表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/121

58話 死に際に

前回のあらすじ

不意討ちに始まり不意討ちに終わる

「ひっひっふー」

「何ですか、それ」

「痛みに耐える呼吸」

心臓をやられたので、流石に痛い。まじで死ぬかと思った。

右腕も千切れかけだが、ほっときゃ治るか。


ダルムとか言ったか、意外に粘りやがったな。

邂逅した時から満身創痍だったのに、あんな強力な攻撃までしてくるとは。お蔭で想定外のダメージを負ってしまった。

レンファはまだ目治ってないし。


当のダルムは、上半身だけなのにまだ消滅しないでいる。

だめ押しいるか、これ?


「心配せずとも、直に消えるさ」

「だったら早く消えてほしいんだけど。妙にスプラッタだから」

私に猟奇的な趣味は無い。弱いものいじめは好きだがね。

「しかし、貴様は頭がおかしいな」

「それよく言われるんだけど、納得いかないなぁ。人間ってこんなもんじゃない?」

皆自分勝手だろ。

「もしや、転生者か?だったら分かるのだが」

「いや、「え、何でキリルが転生者って分かったんだ?」

おい、馬鹿。迂闊にばらすな。

「ふははは!そうかそうか、貴様転生者か!」

「何が可笑しい。聞けば魔王軍にも沢山転生者があるらしいじゃん」

だったら珍しくもないだろ。

「いや、奴等も一様に狂っていてな。一度死を経験しているのだから、当然だがな」

「そんなのと一緒にするなよ。むしろ私は生き返れてやったー、な感じだし」

そう答えると、ダルムは怪訝な顔をした。


「ん?そんなはずはないだろ。転生者は自ら死を望んだ者なのだから」

「はぁ?」

何言ってんだこいつ。

「転生者は生に満足していないのに死んだ者達だ。貴様、女神から何も聞いていないのか?」

「聞いてるよ。今度は最後まで生きてくれ、って」

何度も話してるからな。

「……ふん、どうやら女神は言葉を濁しているようだな。大方それっぽい説明で納得させられたのだろう?」

それっぽい……言われてみればそう思えなくもないが、女神様が嘘を付くのか?

「嘘ではない。あの無駄にお節介な女神のことだ、貴様らにショックを与えない為に配慮したのだろう」

「あ、女神様のこと知ってんの?」

「俺は悪魔として三百年生きてきた。そのぐらいは知っているさ」

てことは、女神様もそんな前からいるのか。


「むっ、もう時間か」

「ええ、もうちょっと聞きたいことがあんだけど」

中途半端に気になること言って、ここで逃げるのかよ。

「後は自分で考えろ。短絡的な貴様では無理かもしれんがな」

「最後まで生意気な奴だな。もういいよ、とっとと死ねよ」

「言われなくとも」

最後にそう言い、ダルムはあっさり消えていった。


「キリルさん、今のどういうことなんでしょう」

「さあね。でも出任せじゃあなさそう」

奴は真実を言っていたと思う。つまり、私は生きるのを諦めるような前世を歩んでいたのだろうか。

しかし、生き返って狂うようなレベルではないと思うんだけどなぁ。記憶は朧気だけど。


「えーっと、トラックに轢かれて死んだんだよね」

夜の交差点で、恐らく居眠り運転だったのだろう。赤信号に突っ込んできたトラックが……。

「ん?何で私はそんな時間に一人で……」

しかも、制服だったような。部活もしてなかったはずだし、何で?


(前世の記憶……学校は楽しかったはずなんだけど)

学友の顔も、親しかった何人かは覚えている。

彼女達にもう会えないのは少し悲しいが、それは既に割り切っている。

(じゃあ、家庭は?)

えーと、両親……あれ、健在してたっけ?顔が出てこない。

でも死んだって記憶も無いし、もしかして親との関係が希薄な子だったのだろうか。


その時、ノイズ混じりの光景が頭を過った。

(……?何この光景)

よく見えないが、二人の男女が映っている。

男は何かをわめき散らし、女は床に横たわっていた。

男は暫く叫んだ後、こちらに向いて近寄ってくる。その目は焦点が合っておらず、明らかに正気ではない。

そして、手が伸びてきたところで記憶が途切れた。


(ん、んー?)

断片的だったが、それが私の琴線に触れたようで、段々記憶が戻ってくる。

その中に、さっきの男女の姿が……


「あ」


そうか、あの二人は。


「前世の両親じゃん」

すっかり忘れてた。


キリル「これ……母さんです……」

次回はちょっぴりシリアスです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ