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ボランティア精神旺盛

すごく…見切り発車です…

ご容赦下さい。


感想等ありましたらお待ちしています。

 俺は、自分が特別だという自覚は無かった。平凡である事にこそ自信があったし自分の代わりなんて腐る程いると常考えていた。自分の命と誰かの命、どっちがだけが助かるなら? という疑問には少し悩んで後者を取る事が間違いだとは思わなかった。


 だから、トラックに轢かれそうな子供がいたら(たとえ猫でも)迷わず身代わりになったし、たまたま銀行強盗に出くわした時にもいの一番に人質に立候補し、その銀行強盗が銃を取り出したら、誰よりも早く射線上に立った。飛び降り自殺を試みた奴を見かけたら、代わりに飛び降りると気が収まるのを発見した時は毎日マンションやら廃ビルやら学校の屋上やらありとあらゆる建物から飛び降りるようになった。じきに気味が悪いと飛び降り自殺をする人は減った。

 

 結果、得た物といえば一割の賛辞と四割の罵倒と五割の嘲笑だった。 怪我も沢山した。骨折が一番多かった気がする。幸か不幸か身体は頑丈になった。あと単位は落としまくった。高校留年を二回した。親には半端見捨てられ親が所有しているマンションで一人暮らしをするようにと隔離されている。部屋の鍵はくれず、屋上の鍵とテントだけくれた。親じゃなかったら殴っていたかもしれない。


 よく何がしたかったのかと聞かれたが、毎回ボランティアだと答えていた。軽いジョークのつもりなのだが、こう答えるといつも妙な顔をされる。


 半分惰性となった学校生活だったが、行ける日は毎日行くようにしていた。友達はいなかったが。作る気もしなかった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その日は悲鳴で目が覚めた。枕元の時計を見ると四時半で、二度寝をしようかとも考えたが、気まぐれで様子を見る事にした。古びたテントの戸を開くと、目の前には曇り空と物干し竿、そして屋上の端でうずくまっている女がいた。


「おい、アンタそこで何をしてるんだ。不審者かそれとも自殺志願者か?」

 声をかけると女はビクリ、としこちらを向いた。


「見て分からない!? 飛び降り自殺よ!! 分かったらあっち行ってて!!」


 端っこでうずくまっているのを最近は飛び降りというのか…。改めて女を見ると女は日本人離れした見てくれだった。銀髪ロングに緑の目、唯一服が学生服なのが逆に目立つ。何故セーラー服なのか。この辺にセーラー服の学校なんて無かったはずだが。そして年齢がいまいちセーラー服というかどちらかというとスモックな気もしないでもない。…日本人離れというか地球人離れしてる気もする。


「黙ってないで何か言ったらどう!? なんで自殺なんてするんだ!?とかあるでしょ!」


 あっち行ってての次はなんか言え、か…。面倒くさそうな気配がするが、朝から飛び降りとは元気な事だ。まだ朝四時半だというのに何処からその元気は湧いてくるのか。とはいえ久しぶりの『飛び降り』だと思うと頭が冴えていくのを感じた。


「すまなかった。だがアンタが『飛び降り』だというなら話は別だ。その自殺、俺が代行しよう」


「は? 何もしかして貴方ヤバイ系の人? 朝早くにこんなとこにいるなんて変わった人だとは思ったけど何かクスリとかキメてる?」


「失礼な奴だ。俺はいつも通りだ。そしてこれはいつも通りのボランティアだ」


 俺はサンダルから運動靴に履き替え、軽く屈伸するとジョギングをするように女めがけて走った。


「ちょ、なんでこっち来るの? ねえ待ってよこういう時は普通説得とかあるでしょ? 嘘でしょ止まってねえ止まれってばーーーー!!!!!!」


 俺はうずくまった女をハードルのように飛び越え、そのままマンションの屋上から飛び降りた。


「止まれ止まれ止まれとまっ…ってあれ?あの馬鹿は?まさか本当に飛び降りちゃったの? え? 嘘でしょマジで?」


 風を切る音の遠くで、焦る女の声が聞こえて安心した。これで女も飛び降りる気をなくしたことだろう。俺は屋上から飛び降りた時用の花壇を視界に捉え、靴と袖に仕込んである小型パラシュートを開き姿勢制御に入ろうとした。何もかもいつも通りだった。予定調和過ぎて笑いすら出てくる。


 ただ、今回だけはいつも通りではなく、何故か女も飛び降りた。


「なんで飛び降りたのよ馬鹿ーーー!!!アタシは貴方に飛び降りて欲しくてあんな所にいたわけじゃないのよーー!!!てかなにニヤニヤしてるの馬鹿じゃないの!!!」



 …呆れて言葉も出ないとはこの事だろう。何故俺が飛び降りたのに女まで飛び降りているのか? 馬鹿はそちらじゃないか?と聞き返したくなったがそれどころでは無かった。


「俺はいいがアンタを死なす訳にはいかない! でなきゃ俺が代行した意味がない!」


 体の向きを逆転させ、落ちてくる女を抱き抱えられるように位置を調整した。


「貴方邪魔よ!!! そこ退きなさい!!!」


「そうもいかない! 俺が退いたらアンタが死ぬ!」


「うるっさいわね!!アタシはこんな高さから落ちたぐらいじゃ死ないわよ!!!分かったら退け!!!」


「訳の分からんことを言うな! 退けない!」


 女が腹めがけて重力に従い落ちてくる。ミシッと音が聞こえた気がし、身体全身に嫌な痺れが広がる。


「がはっっっ……!! アンタちょっと重いな…」


「冗談言ってないでさっさと離して! キモい!」


「冗談ではないしキモくもない!それにもうすぐ地面だ! 舌噛むなよ……っっ!!!」


 ドゴン!!!!!と地響きのような音が周辺に響き渡り、瓦礫が砕ける音が続いた。砂埃と瓦礫の破片が辺り一帯に散らばる。


「痛つつ……。 せっかく取り寄せた制服は破けるわ汚れるわで最悪ね…。何で姉様はこんな事させたのかしら…。ってそうだ! 貴方、大丈夫!? 生きてる!?」


「ギリギリ…アウトだ…。パラシュートは二人分の重さを設計していない…」


 着地位置が少しずれ、俺の下半身が花壇からはみ出した結果下半身をもろに地面に打ち付けた。 感覚はもうほぼない。というか下半身を見るのも怖い。


「貴方、下半身がR18状態よ…。キモくて吐きそう…」


  死にかけの俺にクソ失礼な事抜かしおる。と、こんな悠長な事を考えるのも厳しくなってきた。


「勘弁…してくれ…。 もう死ぬんだからよ…」


「そうね、貴方は間違いなく死ぬわ。 残念だけど。 最期に言い残す事はある?」


 真面目な顔をして真面目に言ったいた。もしかしたらこの女は修道女だったりするのだろうか。そんなどうでもいい事が頭の中を流れては消えていった。


「そうだな…。最後の最後に善いことが出来た…気がする…。 アンタ、幸せになれよ…」


「何カッコつけてんのよ。馬鹿みたいね。もうすぐ死んじゃうのに」


 だからこそ、最後くらいカッコつけたいんだよ。


「まあいいわ。貴方の最期の言葉、確かに聞き届けたわ。…貴方みたいな変わり者なら、七隊が引き取ってくれるもね。それはそれで地獄だけど」


 そんな訳の分からん言葉を最後に俺は意識を失った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 気づいた時には、真っ暗な空間にいた。 自分の体の感覚は無く、何もかもが混ざり合っているような、そんな感覚。 意識を抜いたら自分がわからなくなりそうで、狂いそうだった。


 何秒、何分、いや何日経ったのだろうか。時間の感覚もよくわからないまま、目の前がぼんやりと光り、声が聞こえた。すると、徐々に意識がはっきりしてきた。


「どうやら成功と言っていいようですね。そろそろ来るかなとは思っていたが、少し早かったですね」


 男の声のような、女の声のような、つかみどころのない声がした。正直かなり胡散臭い声だ。同時に目の前にイスが出てきた。 イスに黒煙のようなものが座る(煙が座るというのは妙だが)と、こちらを向いて話し出した。


「私は、そうですね。君達の言うところの異世界転生の女神様のようなものですかね?正確には違うけれど、君らにはこう言うのが一番分かりやすいでしょう?日本人は一番転生したがる人種だし、特に君くらいの年齢の子は多いですし」


 ……なんの話なのか掴めてきた。『異世界転生』という単語、暗闇の中のイス、もしかしたらこれは…。


「そうだ、御察しの通り君は転生します。 ただし超イレギュラー的転生としてです。ーーここは異世界転生日本支部第七隊"篝火の船"。担当転生は、"調停者"となります」

一話、最後まで読んで下さりありがとうございます!

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