73話 出発、の前に
ラトニアは13歳です。一応ロリ?
魔界に行くと決めたのはいいが、私達には旅仕度も無いし、そもそも長距離移動のいろはも知らない。
ラトニアは飛竜で人界まで来たがそれももう無い。
エルも侵攻の際は他の魔王軍に連れられての移動だったらしく、独力では自信が無いらしい。
「魔界への行き方を知ってる奴は……そうはいないよな」
軍の人間なら遠征とかで行ってるかもしれないが、伝があるわけないし。
「はー、めんどくさ」
かといってほっぽりだす訳にもいかないし、何とかするか。
「ラトニアー、準備出来た?」
「大丈夫です。元々荷物もほとんど無かったので」
時間が経って吹っ切れたのか、ラトニアの顔は清々しかった。
「後、埋葬していただき有り難うございます」
「別に手間でもないから構わないよ」
深く感謝されることでもないので流しつつ、横にある墓を見やる。
こいつはラトニアの乗っていた、あの木に引っ掛かっていた飛竜のものだ。
ラトニアがかなり悲しそうな目で見ていて気になったので埋葬した。
「私の為に頑張ってくれたんですもの」
そう言うラトニアの目は、悲しげではあるが弱くはなかった。
「んで、まずはガルムルクに行こうと思う」
「ガルムルク?……ああ、カロロさん目当てですね」
エルには見当が付いたらしい。
「あいつなら色々知ってると思う。五百年の年期は伊達じゃないだろうからね」
世界中を回ってたらしいし、助言くらいはくれるだろう。機嫌が良ければ。
「よく分かりませんが、頼れる人がいるんですね?」
「ああ、しかも私らと同じ龍人族」
ラトニアにはもう私達が龍人族であることを話している。どうせ直に分かるだろうからね。
「もうここには戻ってこないから、エルも準備しちゃいなよ」
「はーい。それより、ガルムルクへはどうやって行くんですか?お金無いですよ」
エルの心配も尤もだが、そんな正面から行くつもりはないさ。
「任せな。エル次第だけど」
「はい?」
私の思いつきを舐めるなよ。
「そんじゃ、エルよろしく」
「はあ、ちょっと不安です……」
支度を終え、出発の時になった。
肝心のガルムルクへの移動だが、その辺は今からエルに解決してもらう。
「じゃあ、龍化しますよっ!」
少し気合いを込めた掛け声と共に、エルが変身し黒い龍が現れる。
「本当に……龍人族なんですね」
「まぁ疑うよなぁ、普通」
もう伝説クラスになってる存在だしな。私としては強さよりずっと隠れ続けてることを評価したいが。
「キリルさーん、大丈夫ですよねぇ?」
「でかくなったのは図体だけか。つーか大丈夫かどうかもあんた次第だよ」
移動手段というのは、龍化したエルの機動力で駆け抜けちゃおう、ていう我ながら雑な方法だ。
私では亀のような速度しか出ないが、エルなら数十分で行ける。闇龍は万能だからね。
「もう、誰かに見られたら終わりですよ。町の近くに龍とか大騒ぎですよ」
「森の中だし、私の感知で補助してやるよ。もし見られてもそいつを消せばいい」
「ちょおっ!?」
流石にそれは冗談だ。精々記憶消去だな。
「冗談に聞こえないんですよ……とにかく乗ってください」
乗りやすいように体を屈めてもらい、ラトニアを抱えて背中に乗る。
「これ、振り落とされませんよね……?」
「私が掴んどいてやるから心配すんな。エル、出来るだけ最高速でね」
「森の中をですか……」
隠密を使用してエルの気配を薄くして、土で私とラトニアを固定する。これで準備完了だ。
「じゃあ出発!」
「はい!行きますよっ!」
少し助走した後、エルは翼を広げて飛んだ……が
「うおおっ!結構勢いある!」
「ああああ、地面近いっ!」
案外きつかった。まあ地面すれすれの超低空飛行だしな。
「まだ最高速じゃないんで、我慢してくださいっ!」
「ああもう、カロロみたいにはいかないかっ!」
カロロは風を操作しているからどれだけ速く飛ぼうと無風だが、エルはそうはいかない。
つーか速いな、弱点が無いから器用貧乏な能力値かと思っていたが、全然そんなことはなかった。
全部の能力が高いって、他の龍涙目だよなぁ。
「何度か木にぶつかりそうになってますね」
「人を乗せて飛んだことないんじゃない?」
不安定な飛行だったが、何とか人に見られることなく私達はガルムルクに辿り着いた。
キリル、安定のスイーツ脳




