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一時間目 異世界転生

長くなってしまったので分割しました。

まだプロローグですが…。


 異世界転生、なるほど、そうくるか。 俺はネット小説やらの部類を読むことはあるし、トラックに轢かれる時、異世界転生ってことを考えなかったと言えば嘘になる。実際は死ぬ程痛いだけだが。


「最近の若者は理解が早くて助かりますよ。いやはや私も見習わねば。 しかしここはいかんせん人が来ないもので」


 そうすると、話の流れ的にここは転生の間的なアレで、意識が曖昧なのも文字通り存在が曖昧だからってわけか。


「概ねその通りです。 よくある話でしょう? 死んだと思いきや女神様との和気あいあいトークからの異世界転生。 テンプレって感じですよね。多くの日本人は転生の間を真っ暗闇にイスだけってのをイメージするらしいのでこのレイアウトにしてるんです。よく出来てると思いません?」


 確かにそうだな。アニメで映像化されると大体こんな感じだ。ついでに現代に精通してる所も最近の女神っぽい。 ん、待てよ。女神…。 そうだ。テンプレ通りならアンタはキレイな女神様(最近は残念系が流行っているみたいだ)のはずなんだが。 俺にはただの黒煙にしか見えないのは設定ミスか?


「ふむ、やはりそうですか。 ここに来たのは本当に適正アリだったからのようですね。 喜ぶべきか悲しむべきか…」


 なんの話なのかさっぱり見えないな。 さっきの支部だの担当だのと関係があるのだろうとは検討がつくが。


「そうですね、そろそろ本題に入りましょう。 異世界転生の現状と問題について、それが君を呼んだ目的です」


 現状と問題、俺に聞かせてもどうにもならないだろうが、一応聞いておくか。


「ざっくりと異世界転生の歴史について説明しましょう。あなたも学生なら輪廻転生をご存知でしょう。 死した者は現世の徳に応じて生まれ変わる。そしてその輪廻の輪から外れる事を解脱と呼び輪廻から解放される唯一の手段とされている」


 伊達に二留はしていない。 倫理政経世界史くらいは覚えている。ウパニシャッドだか仏道だか興味はないが知識としてならある。


「多くの場合本人の意思に関わらず転生は起こります。人から虫へ、はたまた虫から人へ。 しかしごく稀に解脱を果たす覚者と呼ばれる人がいます。覚者はその輪廻ではもう転生出来ず、太古の昔より人よりワンランク上の存在へと昇華されることが大半でした。

 しかし、ある時昇華を拒む覚者がいました。

 彼は人である事にこだわっていたため、昇華はしなかったのです。基本的に覚者にもなれば欲は消えてしまうのですが、彼は確固たる信念を持ちながらも悟りを開いた。 正直人間とは思えませんね。 とはいえ彼を輪廻に戻すわけにもいかず、にっちもさっちも…というところで出来たのが、人としての別世界に魂を転移させる術、つまり異世界転生ということです」


 そこに落ち着くのか。 しかしまあ、どんなものにも歴史があると実感させられる話だな。異世界転生ってのは最近の流行りだと思い込んでいたよ。



「はは、まあ最近まで異世界転生は使われてませんでしたからね。 1500年頃から覚者はパッタリでしたし。 科学革命が起きるとやはり厳しいですね」


 なるほど、実験、観察重視の近代的合理主義の時代だと宗教にうつつを抜かす人は限られるだろうしな。 それに覚者ってのはなんとなく厳しい環境で育ったイメージがある。


「そういった事情で、異世界転生というシステムは2000年代まで過去の物として扱われていました。

 しかし、近年になって異世界転生の需要がとてつもなく上がったのです。 曰く、地球に転生した人がいたらしくて、その人がつい異世界転生の存在を言っちゃったらしいんですけどね…」


 ………。 マジか。 いや、とは言え覚者でもない連中が知ったところで別に大したこと無いんじゃないか?


「どうやらその転生者は初めての転生ではないらしく、異世界転生の抜け道のようなものを知っていたみたいでして…。 しかもその抜け道は誰でも出来るとかなんとか…」


 そんなものがあるのか…。システムである以上抜け道は存在するだろうが、少し杜撰な気がする…。


「これは実は君にも関係があってですね…。 企業秘密なので、他言無用ですよ。

 そもそも輪廻転生のシステムは生前の善行と悪行の比率を元に次の転生を決めています。 善行が多ければ人に、悪行が多ければ虫に、といった感じです。 この際、覚者に認定されるには善行や悪行の数は大して重要ではなく、覚者たる証である悟りを必要としました。 しかしシステムには悟りを理解することはできないため、悟りを目の見える形にしなければなりませんでした。 そこで生まれたのが幸福値です。 覚者は幸福にあらず、幸福になき者は悟りあり、って発想らしいです」


 幸福値ねぇ。 幸福ってのを数値化するのも難しいとは思うのは俺だけか。


「少なくとも悟りよりは分かりやすいと思いますよ。

 幸福値は一般人の転生にはそこまで関係ありません。また、幸福値にはプラスとマイナスがあり、覚者認定にはプラスマイナスゼロ、またはプラスかマイナスのカンストを必要としました。 プラスマイナスゼロは無我の境地として、カンストは我欲の境地として悟りと見なしたようです。

 これで滞りなくいっていたのですが、転生者は裏技的に覚者認定を得る方法を事前に知っていました。 それは、自殺による幸福値マイナスのカンストです」

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