表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/121

55話 闇の先に

遅れて申し訳ありません

氷の迷宮を抜けて洞窟をどんどん進んでいくが、奥に行くほど闇が深くなっていく。

この先に何かあるのは確定だな。


「なーにが出るかなー♪」

「楽しそうですね、キリルさん」

「多分ダンジョンボスだよ?わくわくするに決まってんじゃん」

どんな奴が出てくるんだろう。出来ればでっかくて迫力があるのがいいなぁ。

ここまで来てしょぼいのは来ないでほしい。このダンジョンは期待に答えてくれるかな?

「手強いのがいるといいよなぁ。モンスターはまだ弱かったしな」

「一応強くなってはいたけどね。所詮雑魚のままだったし」

「私は弱い方がいいですよ。早く終わりたいんです」

弱気だねえエルは。折角だからやりごたえあった方が面白いじゃん。


雑談しながら歩く間も、闇は広がっていく。

やがて、周りは何も見えなくなるほどになってしまった。

「レンファ、明かりは?」

「点けてるはずなんだがな。どうやら普通の暗闇じゃあないぜ」

だろうなぁ。魔力感じるし。

音の反響からして、広めの空間にいるとは思うんだけど。


「何者だ、貴様ら」

「っ!」

唐突に暗闇に声が響く。

それは低く、おぞましく、常人だったら恐怖を覚えるような声だった。


「恐らく、ダンジョンを攻略しに来た冒険者か。ここまで来るとは少々意外だな」

「それは誉めてるのか?だったらありがとさん」

意外、ね。確かに難易度は高いのだろう。

私達が規格外なだけだ。

「取り敢えず姿ぐらい見せてよ。まず話をするのも悪くないと思うけど」

「ふむ、いいだろう」

パチン、と指を鳴らす音がした途端、周りの闇が晴れ洞窟が視界に広がる。

天井は低いが、そこそこ広いな。


「全員女か。しかし強い」

声の主は、私達の正面に堂々と立っていた。

黒い小綺麗なスーツを纏い、銀の髪を持つ美丈夫だ。

……イケメンかよ、声とのギャップすごいな。


「よっし!って、何だよキリル」

早速攻撃しようとしたレンファを制し、話し掛ける。

「あんたがここの主?」

「いかにも。俺は魔王軍幹部、ダルム。わけあってここにダンジョンを生成した」

「ま、魔王軍!?」

エルが露骨にびびるが、逃亡兵だもんな。無理も無い。

しっかし、幹部か。多分大物だよな、こいつ。

「……?どうした」

「いや、驚いてただけ」

どうすっかなぁ、これ。馬鹿正直に突っ込んだら返り討ちに遭いそう。

「随分肝の座った女だな。俺を前に平静を保つとは 」

「まあね。そんなに柔じゃないつもりだよ」

何て返すが、龍魔眼で確認する限りこいつは非常に強い魔力を持っている。私よりも強大だ。


(戦闘能力は分からないけど、下手に動いたら警戒されるか)

今のあいつからは特に敵意等は感じられない。

冒険者の私達は敵のはずなんだが、強者の余裕というやつか。


(……ん?)

よく見ると、腹部に魔力の乱れが見える。これは損傷によるものか。つまり、

「あんた、手負いか」

「!よく分かったな」

あっさり認めたよ。

「これがダンジョンを造った理由でな。ガルムルクの侵攻に来たはいいが、突然何者かの攻撃を受け、少なくないダメージを受けたのだ」

「じゃあこのダンジョンは回復の為の隠れ家ってわけか」

聞いてもいないのにペラペラ喋ってくれて助かるが、理由がはっきりしたな。ガルムルクは狙われていたのか。


(キリルさん、この人どうします?怪我してますけど)

(んー、そうなんだよなぁ)

エルと小声で会話をするが、奴は気づいていないようだ。

とにかく、目の前に怪我している人物がいたらすることは一つだな。


「私回復できるけど、見せてみな」

「……?何故だ」

「何故って、理由は要らないでしょ」

遠慮なくダルムに近づくが、奴は戸惑っているのか構えもしない。

「あんたを見逃しはしないけど、こっちにも気分ってものがあるんだよ」

手負いの獣は恐ろしいと言うが、ならば今のこいつら警戒すべき相手なのだろう。

だがあちらの警戒を解くならば、まずこちらが警戒を捨てなければな。


「本当に何者だ、貴様ら?」

「ただの冒険者だよ。ちょっと特殊だけどね」

ダルムの腹を見てみるが、決して浅くはない傷が出来ている。一体どんな攻撃を受けたんだ。

「ふむふむ」

触ってみるが、何か不思議な感触だ。まるで生身ではないような……。

「あんた、どんな種族?」

「ほう、何だと思う?」

むかつく台詞だ。


「んー……取り敢えず……」

と、ここで拳を握りしめ。


「土手っ腹に、ドラゴンパーンチ!!!」

「ぐっほあああ!?」

ガードも何もしなかったダルムは私の龍化した拳をもろに受け、面白い程飛んでいった。


「ちょ、キリルさん!?」

「ひゅー!やるじゃねえか!」

後ろから二人の声が聞こえるが、エルは突然の出来事に驚いているようだ。

「はっはー!まさかこんなに上手くいくとはな!」

出来るだけ友好を装ったつもりだったが、引っ掛かるとは思わなかった。


「き、貴様……!」

苦し気な表情でダルムがこちらを睨むが、間抜けなのはてめーの方だ。

「さあ、今のはゴングの代わりだ!行くぞ二人とも!」

「おうよ!腕が鳴るぜ!」

「何だか卑怯なような……」

細かいことはいいんだよ、敵さえ倒してしまえばな。


~もしキリルがもっと外道だったら~


キリル「その股座にロケットパーンチ!!!」

ダルム「ぐああああ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ