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季節は冬になりました。凍えるような寒さに、布団から出るのが辛い。
布団の誘惑に打ち勝ち、何とか起きる事に成功した私はリビングに行った。
「おはよう、舞。今日は外が凄い事になってるね」
お父さんはそう言った。何の事だろうと思い私はリビングの曇った窓を手で拭いて外を見てみると、あたり一面に銀世界が広がっていた。
「雪遊びしよー! 待ち合わせ場所は近所の公園ね! 」
起きてから気付いたのだが、今日は学校が休みだった。それでもう一眠りしようと思っていたところで、由美から電話がかかってきてそう告げられた。
それで現在私は公園に来ているのだが、寒い。私は12月24日に産まれた正に冬の子なのだが、度をいく寒がりだ。
「こんだけ雪があったら、かまくらとか作れそうだね」
「それナイスアイディア! 」
雄大の一言に由美も乗り、私達はかまくらを作る事になった。
かまくらを寒さに耐えながら黙々と作り続けていると、公園に入ってくるアダムくんを見つけた。
「おーい!アダムくん!」
「……水谷! おはよー! 何してんの? 」
今一瞬、悲しそうな顔をしていた様な気がするが気のせいだろうか?
「あっ!アダムくんおはよー! 今ね、かまくら作ってるんだけど手伝ってもらってもいい? 」
由美がそう言うと、彼は明るく「いいよー」と言ってかまくら作りに加わった。
四人で作っていると、今度は公園の前を通る羽山先輩と船橋先輩を見つけた。今度は邪魔しちゃいけないと、気づいていないふりをした。
「おーい!舞ちゃん!」
あっちから声をかけて来た。私は今気づいたふりをして二人に近づいてく。
「何してるの? 」
「友達と、かまくらを作ってるんです。お二人は……」
「今度、縦割り活動でクリスマスパーティーするでしょ。その買い出し」
なんだ、デートじゃないのか。私はホッとして「そうなんですか」と返した。
「じゃあ、もう行くわね。ごめんね、引き止めちゃって。かまくら作り頑張ってね! 」
そう言うと二人は行ってしまった。背後から「話し終わったなら手伝って! 」と言う由美の声が聞こえてきた。
何とか四人ギリギリ入れる大きさの、かまくらが出来た。
「中々良いんじゃない? 」
と由美が言う。
「もう肩も手のひらも全部が痛いよ〜」
と私が言う。
「なんか凄い達成感を感じる」
と雄大は言う。
「早速入ってみようぜ」
とアダムくんが言ったので、皆んなで入ってみる事にした。
中は狭いが、ギュウギュウというわけでは無かった。結構快適な中で、私達は一息つく。
「はー雪遊びを満喫した気分」
「僕は雪だるまも作りたいな」
由美が満足げに言うと、雄大がそう返した。
「私はもう少しこのかまくらで休みたい」
「俺も」
私とアダムくんがそう言うと「そう? じゃあ僕は一人で作りに行くよ」と言い、かまくらを出て行った。由美は少し考えて「やっぱ私も作る! 」と言って出て行った。かまくらの中には私とアダムくんだけになった。
「水谷って寒がりだよな」
何度も手をこすり合わせていると、アダムくんにそう言われた。
「そうだね、昔から寒いの苦手なんだ。冬生まれなのに」
「誕生日いつ? 」
「12月24日」
「クリスマスと丸かぶりじゃん」
凄い奇跡とアダムくんは少し笑った。
「私、家で誕生日兼クリスマスパーティー開くからよかったら来て」
私がそう言うと、アダムくんは苦笑いをした。
「水谷のお父さん、俺の事許した? 」
学芸会の時の事だろう。黒いオーラを放っていたお父さんを落ち着かせるのには苦労した。
「誤解も解いたし大丈夫だよ。……多分」
ちょっと自信が無くて、最後に余計なものを付けてしまった。これじゃ行きたく無くなるだろう。
「やっぱムリかも」
やっぱり
「いや、水谷のお父さんが原因とかじゃ無くて、本当に家庭の事情で行けないかもしれないんだ」
そうか。家族でクリスマスパーティーをする家庭もあるだろうし、色々と忙しい日だ。残念だがこれなくても仕方ない。
「分かった。来れたら是非来てね! 」
私はそう言った。
それからは、かまくらから外に出て由美と雄大の雪だるま作りに参加した。
アダムくんは、今日一日本当に楽しそうにしていた様に見えた。
お読み頂きありがとうございました。
アダムくんに陰りが……




