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 アダムくんは、私の隣に座っている。しかし、久しぶりの再会に花を咲かせる事が出来ない。彼は私と目を合わせようとしないのだ。私が「アダムくん、久しぶり!」と話しかけても「…うん、久しぶり」と目をそらしてそう言う。

 この数年で彼に何があったのか? 元気さのかけらもない。しかも彼はズボンを履いていた。アダムくんと言ったらスカートを履いているイメージだったので驚いた。



 この学校では縦割り活動の班長、副班長は六年生がやる事になっている。最高学年がやった方が何かと上手くいくからだそうだ。

 現在、放課後なのだが私は家に帰らず、同じ班になった六年生の子達といた。その中には驚く事にアダムくんもいる。昔の関係だったら純粋に喜べたが、今は気まずい。

 それで、何のために集まったのかというと、縦割りの班長と副班長を決めるためだ。来週、初日の縦割り活動までにそれらを決めろと先生に言われたのだ。当然やりたい子などいないので、最終的にじゃんけんで決めることとなった。



 私は副班長になってしまった。そして班長はアダムくんだ。

 やはり、私は運がないのだろうか? 嫌々、そんな事はない。羽山先輩の隣になった時も初めはそう思ったけど、そんな事なかったじゃないか。アダムくんとの話題も必然的に増えるし、そうしたら今のようなぎこちない関係も回復するだろう。良いこと尽くしじゃないかと私は思った。

「アダムくん、これからよろしくね ! 」

「……うん」

 ……やっぱり不安だ。



「アダムくん、変わったよね〜」

 そう由美は私の家でポテチをパリパリと食べながら言った。

「うん、昔は明るくてハツラツとしてたのに今は凄く大人しくなった」

 私がそう返すと、由美は言った。

「あの噂、ほんとなのかな? 」

「噂って ?」

「舞知らないの? 」


 

「アダムくん、父親の再婚相手に襲われかけたっていう話」



 なんだって?

 驚きすぎて真っ白になった頭が、再起動して初めに浮かべた言葉がそれだった。

「あたしも初めは、デタラメだと思ってたんだけど、前回の体育の時間に女子と男子でペアになるやつあったじゃん。その時アダムくん見学してて、もしかしてって思っちゃったんだよ。ただの偶然かもしれないけど」

 確かに、アダムくんは隣の席の私から距離を置いて座る。地味に傷ついていたが、それが理由だったのかもしれない。

「男子とは意外と普通に話してるじゃん。アダムくん。だから余計にそう思うんだよ」

 由美は真面目な顔でそう言った。



 この世界の性犯罪は、男より女の方が犯す。電車には痴漢ではなく痴女がいる。女性は思春期になると異性の体に性的な興味を、男性よりも持つようになる。だからこの様な犯罪を犯してしまうのだ。




 次の日、学校に行くと既にアダムくんがいた。今までは、また仲良くなりたいがために関わろうと話しかけていたが、噂を聞いてしまった今はどうすればいいか分からない。話しかけない方がいいのではないだろうか? もう昔みたいにはなれないのだろうか?


 色々な気持ちでごちゃ混ぜなまま、席に着いた。その日は一日中アダムくんと話さなかった。

お読み頂きありがとうございました!

暗い話が続いていますが、次はもう少し明るくなるはずです。


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