダムくんが私を友達以上に思ってない事は知ってる。だから勘違いしてはいけないんだ私!
「で、アタシにプレゼントを選ぶのを協力して欲しいと」
由美はそう言った。私は彼女を今いるショッピングモールへ来るよう呼び出した。
だって、みんな抽象的で具体的な物を言ってくれなかったのだ。私は皆んなからセンスが無いセンスが無いと言われ続けてきた。だから、酷いものを買わないように由美に監督して貰いたかったのだ。
「実用的なものってどんな物だと思う? 」
私は早速由美に聞いてみた。
「そうだなーハンカチとか服とかじゃない? 」
そうか! 服か!
私は、服屋に入りスカートに手を伸ばした。が、由美に阻止される。
「服は服でも、それはないでしょう」
「え? そう? 」
私は由美に手を引かれ服屋を出た。
色々見て回った。私が選ぶものはことごとくダメ出しを出された。
それから、しばらく経った。
「どれが良いかもうわからない〜」
「アタシが選んであげようか? 」
プレゼントは私が選んだ物を渡したかったが、もうここまで来たら由美に選んでもらおうかな。
そんな事を考えながらトボトボ歩いていると、向こうから見覚えのある影が見えた。
「あっ舞ちゃん! 」
「お、本当だ! 」
羽山先輩と船橋先輩だった。
「へー、友達の誕生日プレゼントを買いに来てるのね」
「はい。でも中々良いものが見つからなくて…」
私はそう言った。
「腕時計とかいいんじゃないか? 」
船橋先輩は言った。腕時計か。
「良いですね! それ! 」
由美は先輩の言葉に賛同した。
「だろ〜! 俺が今欲しいものだ! 」
「この前壊れたものね」
船橋先輩はそう言うと、羽山先輩はそう言った。
「じゃあ、俺ら行くところあるから! 」
「あ、はい。色々とありがとうございました」
私達は、先輩達と別れようとした時「舞ちゃん」と羽山先輩に呼び止められた。
「頑張ってね」
私にしか聞こえない声で彼女はそう言うと、「じゃあね! 」と言って、船橋先輩とどこかへ行った。
先輩は、気づいてたのだろうか? プレゼントの贈り主、アダムくんの事を好きだと言う事を……
時計屋に来た。可愛らしい物からカッコいい物まで色々ある。
その中で私は一目惚れした時計を見つけた。
「これアダムくんに似合いそう……」
「確かに……」
由美もそう言ったので、私はこれを買うことにした。
プレゼントをかった次の日、学校に着くと隣の席にいるアダムくんは深妙な顔つきをしていた。
「どうしたの? 」
「水谷……」
「俺、ブラジルに行くかもしれない」
アダムくんは、そう言った。
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