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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

考える女の子の話

作者: 彼方

「彼氏とかいらなーい。秋奈、結婚しよか!」

帰り道にふざけてそんなことを言った。

「うーん、別に優季(ゆき)と一緒に住むのは嫌じゃないんだよね」

「───まじか!嬉しー!でも私、家事とかできないから全部押し付けちゃいそう。一人暮ししたらゴミ屋敷になる予感しかしないもん」

一瞬つまった言葉を誤魔化すように、どうでもいい話を続ける。

そんなことは気にもとめず、秋奈はいつものようにうんうんと頷きながら私の話を聞いた。


今まで普通に男の人と付き合ったことはあったけど、どれも向こうから告白されたから私は特に好きになることもなく、数ヶ月も経たないうちに私から離れた。でも男の人が嫌いとかではなく、人並みに幸せな恋愛を思い描いたりもした。

でも私から誰かを本気で好きになったことはなく、生まれてから19年が経ったというのに、いまだに初恋というものを知らない。まあそれで困ったことはないし、今どきは独身なんて普通だから、将来はバリバリ働いて、独身貴族として優雅な生活を送ってやろうと考えていた。


「ねえ、あのアニメの最新話見た?」

「見た!めっちゃ泣けた!」

「やんな!まさかあんな死に方するなんて思わなかった」

「ねー、悲しすぎ。親友を手にかけないといけないとか。まだあの子がいてくれて良かった」

「唯一の心の支えって感じだよね」

人の少ない帰り道で、いつものように共通の趣味であるアニメの、シリアスすぎる展開について感想を言い合っていた。

お互いウマも趣味も合うようで、他にオタクがいないのもあり、最近はこうして二人でアニメの話をしながら帰るのが日課になっていた。

私は聞き上手な秋奈に話を聞いてもらうのが大好きだが、秋奈も私と話すのは楽しいと言ってくれる。私は自慢ではないが、いわゆる「陰キャ」なので、秋奈が私との会話を楽しいと言ってくれたことが嬉しく、つい秋奈に甘えてしまっていた。


「それじゃ気をつけてね」

「うん、秋奈もねー。ばいばーい」

「ばいばい」

いつもの交差点で別れてから、秋奈の言葉を思い返した。秋奈は私と住むのは嫌ではないと思ってくれている。そう思える程度には私のことを友達として好きだと思ってくれているのだ。純粋に嬉しかった。でもそれと同時に、私の中には小さな疑念があった。それだけだろうか、と。

この感情は、この喜びは、本当に友達としてだけなのだろうか。

今まで感じたことのない程の胸の高鳴りに緩みかけた頬が、戸惑いに歪んでいく。

私は何を考えているんだ。秋奈は良い友達じゃないか。ルームシェアができる子なんか私にだって何人もいる。秋奈だって、私がその内の一人だったってだけで、他意はないに決まってる。それなのに、一人でこんなに舞い上がってどうしたんだ。


風が少し冷たくなってきた9月の田舎を自転車でゆっくりと走った。いつも通りすぎる家の庭の金木犀が咲いていた。良い香りだな、なんて頭の端で考えながら目を向けるが、その美しいオレンジの花を、ただ水晶体へ鏡のように写すばかりであった。


痛いほどの日差しは身を潜めたが、冬が来る前のわずかな心地よい気候を楽しむ余裕もなく、秋奈のことだけを考えていた。

きっと初めてこんなに趣味の合う友達ができたことに浮かれているんだ。友達としての好きと、恋愛としての好きを混同してるんだ。私は友達が少ないから距離感が分からないんだ。

自虐に苦笑いしつつ、そういうことだと結論づけた。

そもそも結婚しようなんて、私だって深く考えずに言った言葉なんだ。何ひとりで悶々としてるんだ、バカじゃないの?

「アニメとマンガの見すぎだわ」

一人呟き、家路を急いだ。


夜、ベッドに潜りSNSを見ていると、人気が出て私の所にまで回ってきた創作マンガを見つけた。読んでみたら女の子どうしの恋愛ものだった。とても美しく、そして激しい感情が秘められていた。

「いいなぁ」

自然と秋奈が浮かんできた。いつも一つにまとめた髪。高い身長にすらりと伸びた手足。真っ直ぐにこちらを見てくれる瞳。誰にでも優しくて面倒見のいい性格。

誰にでもじゃなくて、私だけにしてほしいな。

なんだかもう、否定するのも疲れてしまった。

私だって誰かに愛されたい。それが私の愛する人であればどんなに幸せなことか。そしてそれが秋奈だったら、きっと楽しいのではないだろうか。よく知らない男の人よりも、秋奈の方がいいに決まってる。

ああ、眠いな。こんなこと考えるのは眠いせいだろう。

明日になれば浮かれた気分も冷めるよね。

薄く開いていた瞼がいつの間にか降りていくのに気づかなかった。



「秋奈、里穂、おはよー」

「「おはよー」」

二人の横を通り過ぎ、自分の机に鞄を置いた。専門学校だから規模が小さい分、大学みたいに席が自由ってわけじゃないんだよね。

「優季おはよう」

「舞か、おはよー」

隣の席の舞に挨拶をしながら鞄を開いた。秋奈と里穂は来るのが早いため、朝はよく二人で話している。ほんの少し寂しく感じた。

「優季!この前貸してくれたマンガ読んだよ!」

鞄から荷物を取り出す私に、里穂との話を終えたらしい秋奈が話しかけてきた。

「ほんと!どうだった!」

嬉々として話す秋奈を見ていたらこちらまで楽しくなってきた。秋奈の読んでちゃんと感想をくれるところ好きだな、なんて考えつつ話を聞いた。


始業のチャイムが鳴り、席へ戻る秋奈に手を振った後、ほどなくして先生が来た。つまらない授業は上の空で、私は早速秋奈のことを考え始めた。しかし何度考えても何も進歩はなく、自分の気持ちなのに謎は深まるばかりであった。

結局私は秋奈のことをどう思ってるのかな。


そうしていつの間にか下校時間になり、またいつものように秋奈と帰る。二人の楽しい時間。他の友達と話す時より笑顔になれるのは趣味が合うからかな。他の友達より安心できるのは秋奈の優しい性格のおかげかな。心臓がどきどきしてるのはこんなことばっかり考えてるせいかな。

やば。顔見れなくなってきた。

並んで歩いてるから顔が見れなくても不自然じゃないよね。

「じゃあまたね」

「うん、じゃねー、ばいばい」


こんなにどきどきしてるのに、いざ別れる時がくると寂しいな。

話したいことがあるわけじゃないけど、秋奈とまだ話してたい。明日は何を話そうかな。

なんかもう、秋奈と一緒にいられればそれでいいや。教室にいたら他の子と話すのは当たり前だし、そんなことにまで口出しする権利は私にはない。それにそんな面倒臭い子だと思われたくない。それに帰りは私が秋奈を独占できるもん。今はそれで充分だな。


そういえばあのマンガ、結局どんな終わり方したっけ。途中で寝落ちした気がする。

家に着いてからスマホを開く。茶髪のボブヘアーの女の子が、黒髪のポニーテールの女の子に告白をするお話だった。二人きりの教室で、大人っぽい茶髪の女の子が告白し、照れながらも頷く黒髪の子。大人っぽい余裕と笑みを浮かべながら茶髪の子はもう一人を抱き寄せ、ポニーテールを解く。サラサラの長い黒髪を撫で、指を通し、そのまま頭をぐっと自分の方へ寄せ、そのままキスをする。黒髪の子は顔を真っ赤にしながら受け入れる。


なんて美しいんだろう。素人とは思えないくらい絵が上手いだけじゃなく、美しい光景だと思った。同時に羨ましいと思ってしまった。

私はやっぱり、こうなりたいと心のどこかで考えてしまっているのだろうか。



「電車が発車します。黄色い線までお下がりください」

優季と別れた後、いつものように急行に乗る。スマホを出し、SNSのアプリを開く。そして昨日見たマンガを履歴から見つける。

きっと優季の髪もこんな風にサラサラしているんだろう。

ストレートパーマだと言っていたが、手入れの行き届いたあの髪に触れたら、きっととても気持ちいいのだろう。最近リンスを変えたらしく、いつもより甘い香りがしていた。

面白くて可愛くて、私に一番懐いてくれている優季。この学校を卒業したら離れてしまうなんて信じられない。昨日は冗談でも優季から結婚しようって言われて嬉しかった。だからね優季、私は冗談にするつもりはないよ。他の人に優季を絶対に取られたくないの。この学校に通えるのはあと1年と半年。その間にもっと優季に私のことを好きになってもらわないと。愛してるよ、優季。こんなに好きになったのは優季が初めてなんだから。

百合要素を除けば私の実話の部分が多いです。

最初に話してるアニメはBANANA FISHで、ネタバレになりますが、この前ショーターが死んだところを友達と話してたのでそれを書きました。

拙すぎて意味わからないお話になっちゃってすみません。もし読んでくださった人がいるのでしたらありがとうございました。

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