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海水浴の話です。

 雨は中々止まなかった。その間、アダムくんは気絶したままで、三山は言った通りに動かず降り続ける雨をじっと見ていた。



「三人とも大丈夫か⁉︎ 」

 雨が止んだ後、暫くしてから坂部先生達がトンネルまでやってきた。アダムくんは坂部先生に背負われ、私達は森を出た。空は少し暗くなっていた。

「舞〜! 良かった〜! 」

 森を出たすぐの所で、由美が泣きながら近づいてきた。

「三山さんも無事で良かったわ。田中くんは……」

 白田さんはそう言うと、先生に背負われたアダムくんを見た。アダムくんは熱があるためか少し顔が赤い。意識はまだ戻らなかった。

「先生はアダムを病院へ連れて行く。お前達は部屋に戻りなさい」

 坂部先生はそう言った。



 次の日、私達はアダムくんがいる医務室に行った。アダムくんは昨日病院に行った後薬を貰ってホテルに帰ってきた。今ではすっかり良くなっていたが、大事をとって今日は一日安静にするらしい。

「アダムくん、大丈夫? 」

「うん、もう平気。心配かけてごめんな」

 私が聞くと、アダムくんはそう答えた。

「元々少し体調が悪くて、多分大丈夫だろうって思ってたんだけど、結局倒れて皆んなに迷惑をかけた。本当にごめん」

 アダムくんは再び謝った。アダムくんだけのせいじゃない。三山が森で迷う様に仕向けたのや運悪く豪雨が降ったせいでもある。

「俺、豪雨の中を走ってた途中から記憶が無いんだけど、水谷と三山さんが助けてくれたんだよな? 二人ともありがとう」

 どうやらアダムくんはトンネルでの記憶がない様だ。三山に襲われかけた恐怖からだろうか?

「いえいえ〜当然の事をしたまでだよ」

 三山はヘラヘラとしながら言った。よくそんな事が言えるもんだと感心してしまった。しかし、私は本当の事を言わなかった。もし、事実を言ったらアダムくんが記憶を思い出して傷つく可能性があると思ったからだ。




「アダムくん、今日一日安静にするって事は海に入れないよね」

 由美がそう言った。今日の自由時間は、ホテルの近くの海で遊んで良いのだ。この修学旅行のメインと言っても良い。アダムくんは泳ぐのが上手だったし、楽しみにしていた可能性が高い。

「そうだな。楽しみだったんだけど、まぁ学校の水着しか持ってきてないから、悪目立ちすると思ってたし入れなくて良かったかも」

 アダムくんは笑って言った。学校の水着と言ったら、ほぼ全身タイツのあれだ。周りにそれをきている人は彼以外絶対居ないだろう。アダムくん、何故それを持ってきたんだ。




 そんなこんなでアダムくんと別れてから数時間後、自由時間になった。女子は可愛らしい水着を着て、男子は海パンを履いている。皆んなワーワーキャーキャー騒がしい。私は由美と選んだ上半身は水玉のビキニ型で下半身は茶色のズボン型の水着を着て、海で泳ぎまくっていた。それを見ていた由美は「水着の見せ場が無い」と言った。

 私は半ば由美に引っ張られる様にして、砂浜を歩かされた。周りからの視線が痛い。何か変な所でもあっただろうか?

「由美、私の頭にワカメ付いてる? 」

「舞はホント鈍感で残念だね」

 由美にそう言われ、ムッとした。私は確かに残念だが鈍感では無い。なんて失礼な事を彼女は言うのだろうとプリプリしながら歩いていると砂浜にキラリと光る物を見つけた。

「何これ? 」

 拾ってみると、半透明な石の様なガラスだった。破片が丸くなっていてスベスベとして触り心地が良い。

「それシーグラスっていうやつだよ」

 由美は私の手の中の物を見てそう言った。シーグラス、海のガラスということか。どうやら海の中で揉まれ続けるとガラスはこの様な状態になるらしい。

「あ、あっちにもある」

 私はシーグラスを集めだした。




 しばらくして、水着のズボンの中はシーグラスでいっぱいになった。

「たくさん拾った〜」

「ズボンがパンパンじゃん」

 そう由美に指摘されたが気にしない。だが、もう拾うのはやめようと思った時、とても綺麗なシーグラスを見つけた。

「綺麗」

 真顔で言ってしまうほど、それは綺麗だった。炎の様な黄色で輝いていたのだ。

「その色珍しいね! 今までのは茶色や白ばっかだったのに! 」

 由美が言った様に、このシーグラスは珍しい色だった。そしてこの明るい色からアダムくんが連想された。



 その日の夕方、私はアダムくんのいる医務室へ行った。彼はベッドで本を読んでいた。

「水谷? どうしたんだ? 」

 アダムくんは目を本から私に向けた。私は海で拾ったあのシーグラスを彼に渡した。

「うわっ!すげー綺麗」

「海で沢山拾ったから、おすそ分けに来ました」

 彼にあげた色のシーグラスはそれだけだった事は言わなかった。

 アダムくんからは貰ってばかりいるので、私からも何か渡そうと前から思っていた。こんな価値のあるか分からないものを渡して困られないか心配だったが、喜んでもらえて良かった。

「水谷、ありがとな! 」

 アダムくんはニカッと音がする様な笑顔を私に向けた。それはずっと昔、一年生の頃の彼と同じものだった。なのに、あの頃には感じなかったものが湧き上がってくる。ドキドキと胸がうるさい。これは何だろう? いや本当は知っている。羽山先輩への思いと一緒だ。



 私はアダムくんの事が好きなんだ。



お読み頂きありがとうございました。

シーグラスって綺麗ですよね。私は海に行くと必ず拾ってます。

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