70話 嵐の夜明けに
お待たせしました、新展開です。
この世界にも、台風みたいなのがある。つーか嵐のことだ。
「うおお、めっちゃ揺れてる……」
何でそんな話をするかというと、今カイトに嵐がやって来ているからだ。
当然こんな日に外出する訳もなく、私達は小屋に引きこもっている。
が、何分ボロ小屋なので凄い揺れる。
一応植物を魔法で補強し、周りを土で固めたのだが、やっぱり大自然の力はとんでもないな。今にも壊れそう。
「こういうとこが森暮らしの悪いとこだな」
「キリルさん、呑気ですね……。私は嵐なんて初めてなので、凄い怖いです……」
私は前世での台風の経験があるから、あまりびびったりしない。
今思えば、日本ってしょっちゅう台風来てたんだなぁ。
バキッ
「あ、嫌な音した」
「えええ!?」
補強しても、限度があるかー。
その後、暫く粘ったが小屋は倒壊した。
「ぶぇっくし!あーちくしょう。嵐のバカヤロー」
「自然に文句を言っても……へっくしょん!」
現在私達は、嵐の中森を歩いている。
目的は、小屋が壊れたので近場の洞窟に行くことだ。
「キリルさんなら自分で洞窟を造れるのでは?」
「自然には自然だよ。現にさっき補強したはずの小屋壊れたし」
嵐の前では人間も龍人族も関係無い。どんなチートを持とうが所詮そんなもんか。
「あったあった。意外と手間かかったな」
元の拠点からそれなりに離れたところで洞窟が見えてきた。
途中にも洞窟はあったのだが、浸水しているものばかりでスルーせざるをえなかった。
「入り口を岩で塞いでっと。これで今日のところは平気かな」
「雨風は凌げますけど、モンスターでもいたらどうするんです?」
「んなもん蹴散らせばいい。一応殺気を出しておくから雑魚は来ないよ」
殺戮者のスキル、結構便利だな。
「さあ寝よう。朝には嵐は通りすぎてるらしいし」
「岩肌って落ち着かない……」
そこはもう慣れだ。サバイバル能力は大事だぞ。
「っはぁー、何とか晴れたか」
朝、予報通り嵐は過ぎ去り空には青い空が広がっていた。
「飯を探しつつ戻ろうか。また小屋建てないと」
「そういえばそうでした……もう嵐なんてこりごりです」
自然災害に縁が無かったらしいエルは随分萎縮している。昨晩は雷とかに怯えてたし、弱気にも程があると思う。
「まあまあ。あの嵐があったから、この青空がより美しく見えるんじゃあないか。何事も気の持ちようだって、エル」
「うーん……あれ、あの木に何か引っ掛かってません?」
「へ?」
エルが指した木には、確かに何か引っ掛かっている。
真下まで来て見てみるが、葉が邪魔でよく見えない。
「揺らしてみるか。ほれほれ」
「そんな雑な……」
強めに木を揺すると、引っ掛かっている何かが少し動き、ずれ落ちてくる。
「おっと、落ちてくるか。そーらよっと……?」
木から落ちてきたそれを、両手でキャッチしてみると……。
「……?子ども?」
それは、年端もいかない少女だった。
服は旅支度っぽく、かなりぼろぼろだ。体自体に目立った傷は無いが……。
「エル、何だと思う?」
「えっと、多分嵐で飛ばされてきたんじゃあ?」
「町まで遠いよ?そんなことあるかなぁ」
いくら子どもでも、そうそう無いことだろう。
「あ、まだ何か引っ掛かってますよ」
上を見上げると、今度は少し大きめの物があった。生物か、あれ?
「あ、飛竜じゃね?」
「飛竜、ですか?」
人間が空の移動手段に使うモンスターだ。
あれがいるってことは……。
「あの嵐の中を飛竜で飛んでいて、ここまで飛ばされたってこと?」
本当なら何て無謀なことだ。しかも子どもが。
「……キリルさん、その子生きてます?」
「ばりばり生きてる。衰弱してるけど」
何だいきなり、声を潜めて。
「見なかったことにしません?」
「却下」
「ええー!?」
死にかけの子どもを放置は流石に出来ない。
「だって、絶対訳ありですよこの子!絶対面倒事ですよ!」
「そんな喚かなくても……」
まあ訳ありだろうが。ほっとくのも後味悪いし。
と、そこで感知が何かを捉えた。
「……人か」
複数人の人間が、私達を取り囲んでいる。
「ああ、早速面倒事が!もう嫌ですぅ!」
「ぴーぴー泣くな。もう諦めろ」
敵意を感じるし、間違いなく厄介事だ。しかもこの子絡みの。
「さ、腹括ろうか」
「平穏が、平穏が欲しい……!」
簡易ステータス その⑦
●メルダ
・筋力…運動不足
・知力…普通
・敏捷…水中特化
・体力…持久型
・魔法…水害
・運…吉
・理性…感情的
・正気度…平均
・高潔さ…まともな良識
・胸…天元突破




