揚げ物おじさんの悲恋
揚げ物おじさんは小さな頃から揚げ物が大好きでした。好きすぎて揚げ物坊やとも昔は呼ばれていました。彼の一生は揚げ物と一緒に寄り添ってきたと言って良いでしょう。朝昼晩年中無休で揚げ物を食べていました。おやつも揚げ物の一種であるドーナツを欠かせません。どんなジューシーで皿いっぱいに盛られた揚げ物料理でもぺろっと平らげる姿は油っこいが爽快に感じさせてくれます。
だけどとあ日、揚げ物おじさんは唐揚げ弁当を食べながら首を傾けます。あれだけおいしかった揚げ物がおいしく感じられなくなっていました。
それから数日というものの唐揚げを食べてもカツ丼を食べてもメンチカツを食べてもおいしく感じられなくなりました。おいしく感じられないストレスからか胃の調子が悪くなります。
何とかおいしい揚げ物料理を食べなくては、そう思った揚げ物おじさんはとある定食屋に向かいます。
揚げ物おじさんは週に一度の楽しみがあります。花金には必ず天ぷらと日本酒を頼むのがお決まりです。そのお店は味が大変評判で、かのミシュランに三ツ星と認められるほどです。
その日は金曜日ではありませんでしたが今は事を急ぎます。ここなら揚げ物もおいしく感じられるだろう。そう期待して揚げ物の中でも特に好物であるエビの天ぷらを3尾を食べましたが残念ながらおいしく感じられませんでした。
尻尾を残して会計に並びます。
払い終わって揚げ物おじさんは言います。
「おやじ……味が落ちたな……」
揚げ物おじさんは店を出るとさまよい始めます。揚げ物おじさんは揚げ物以外の料理を知りません。
だから、どこかにきっと満足させてくれる揚げ物があると信じ、さまよい続けます。
自分がどうして揚げ物をおいしく感じられなくなったのか分からないままに……。




