25話
「輝、よく眠れたろ?」僕はそう言いながら、輝の体を仰向けに戻した。
「うん…」
僕はいつ輝にあのことを言い出そうか、迷っていた。
しばらく輝を見つめていると、いきなり輝が息を荒げた。
「輝!?大丈夫だからな…」そう言いながら、僕はナースコールを押して、輝の体を横に向けた。
「灯?どうした?」ナースコールを聞いて、空が病室にやってきた。
今は落ち着いているが、輝は目に涙を溜めていた。
「輝くん、怖かったな…でも僕もきたし、大丈夫だよ」空はそう言いながら輝の頭をなでた。
その時、輝は涙をこぼした。
輝の涙は止まらずに、シーツを濡らしていった。
僕は
「怖かったな…ごめんね」そう言いながら輝の涙を優しく拭ってあげた。
輝が落ち着いた所で、空が口を開いた。
「輝くん、あのな…ちょっと呼吸がしにくくなってるみたいなんだ」
「……」
「だから…」そう言った空の言葉を遮って、僕は輝に語りかけた。
「もしね、呼吸が出来なくなったら、呼吸器を付けないといけないんだ。でも、付けるかどうかは、輝に決めてもらわないといけない…」
「僕ね…知ってたよ」
「輝?」
「さっきだって、怖かったんじゃない…嫌だったんだよ。もう何も出来なくなるんじゃないかって…」
「輝…」
「兄貴はどっちがいいの?僕にそうまでして生きていてほしいの?」
僕は『もちろん』って言おうと思ったけど、空に止められた。
「空?」
「灯の考えじゃだめなの。輝くんの気持ちを聞かないと…」空は泣いていた。
「うん、分かったよ…だからごめんな。輝が決めてよ…」僕はそう言って輝の頭をなでた。
僕の目からは、涙が溢れていた。
(何でだろう。輝は絶対生きてくれるって信じているはずなのに…)
「兄貴たち何で泣いてるんだよ。僕が決めるんだろ?もう少し考えさせて」輝はそう言って笑った。
輝は生きてくれるよね。
僕らと生きてくれるよね。
輝…




