31話
「いらっしゃいませ~」
「あの、向日葵ありますか?」
「えっ向日葵ですか?ちょっと今は…」やっぱりか…
今は春。向日葵の季節には少し早い…
「高くてもいいんですけど…」
「すいません。まだ入って来てなくて…」
「そうですよね…」
向日葵は、母さんたちが好きな花だから供えてやりたいんだけどな…
「じゃあ輝、どの花がいい?」僕はそう言いながら店内を回った。
店の中はホースとか障害物が結構あって、車イスを押すのは大変だった。
しかも、ちょっと肌寒い…
「輝、寒くない?」
「寒い…」輝がそう言ったから、僕は輝に着ていたパーカーをかけてあげた。
「輝、決めた?」
「うん!カーネーション!!可愛いし…」
「了解!すいませ~ん。カーネーションください…」
カーネーションの花言葉は
「はーい、何色ですか?」
「うーん…」僕が迷っていると、輝が
「白と青!」って…
「白と青でお願い出来ますか?」
「あっはい!少々お待ちください」
「お待たせしました~」そう言って店員さんから手渡されたのは、綺麗なカーネーションだった。
白色のカーネーションの花言葉は
『(亡くなった人へ)尊敬』
青色のカーネーションの花言葉は
『永遠の幸福』
偶然なんだろうけど、何か切なくて少し苦しい…
僕らは、カーネーションを持って母さんたちに会いに行った。
「母さん、父さん、久しぶり!!」
「あのね、僕、今ね…」僕はここに来たときだけ、少し子供みたいになってしまう…
「…うぅ~」
「ひか?ごめんごめん…」
「お花!!」輝にそう言われて、お花を買ってきたことを思い出した。
「あっ!お花買ってきたよ。綺麗でしょ?輝が選んだんだよ」
「兄貴、花瓶に差してよ…」
「はいはい。教えてくれてありがとな」僕はそう言って輝の頭をなでてあげた。
「じゃあ母さんたち待たね♪お盆は来れないかもだけど…」僕はそう言って輝の車イスを押しながら、タクシーへと向かった。
「ひ~か、今年も公園行く?」僕らは、毎年あの桜の綺麗な公園に寄ってから帰っていた。
「ううん、もう疲れた。ごめんね、兄貴…」
「今日いっぱい連れまわしちゃったもんね。じゃあ…すいません、公園の周り1週してから帰って貰っていいですか?」僕がそう言うと、
「はい。ではスピード落としましょうか?」運転手さんは、そう言ってくれた。
その心遣いが、凄く嬉しかった。
「ひ~か、見える?桜綺麗だね」僕がそう言うと、輝は
「兄貴…」そう言って目から涙をこぼした。
「ひ~か、どうしたの?」
「……」
「ほら泣いてちゃ桜見えないでしょ?すっごく綺麗だよ?」僕はそう言って輝の涙を拭ってあげた。
「そういえばさ、『輝』って名前ここで決めたんだよ!」
「兄貴が?」
「うん。『灯を照らしてくれる希望の輝』ってことでね…」そこまで言って、少し恥ずかしくなった。
「兄貴ごめんね…」
「えっ輝?」
「僕はもう…」そこまで言って、輝は目を堅く閉ざしてしまった。
「あっ!!すいません、家に寄っていただけますか?」
「はい、良いですよ」
「すいません…」病室に輝の着替えが無かったことを思い出して、家に寄ることにした。
「ありがとうございます」
「いえいえ、何分ほどかかりますか?」
「あっもう良いです。支払います」僕はそう言ってポケットから財布を出した。




