7話 せめて祈ろう
遅れを取り戻すかのような連続投稿。
女神から授かった力。
今このイケメン(笑)は、確かにそう言った。
私にも馴染み深い言葉だ、聞き間違えるはずもない。
「まあ、最初はびっくりするよね。実は俺、転生して女神のサリア様から力を貰ってるんだよ」
自慢気に言ってくる。その行動が鼻につくが、今はそれどころではない。
「力、というと?」
「ふふん、気になるかい?じゃあ特別に見せてあげよう。本当に特別だよ?」
ご託はいいから早くみせろ。
「それじゃあっ‥.出でよ、俺の力!」
そいつが叫んだ途端、奴の体の内から光る珠が出てくる。
それはすぐに形を変え、光輝く剣となった。
「これが俺の正義の心が形となった剣、その名も『カリアンソード』!」
だっせぇ。
「魔法の類いではないわね‥.只者ではないというのは確かなようね」
セレスが分析するが、こいつはただの馬鹿だと思うぞ。
「このカリアンソードは俺専用でね。俺に合わせた性能を発揮してくれるんだ。」
自分に一番合った武器ってことか。手に馴染む武器はそれだけで強みになるからね。
「でもそれってあなたが強くなきゃ意味無いような‥.」
「当然これだけに頼ってる訳じゃないさ。魔法だって光属性なら上級まで使えるし、職業は聖騎士。まだA級中位だけど、冒険者中でも中々の実力だと自負してるよ」
‥.これが同じ転生者なのだろうか。
つまり鍛えれば鍛えるほど武器と共に強くなるってことだろ?説明から考えるに奪われることも無さそうだし、結構良い能力だと思うんだが。
「この能力のお陰で、俺はここまで来れたんだ。女神様にはいくら感謝してもしたりないよ。明日もあの女の子達と一緒に教会に行こうと思うんだけど、キリルちゃんと後ろの二人もどうかな?」
教会?ああ、そういえば行ったこと無いな。
私も女神様にはお世話になってるし、一度ぐらいは顔を出してもいいかもしれない。
「ん?どうしたのこっち見て‥.あ、その気になってくれた?あれ、どうして拳を握りしめ‥.ぶべしっ!」
目の前の色ボケイケメンをぶん殴り、私は教会に行くことを決めた。
「ねえあんた、気持ちはわかるけどもうちょっと抑えなさいよ。あいつ、白目向いてたわよ」
帰り道にセレスが忠告してくるが、
「あんなの我慢できるわけないでしょ。既に女に囲まれてるのに」
「あんたねぇ‥.」
セレスは呆れるが、
「キリルちゃんは、私達も誘われたから怒ったんだよね?」
ミーアが続いてそんなことを言う。
「なにあんた、私達のことで怒ってたの?妬いてたの?」
セレスがニヤニヤしながら言ってくるが、何をほざくか。
「別にそんなんじゃないから。むしろ男に飢えてるセレスが、あの男に引っ掛からないかと思ってたね」
「飢えてないわよ!確かに私はもう50年は生きてるけど、エルフからしたらこの年で独身は普通なの!まだ100年は急がなくてもいいのよ!」
「落ち着いてセレスちゃん!墓穴掘ってるから!キリルちゃんがお腹抱えて笑い堪えてるから!」
翌々日、私は教会の前にいた。
何故一日飛ばしたかって?あの雰囲気イケメンと会わないためである。
教会は特に変わった外観ではなく、清らかそうな感じだ。なんか場違いだなぁ。
中には誰もいなかった。サリア教と言えばこの大陸での最大手だろうに、この町にはそこまで信心深い教徒はいないのか?
棚の本棚には、教本と思われるものが数冊並べられていた。
サリア教の教えは、弱い人達を守れだの、悪に負けてはいけないだの、普通にそれっぽいことである。
「まあまともそうな女神だったし、変な宗教ではないかな」
合っているかも分からない祈りを捧げ、教会を出ようと振り替えると──
「ようやく来てくれましたね」
──不敵な笑みを浮かべた、修道服を着た少女がいた。
その子は、見た目からは想像もできないほど大人びていて、そこらのプリーストよりも神聖な雰囲気で‥.‥.‥.
「あぁ、女神様?」
「せめてもう少し驚いてくれませんか」
随分幼くなったな、女神様。
幼女はパワーだよ。
可能であれば夜にも投稿します。