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プロローグ
西は堅牢なる石の都。
北は荘厳なる白亜の都。
東は肥沃なる緑の都。
南は新進なる黄金の都。
それら四つの大国の間に広がるガダブ砂漠は、旅慣れた者が駱駝で一ヶ月、慣れない者なら案内をつけなければ、二ヶ月経っても横断しきれず砂塵の一粒になるか、運よくどこかのオアシスに辿り着いて、一生をそこで終えるか。砂嵐と蜃気楼の闊歩する、広大な砂漠である。
点在するオアシスは百を超えると言われるが、正確な数までは誰も分からない。
ただ、どんな砂漠の端までも――あるいは四つの大国までも――その名を轟かせるオアシスがひとつある。
〈タフリール〉――ガダブ砂漠の中央に位置し、最大級のオアシスによって千年の昔から栄え続ける、砂漠の大小オアシスを束ねる〈絢爛たる月の都〉だ。
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