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あっという間に春です!

 春になりました。六年生はもうすぐ卒業します。私は、羽山先輩といられるのも後少しなのだと思うと寂しくなってきた。



『舞って羽山先輩のこと好きなの? 』

 雄大のあの質問が脳裏をよぎったが、私は違う事を考える。卒業祝いに先輩に何を渡そうか? 誕生日プレゼントに貰ったキーホルダーはランドセルにつけている。あれは本当に綺麗で可愛かった。先輩はセンスが良い。私はあれと同じくらい良いものを先輩に渡したかった。




「本当にそれを卒業祝いに渡すの? 」

 由美は引き気味にそう言った。私の手の中には、「頑張れ! トビタくん〜飛び立つ君に花を添えて〜」がある。いつもクールな顔をしているトビタくんが泣いており、花を持っている。これを貰ったら先輩も可愛さで胸を打たれるだろう。そして私の事をずっと覚えていてくれるはず。

「まぁ、舞がそれで良いならいいけど」

 と由美は言った。「卒業祝いだからどんな物でも受け取りはしてくれると思うし」と付け加えてきたが。由美はこの可愛さを分かってくれない。一度だけ彼女の誕生日にトビタくんをプレゼントしたのだが不評で、それ以来別のものを渡している。

「卒業祝いだったら花とかどうかな? 」

 横からひょっこり雄大が現れた。この感じ久しぶりな気がする。花か、お祝い事に渡す物の中で一番無難だと思う。いいかもしれない。先輩はなんの花が好きなんだろう? よし! トビタくんと花を渡そう!




「先輩、何の花が好きですか? 」

 縦割り活動最後の日、私は先輩にそう聞いた。

「うーん、ガーベラとかかな」

 先輩はそう言った。先輩によく似合ういい花だ。花束にして渡そうと思った。


「羽山先輩、船橋先輩。一年間ありがとうございました」

 五年生の先輩が、小さな花束を渡していた。私もあれくらいのものを渡そう。大きすぎたら邪魔になりそうだ。

「私は班長になったばかりの頃、皆んなをしっかりと纏めなければと思い込み厳しく接してたので、私の事を苦手に思っている子も居ると思う。それでも皆んな私のいう事を聞いてくれて、私は少しずつだけど肩の力を抜く事ができるようになりました。今日まで班長が出来たのは皆んなのおかげです。一年間ありがとうございました」

 羽山先輩は、よく通る声でそう言い切った。

「俺は副班長で、女子が班長をやるからには俺が厳しくしないとって意気込んでたのに、羽山凄い怖くて気づいたらなだめ役になってた」

 船橋先輩の言葉に皆んな笑った。羽山先輩は恥ずかしそうにしている。

「それでも皆んな俺の事慕ってくれて、なめないでいう事を聞いてくれた。この一年、無事に副班長としてやってこれたのは、班長である羽山がしっかりしてたのと皆んなが纏まってくれたからだ。一年間本当にありがとう」

 船橋先輩がそう言い切ると、二人へ向けての拍手が鳴り響いた。羽山先輩、船橋先輩、一年間お疲れ様でした。




「どの花にしようかな〜」

 現在私は、由美と雄大と花屋に来ていた。由美はもうすぐ親の誕生日なので、花をプレゼントする為に買いに来た。雄大は特に理由は無いのだが「二人が行くなら僕も行く。それに舞が変な花を選ばないか心配だから」と言ってついて来た。本当に失礼だ。私は先輩が好きなガーベラを買うと決めたのだ。


 綺麗だったので黄色のカーネーションをみていると、後ろから雄大が言った。

「それの花言葉は「軽蔑」だよ」

「うわっ!びっくりした! べ、別に花束に加えようとか思ってないし」

「思ってたんだね」

 うん、実は少し思ってました。雄大が言った通り、変な花を買おうとしてしまった。彼が居なければどうなっていたか……

「そういえば、由美どこに言ったの? 」

「トイレ」

 そうか、気づかなかった。カーネーションの魅力に吸い込まれていた。

「ちなみに花束に加えるなら、これがいいと思うよ」

 雄大の手の中には、ピンクの花弁が数枚重なった可愛らしい花があった。

「これはベゴニアって言ってね「片思い」や「愛の告白」という意味があるんだよ」

 彼はそう言うと、にこりと笑った。何故その花をチョイスしたんだ。以前先輩に恋愛感情は無いと言ったじゃないか。

「だから、先輩に恋愛感情は無いって言ったじゃん。それに女同士だし」

「同性を好きになって何が悪いの? 」

 雄大は、不思議そうに言った。私は彼の言葉に心底驚いた。

「舞が羽山先輩の事好きなの直ぐに分かったよ。何時も先輩の事、目で追ってたから」

 私はそんなに先輩の事を見ていただろうか?思い返せば、何時も羽山先輩の存在を探していた。

「その目が僕と同じだったから、あぁ舞は恋してるんだなって思ったんだ。僕も由美に片思いしてるから」

 雄大が驚くべき事実を言った。幼稚園のバレンタイン事件の時からずっと由美の事を思っていたのか。あれから毎年、バレンタインデーに私にもプレゼントしてくれるから、もう気持ちは無いのだと思っていた。でも毎年由美には本命を渡して、私はそのカモフラージュだったのか。

「驚いた? 」

 雄大が悪戯に成功したように笑うと、由美が「ごめーん! 」と言いながらこっちに駆け寄ってきたので、この話は終わった。




 私は部屋でおみくじを見ていた。神社に結ばずに持って帰ってきたのだ。恋愛の所には「気持ちを伝えれば先行きが分かれる」と変わらず書かれている。

「私は先輩が好きなんだろうか? 」

 前世では、誰かに恋する前に死んだので、人を好きになる気持ちが分からない。羽山先輩の事を考えるとむねが苦しくなっていくこれが恋愛感情なのだろうか?

「分からない」

 とりあえず、明日は先輩の卒業式の日だ。完成した花束を渡そう。


 私はそう結論づけて寝た。


お読み頂きありがとうございました。

もうすぐ低学年編が終わります。

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