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湖の女神

作者: 犬坊

   湖の女神


 昔々湖の近くにきこりが住んでいました。きこりは斧で木を切って生活していました。

ある日きこりは手を滑らせて斧を湖に落としてしまいました。斧を無くしてはこれから暮

らしていけません。きこりは必死になって湖を覗き込んでみました。しかし、湖はとても

深く落ちている斧を拾えそうにはありません。きこりが途方に暮れていると、湖の中から

大きく美しい女神様が現れました。女神様は優しい目をしてこうおっしゃいました。

「あなたが落としたのはこちらの金の斧ですか。それともこちらの銀の斧ですか。」

正直なきこりが

「いいえ、私が落としたのは鉄の斧です。」

と答えると、女神は微笑んで鉄の斧に加えて金の斧と銀の斧もきこりに渡してあげました。


 それから幾百年もの月日が流れ、道具も便利になりました。別のきこりがチェーンソー

で木を切っていると湖にチェーンソーを落っことしてしまいました。昔と変わらない姿の

女神様が現れ昔と同じようにおっしゃいました。

「貴方が落としたのはこちらの金のチェーンソーですか。

それともこちらの銀のチェーンソーですか。」

驚いたきこりが正直に答えると、女神はまた微笑みながら金のチェーンソーと銀のチェー

ンソーを渡して沈んでいきました。


 ところがある日そんな森を町にする計画が持ち上がりました。木はあっという間に切り

つくされ湖も埋め立てられ、道が通りビルが立ち並び立派な町になりました。


 通りすがりの女性が煙草の吸殻を水溜りに捨てていきました。

「貴方が落としたのは……」

その声は小さすぎてその人の耳には届きませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ただただ『上手い!』と思いました!有名な昔話と環境問題を合わせ、新たな寓話を読んだかのような、そんな読後感があります。
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