9話~輝side~
僕にとって、兄貴は兄であり、父親だった。
僕は兄貴をもうこれ以上困らせてはいけないんだ…
僕らの両親は、僕が8歳のときに事故で死んだ。
そして僕らは親戚の家に住むことになったけど、親戚のおばさんとおじさんは酷い人だった。
兄貴が大学に行くことをよく思ってなくて、こき使ったり、働かせたりした。
僕は…
-虐待を受けた-
服で隠れる所を蹴られたり、タバコの火を押し付けられたり…
そして、
針で刺されたりもした…
兄貴が気づいたときには、僕の心はもう限界だった。
「ごめんな、辛かったよな…」そう言いながら兄貴は僕を抱きしめた。
僕はただただ泣くしかなかった。
僕らは親戚の家を出て、アパートで暮らし始めた。
兄貴は、バイトで学費とかを稼ぎながら、大学に通った。
僕がうなされて眠れないときは、僕が寝るまで手を繋ぎながら、
「お兄ちゃんが居るからな~」そう言ってくれた。
そして、僕が寝た後に、次の日の朝ご飯を作り、大学のレポートを仕上げていた。
さらに、僕が不安がらないように僕より先に起きて、
「おはよう」って言ってくれた。
こんなに僕に優しくしてくれた兄貴に、僕は恩返しがしたかった。
もう兄貴を困らせたくなかった。
なのに神様は残酷だ。
何で僕なんだよ。何で。何で。何で…
僕は兄貴を困らせるためだけに生きてるんじゃないかな…
僕はあんなに優しい兄貴を困らせるんだ…




