18話
「あの、おじさん。これ何なんですか?」
「だから言っただろ?お前は女だ。って」
「嫌ですよ。僕は違う所でバイトしますから」そう言って僕は電話を切ろうとした。
しかし、
「いいのか?」って言うおじさんの低い声が聞こえて、僕は電話を切れなかった。
「おじさん?」おじさんは、
「お前がここで働かないって言うなら、もう家に入れないぜ?」そう脅してきた。
僕だけならおじさんにお世話にならなくても生きていける。
でも輝…
輝はやっと学校で友達が出来てきたらしいし、この先形だけでも、『お父さん』『お母さん』といった存在が必要になってくるだろう…
僕が輝のことを考える。そう見越して、脅してきたのだろう。
「分かりました…」僕はそう言って電話を切った。
僕は甘く見ていた。この先の出来事を…
僕を壊していくものだということを…
「あの、福富さんでしたっけ?よろしくお願いします」
「はいはい。これから堅苦しいのはなしね。じゃあこっち」そう言って店の裏口っぽい所に通された。
「みんな女性なんですか?」
「そうだよ、灯ちゃんが男の娘1号目。じゃあここに座って」僕は言われた通り、鏡の前のイスに座った。
「こんにちは、灯ちゃん。私があなたのメイクを担当する高橋です」そう言って綺麗な女の人が僕の髪を扱い始めた。
僕はだんだん女の子になっていって、僕のプライドはズタズタだった。
「わー可愛い!!」そう言われて鏡を見ると、もう僕ではなかった。
「あの、これからどうするんですか?」
「お店が開いたら、お客様の接待。まだ君が男の娘って言うのは黙ってて」
「はい…」僕は憂鬱だった。
「じゃあ灯ちゃん、お客様がきたから…」そう言って福富さんは僕をお店に出した。
「こんにちは、新人の灯です。今日は何にしますか?」僕がそう言うと、50歳くらいのお客様が、僕を引き寄せた。
「じゃあ今日は一緒に飲むか!!」
「えっ?」
「お酒持ってきて」そう言ってお客様は僕の隣に座った。
僕はお客様にお酒を注いだ。そして、僕はお客様にお酒を注がれて、一緒に飲まされた。
(僕、未成年なんだけど…)
「灯ちゃん、可愛いね」そう言って笑うお客様の息が耳にかかって、僕はかなり苦痛だった。
「灯ちゃ~ん、上がっていいよ」そう言われて、僕は来たときの部屋に戻った。
そして、すぐにトイレに駆け込んで、胃の中のものを全て吐いた。
僕は飲んだことのないお酒を大量に飲ませられて、気持ち悪くなってしまっていたのだ。
「灯ちゃん?もう帰っていいよ」そう言って福富さんはタクシーを用意してくれた。
「あっ、はい。さようなら」僕はそう言ってタクシーに乗り込んだ。




