1
初のあべこべ小説です。
「オギャーオギャー」
私は、体重3500グラムの元気な女の子としてお父さんから産まれました。
お父さんから産まれました。(大事な事なので二回言う)
「はい、お父さん。元気な女の子ですよー」
助産師らしき人が、私を抱えてお父さんと呼ばれた女の人の元へ連れて行く。
お父さんは、少し角ばった骨格で少し髭が生えている女の人だった。
(はっ⁈ドユコト?この人って私のお母さんだよね。御堂って名前のちょっと男性ホルモンが多い女の人だよね?)
現代から転生したばかりの私は、まだこの世界の性があべこべな事に気付いていなかった。
転生してから、数ヶ月が経った。
私を産んだ人は、この世界では男性でお父さんと呼ばれていた。(名前は御堂ではなく、水谷 茂といった。)見た目は、下半身を除けば確かに男である。
そして女の子である私の股の間には、前世ではあり得なかった物が付いていた。
これらの事から前世基準で考えると、上半身が男で下半身が女をこの世界では「男性」と呼び、その逆を「女性」と呼んでいると私は考えた。
「舞〜オムツ変えようねー」
お父さんは、甲斐甲斐しく私を育ててくれた。少しでも泣けば、何かしてても私を優先してしまうので、あまり泣かない様気をつけることにした。
私の母親はどうやら死んでしまったらしく、本棚の上に写真が飾ってあった。儚い感じの薄倖そうな美人で、今にも消えてしまいそうな雰囲気の人だった。こんなきれいな人にも私と同じものが付いているのだと考えると、改めてすごい世界に転生したものだと思った。
この世界は、性別があべこべな事以外、現代とほぼ一緒だった。ひどい性差別もなく、男も女も大体同じ比率で存在した。
私はお父さんに男手一つで大事に育ててもらい、遂に四歳になった。
幼稚園に通うようになった私が、まず驚いたのはトイレの形だった。
立ち便所が個室になっていたのだ。こちらの世界の女性たちは、自分が用を足しているのを見られるのは嫌らしい。前世の記憶を持っている私もそれはあまり良い気分ではなかったので、全てのトイレが個室だったことに驚くと同時に安心した。
次に驚いたのは、男の子がおままごとを好んで遊んでいたことだ。
おままごとと言っても、お父さんや息子など役があるだけで、ほとんど走り回っているだけだが、息子役が虫を捕まえてくると、それをペットということにしたり、せみの抜け殻を「唐揚げ」ということにして食べる真似をしたりと、それらしい事もしている。
女の子も、おままごとをしない訳ではないが、殆どが男の子に誘われて遊んでいる。女の子のする遊びは、殆どがお絵描き、粘土、土遊び、友達の髪を弄るなどの創作系だった。(鬼ごっこなど外遊びをする事もある)
私は、男の子に誘われておままごとをした時、母親役になった(理由は落ち着いているからだそうだ)その時父親役の男の子が腹に人形を入れて、「舞ちゃん、僕赤ちゃんが出来ちゃった」と恥ずかしげもなく言うものだから、子供とはすごい生き物だと思った。(私も子供だけど)
幼稚園に通う様になって初めて出来た友達は、由美ちゃんといった。
髪をいじるのが好きらしく、私の髪を触っては「舞ちゃんの髪サラサラ〜」とよく言ってくれる。将来の夢は、美容師だそうだ。
彼女の他にも友達はいるが、基本的に二人で遊んでいる。
家も近いので、帰った後もよく一緒に遊んだ。
そんな風に仲良くしていると、いつのまにか私たちはお互いを親友と認識する様になった。
「ずーっと友達でいようね!」
そんな風な可愛い約束も何度もした。
由美ちゃんと楽しく幼稚園ライフを過ごしていたある日、驚くべき事が判明した。
お母さんは大会社の社長令嬢だった。
しがない小説家のお父さんとは、家とほぼ絶縁状態で結婚したらしい。
しかし、お父さんが私を身ごもったあたりで持病が悪化し、死んでしまったようだ。
この事は、私が昼寝をしてると思っていたお父さんが、電話で誰かに話している時に知った。
そういえば、私は父方の祖父母にもあった事がない。
産まれたばかりの頃、病院に見舞いに来たのもお父さんの友人ばかりで、祖父母らしき人は一度も見た事がなかった。
お父さんの方も家族と何かあったのだろうか?
私のその疑問は数日後、直ぐ晴れる事になる。
お読みいただきありがとうございました。