4話
それから1ヶ月がたった。
「輝、体調どんな感じ?」
「別に普通だよ。えっとね…箸が持てなくなったかな?」輝の『普通』は、病気が進行していないってことじゃ無くて、普通に進行しているってこと。
この病気は、止まることがない。
どんなに頑張っても、緩やかに進行してしまう…
「じゃあまた来週な。今日僕の家泊まる?」
「うん。泊まる…」
「本当!!じゃあすぐ準備するな」そう言って僕はすぐに帰る準備をした。
「ひか~今日はカレーだよ」僕はお箸を使わなくても食べられる料理を作ってあげた。
「ありがとう」
「「いただきます」」
輝はおいしそうに食べてくれた。
「おいしかった~」
「よかったよかった」
この時間が永遠に続けば…って思うのはいけないこと?
<次の日>
「じゃあ仕事行ってくるね」そう言って輝は僕の家を出て行った。
「うん行ってらっしゃい」
僕は輝が出て行ったから2時間後くらいして、家を出た。
輝どんな仕事してるのかな…そう思って、売店の前を通った。
「おい、なにしてんだよ」
「すみません」
「この売店は障害者を雇っているのか?」
「すみません…」
そこには、レジで怒っているおじさんと、落ちた小銭を拾おうとしている輝がいた。
その手は小刻みに震えていた。
「大丈夫だよ」そう言いながら僕は小銭を拾っておじさんに渡した。
「ここは病院ですので、『障害者』という言葉は避けていただけますか?」僕がそう言うと、
「はぁ?」そう言っておじさんは帰っていった。
「ひ~か、大丈夫だよ」そう言いながら僕は輝の震えていた手を握った。
「僕、手に力が入らなくなっちゃったよ。障害者だからさ」輝はそう言って笑った。
もう笑わないで。
泣いていいんだよ。
「黙らないでよ…」輝はそう言って壁に手をついて立ち上がった。
僕はゆっくりと立ち上がる輝をじっと見つめることしか出来なかった。




