53話 燃えろよ燃えろ
「さっすがー、圧倒的ぃ」
エルは見事に恐竜を一蹴してみせた。やっぱ能力高いな、私達のサポートいるのかこれ。
「雑魚でしたね。これで食料になるなら安いものです」
確かに、見かけよりは動きが遅かったな。
「奥に行くほど強くなるんじゃねーの?なんか書いてなかったか?」
レンファはカロロからの資料のことを言ってるんだろう。途中までしか読んでいないが、えーと
「お、あった。『ダンジョンは最奥部が最も魔力が濃く、従って奥のモンスター程強くなる傾向にある』お楽しみは後にとっておくわけか」
「わくわくする仕様だな!」
正にアトラクションって感じだ。
「後半程難しいらしいが、モンスター自体の強さは問題じゃない。そこまでたどり着くことだ。生き残ることを最優先で行動すること、分かった?」
「つまんねーが、しょうがねぇな」
「誰だって死にたくはないですよ」
最悪入り口まで逃げてもいい。死んだら何も無いからな。
「ーって、意気込んだはずなのになぁ!」
短刀を振るい眼前の蝙蝠を切り落とす。切れ味は十分なようで、蝙蝠はあっさりと真っ二つになった。
「いやぁ、何でこうなるんだろうなっ!」
隣ではレンファが拳で蝙蝠の群れを打ち砕いている。
あの後極力戦闘を避けるように動いたはずなのだが、何故かいつも発見されてしまい今のように戦う羽目になってしまっている。
「蝙蝠は超音波だとして……他はなんでしょう!?」
「ダンジョンだと能力が変わるとか、そんなんかなぁ!」
あーもう、敵が多い!ここが巣みたいなもんだから仕方ないけど、キリがないな!
「ここはあたしに任せろ!大群相手なら得意分野だ!」
そう叫んでレンファが前に出る。
確かにレンファの炎なら少ない魔力で周りを焼き払える。私の重力魔法は燃費が悪いからこんなところじゃ使えないから、お言葉に甘えるか。
「よし、やっちまえ!」
「うおお、『コロナスフィア』アアッ!」
レンファの手から出た火球が、周りの蝙蝠を瞬時に火だるまに変える。
それだけでは飽きたらず、火球は奥へと進んでいきダンジョンをマグマで満たし……
「あほぉっ!もっと低い火力でいいんだよ!」
短刀の柄で馬鹿の頭をどつく。
「いってえ!敵は燃やしたからいいだろ別に!」
良くねえよ、温存しろって言っただろ!
「とにかくあの火球消してよ。溶岩になってるし」
「あ?結構魔力込めたから中々残るぞ」
「……」
もっかい殴るか。
「これ、ダンジョン壊れませんよね……?」
しばらく待ち、ようやく通れる温度になった。あーあ、変に時間食った。
「そういえば、レンファさんの職業ってなんですか?拳で戦ってましたけど」
「ん?言ってなかったか?」
そういやそうか。
「狂戦士だよ。ふふん、上級職なんだぜ?」
「へー、狂戦士……」
おっかない名前だが、別に常時狂ってるわけじゃない。
一応狂化とかあるらしいが、レンファは馬鹿過ぎて常におかしいからな。関係無い。
「スキルはとにかく攻撃寄りだ。他のスキルを貫通して攻撃できるとか、痛覚を無くすとかな」
「何だか怖いですね……流石狂戦士」
常人にはとても出来そうにないな。事実人口はとても少ないとか。
「囮役もいけるぜ。いつも殺気が出てるから、モンスターが勝手に寄ってくるからなぁ、はっはっは」
「うわー、損な役回りですねぇ……」
全く、レンファみたいな馬鹿にしか務まらな……うん?
「まさかさっきからモンスターに襲われるのは……」
「私の殺気がキリルの隠密をかき消してるんだろうな!勝ったぜ!」
「いっぺんくたばっとけ」
即座にレンファを気絶させたが、その間モンスターに気付かれることは無かった。
とんだ地雷じゃねーかこいつ。
※殺気は頑張って消しました




