71話 襲来、暗殺者
戦闘回……のはずなのに
私達を取り囲んだ奴等は皆一様に顔を隠している。どうみても裏の人間だな。
「……」「……」
そいつらはこちらを見ながら何か話し込んでいる。多分私達を始末するとかそんなんだろう。
「おーい、あんたら何者なんですかー」
「!」
ちょっとは話でも出来ませんかねぇ。
敵意はあるけど、なんか動いてくれないと判断出来ない。
奴等は少しこちらの様子を見ていたが、やがて一人が前に出た。
「女、その娘をこちらに渡せ。大人しく従えば命は取らん」
「やなこった」
「何?」
即答したのが意外だったのか、相手は露骨に驚いた。
「……命が惜しくないのか?」
「だって渡したところで殺しにくるだろ。私らを生かしてそっちに得無いし」
そんな見え見えの罠を踏む訳ない。
「それより、早くかかってこいよ。事情は後で聞くからさ」
戦闘の意思を見せると、相手も武器を向けてきた。
「ふん、ならばお望み通りにしてやる」
いいね、分かりやすくて。でもその前に……。
「エル、その子連れて退避!」
「あ、分かりました!」
言うが早いか、エルは女の子を抱えて空へと飛んだ。
「!何!?」
「落ち着け、まずは目の前の障害から排除するぞ」
敵はエルが消えたにも関わらず冷静に私を片付けるつもりのようだ。
跳躍力については、身体強化魔法とかがあるから驚くところではない。素であのぐらい跳べる奴もいる。
「んじゃあ、心置きなくやろうか!一人残らず殺してやるよ!」
「ほざけ、小娘!」
はっ、雑魚共が。まずは力の差を見せつけてやるよ。
「ふっ!」
賊の一人が背後から剣で斬りかかってくる。当然四方からも来てるけど。
「取り敢えず一人」
「!?」
斬りかかってきたのが一番近かったので、剣を握り潰して攻撃を止める。
そのまま頭を掴み、首をねじ切りつつ頭蓋を握り潰す。
「……意外と脆い」
部分龍化しなくてもこのくらいは余裕か。
「さ、今ので私の強さは大体分かったろ?」
首の無くなった男の死体を手に取り、見えるように持ち上げる。
「そしてお前達を簡単に殺せる。来いよ、残りも無惨な死体に変えてやる」
死体の胴体を引きちぎって辺りに血の雨を降らす。これで少しは萎縮してくれたらいいんだが。
「一斉に仕掛けろ!」
っと、構わず来るか。しかも何人かは囮になるつもりだな。
「つっても、人数差なんて関係無いけどね」
ここが地上である以上アドバンテージは私にある。
「さっさとくたばってもらおうか!」
辺りの土を操作し、襲ってくる全員を拘束する。
無詠唱だから察せられることも無いので、あっさり成功してしまった。
「ぐぉっ!?」「く、くそっ!」
何とか足掻いているが、脱出されると面倒なので土を集めて一塊にしておこう。
「はいはい、一丁上がり」
これで相手は土団子状態だ。
さて、このまま殺っちまってもいいが、尋問ぐらいはしておくか。
「んーと、一人でいいか」
土団子から適当に選んだ一人を落とし即座に拘束する。
「それじゃあ質問タイムだ。何故あの女の子を狙う?雰囲気から即殺の予定っぽかったけど」
「お前が俺の立場だったら言うと思うか?」
だろうな。最初から期待なんかしてねぇよ。
「そいじゃ拷問に移行だ」
男の足首を掴んでそのまま骨を砕く。
「!……ぐっ、ぉぉ…」
「言っとくが、私はお前が死のうがどうでもいい。つまり何だってやれるんだよ」
力を入れて手を引くと足から肉が裂ける音がした。後男の悲鳴も。
「が、あああ!」
「ほーれほーれ。まずは片足だー」
ぶちぶちと音を立てて左足から血が漏れてきた。
「……悲鳴だけか。やっぱこういう人間は口止めしっかりしてんなぁ」
このままいたぶっても何も吐かなそうだなぁ。しゃーない殺すか。
「黙ってるならもういいよ。その顔のまま死んでくれ」
腹に掌底を叩き込んで内臓を木っ端微塵にしておく。これで死ぬのは確定だな。
「あっ、ああ……」
「情報は無かったが死に方は良し。次は団子にしてる奴等か」
一応、喋る気はあるか聞いてみるか。
「おーい、誰か命乞いしたいのはいるー?」
「どうせ話しても一緒だろうが!」
物分かりが良くて助かる。全くもってその通りだ。
「じゃあおさらばで。サービスで纏めて殺ってやろう」
土団子に魔力を込めサイズを小さくしていく。
「お、おい!貴様まさか……!」
「ん?命乞いはしないんじゃなかったのか?」
最後の会話をしつつどんどん団子を縮める。
「大体、あんな小さな女の子をよってたかって追いかけるとか。お前らに人の心は無いのか?」
結構衰弱してたし、執拗に追いかけたんだろう。こいつら紳士じゃないな。
「何で殺そうとしたのかは知らないが……どんな理由があろうと、人殺しはいけないぞ」
次第に骨が砕ける音や、肉が潰れる音が鳴る。もう何人かは死んで肉塊になっただろう。
「大分苦しんでいるようだが、報いと思えよ。お前らみたいな人間は、ろくな死に方なんて出来やしない」
そろそろ声もしなくなってきた。もう肉と骨が混ざり会う音しかしない。
「ま、来世に期待しな」
手のひら大になった土団子に語りかける。まあ聞こえてはないけどな。
「エルー、もういいよー」
「あ、はーい」
木の上から女の子を抱えたエルが降りてきた。結構近いとこにいたな。
「敵もいなくなったし、もう大丈夫かな。小屋(残骸)に戻って女の子の容態でも見ようか」
息はあるが見えないところが不安だ。詳しく診ないとな。
敵の詳細は分からなかったが、女の子が知っていればいいんだが。
「キリルさん、何ですかそれ?」
「んー?肉団子ー」
食べられなくはないぞ。絶対不味いけど。
因みにキリルは快楽殺人者ではありません。Sでもないです、一応。




