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8話 女神対談

世界についての説明回。

「えー、改めてこんにちは。サリア教の御神体、サリアです」

「その女神様から力を貰った、キリルです。よろしく」


少女──ではなく女神様と、互いに挨拶を交わす。

「よく分かりましたね。この姿では何度も下界に降りているのですが、正体がばれたことはほとんどないんですよ?」

女神様が首を傾げる。可愛いな。

「意味深なこと言いながらでしたし、出てくるタイミングもぴったりでしたしね。ちょっと考えれば分かりますよ」

そう言って女神様の頭を撫でる。

「むう‥.地龍の龍人族は賢いものですが、こうも簡単に見破られては不安がありますね‥.ところで、何故私の頭を撫でているのでしょうか。」

「可愛い子の頭を撫でるのに、理由でも?」

私は開き直って答える。女神様はため息をつきながらも、抵抗することは無かった。


「今まで転生してきた人は大抵、教会があれば私に話しかけてきたんです。なのにあなたはもう四ヶ月も経とうというのに、一向に来る素振りを見せませんから、てっきり私の事を忘れているのかと」

「あはは‥.いえ、覚えてはいましたよ。ちょっとめんどくさかっただけで」


教会の長椅子に腰掛けながら、女神様と話をする。

「はぁ‥.まさかこんなに物臭な人だとは‥.。でも、楽しんでいるようで何よりです。どうです?異世界での暮らしには慣れましたか?」

先生みたいなことを言ってくる。

「ええまぁ、お陰さまで毎日楽しいですよ。モンスターを狩ったり、友人と駄弁ったり、友人をおもちゃにしたり」

「もう少し友人を労ってあげてください。まったく、折角取って置きの贈り物を差し上げたというのに何をやってるんですか」

だってノリがいいんだもん。あれは止められないね。

「贈り物って、この体のことでいいんですよね?」

「はい。龍人族はとても希少ですからね。その能力なら、もし魔王を討伐しようとしても申し分ないでしょう」

やる気ないんだが。あ、それより

「強いのは分かるんですが、寿命長すぎません?最初聞いたとき絶望したんですが。そんなに長くニートやれるわけないじゃないですか」

「ニートで過ごそうと思ってたんですか!?ええと、寿命についてはしょうがないんですよ。この世界では長命の種族も多いですし、そこまで特別というわけでもないので」

「それにしたって、最低500年ですよ?前世とのスケールの違いに驚きましたよ‥.最近は、そんなもんかって納得してますけど」

いつまでもうじうじするのは嫌いだ。

「それで、キリルさんはこれからも同じように過ごすんですか?冒険者として大成するとか‥.」

「しません。飽きるまでこのままです」

女神様は不安そうな顔をする。そんなに心配か。

「で、ですが、ずっと同じとはいかないかもしれませんよ?もうすぐ魔王は復活しますし、世界は戦争状態になります。そのときは‥.」

「その時はその時です。私は自分の生き方を変えるつもりはありません。」

自分の為に生きて、何が悪いのか。

しかし、魔王ねぇ。

「何で勇者と魔王なんているんですか?二つの世界といい、わざわざ平和にならなそうなものを用意するなんて」

「う、ええと‥.」

しかし、女神様は答えにくそうな顔をする。

やっぱり神として、言っちゃいけないこともあるのだろうか。


そこまで考えて、ふとある答えが浮かぶ。

「もしかして、勝手に出来たんですか?」

「っ‥.!察しがいいですね」

当たりか。

「二つの世界も、勇者と魔王も、私がつくったものではありません。そもそも私の役目は、管理している世界の魂の行く末を決めることで、直接戦争に干渉することはあまり無いんです。」

勝手にか。世界の在り方そのものが、神の手を借りずにつくられたものだったとは。生命ってすごい。

「じゃあ勇者が勝とうが魔王が勝とうが女神様的には関係ないんですね。どっちの世界の死者が増えるってだけで」

吐き捨てるように言ったが、女神様は反論してくる。

「ち、違います!私は本来、悔いのある魂が減るように願っているんです!」

「じゃあもっと干渉すればいいじゃないですか。神様なら誰も文句言わないでしょう」


「‥.ここまで、私の力を頼らずに発展してきたのです。その意思だけは、尊重したいんです」


随分殊勝な心掛けだ。

私達の能力が強すぎないのは、そういった思いからだろう。


「そうですか‥.じゃあ、私はもう行きますね。また来てもいいですか?」

女神様は嫌そうな顔をせず、薄く笑って私を見る。

「ええ、もちろん。転生した方のメンタルケアも私の仕事です。この人生、楽しんでくださいね?」

わかりましたよ女神様。

「あ、じゃああのカリアンとかいう奴の相談とかにも乗ってるんですか?」


「‥.‥.‥.」


女神様は、答えずに目を逸らした。





森に帰った私は、装備の点検をしている。

しかし、女神様と話して色々と疑問が解決したな。

魔王をあまり問題視していないのは、別に不具合でも何でもないからか。

過去には魔王が勝ったパターンもあるらしいが、女神様にとっては悪役というわけではないのだろう。

私がぐうたらすると聞いて焦っていたのは、やりたいことをやれずにまた後悔を残すかもと思ったからだな。


だが‥.頭の良い私はあることに気づいていた。

二つの世界が同じ扱いだというのなら──


「魔界側にも転生能力持ちが居るってことだよね」


こいつは厄介なことになりそうだ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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