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46話 いざ、新天地

ガルムルクはまだ近代的な都市です

「お、見えてきた見えてきた」

「やーっとだよ、まったく」

馬車を引いてから三時間、幸いにもトラブルに遭うことも無くガルムルクにたどり着いた。

時刻はもう夕方になっているし、今日は何もせず寝ることになるな。


「結局最後まで馬は使いもんにならなかったなぁ」

「あんたのせいだけどねー」

ずっと馬車を引いていたというのに、こいつは疲れた様子を見せない。どんな体力してんだ。

「あんた力はあるけど、持久力は無かったんじゃないの」

「それは全力出した時だな。この程度なら屁でもねーぜ」

「へえ、やっば身体能力は私より上かぁ」

種族柄、勝てるとは思えないが。




「本当にありがとうございました!お礼は後程……!」

「いや、そんなのいいんで。主にやったのはあいつですし」

何度も頭を下げる御者を適当にあしらう。

こういったのは苦手だ。下手に出られるのは慣れてないからな。

「いいのかキリル、礼貰わなくて」

「好きじゃないんだよ。それより今日泊めてくれない?宿代無くてさー」

「構わねえけど、エルとか言ったか?お前もそれでいいのか?」

「キリルさんがいいなら、私もそれで」

「ふうん?」

気にすんな、こういう子だ。


「で、レンファさんは何者なんですか?」

宿への道すがら、エルの質問に答える。

「龍人族だよ、炎龍の。ほら、馬鹿じゃん」

「説明雑過ぎません?」


炎龍とは、読んで字のごとく炎を操る赤い龍だ。

戦闘能力が高く、純粋な強さは一番だろう。飛行も得意で、地龍程ではないが耐久力もある。

その代わり、知力が低い。それはもう酷い。

少なくとも人並みの知恵があれば、もし遭遇しても誤魔化せるらしい。

こいつだけ、龍種の中で危険度低いんだよな。怒って暴れてても簡単に機嫌直るし。

で、その炎龍の龍人族たるレンファは、しっかりとその特性を持っている。


「改めて、炎龍のレンファ・ドラフレムだ。よろしくなエル」

にっ、と笑って手を差し出す。馬鹿だが、いいやつではある。

「闇龍の、エル=ドラです。こちらこそよろしくお願いします」

エルも照れながら手を握る。打ち解けることは出来たようだ。

「キリルに拾われたんだっけ?じゃあペットか?」

「短絡思考やめろ馬鹿。私が酷い人みたいじゃん」

「ペ、ペット……」

何だかエルが嬉しそうだが、ここはスルーだ。

「酷い奴だろ、お前は。自覚無いのか?」

「自覚はあるけど、面と向かって言われるとむかつく」

「ろくでもねぇな、お前」

それも知ってる。




「ここがあたしの家だ。ぼろいけどな」

ガルムルク郊外。古めのマンションがレンファの家だ。

「いっちょまえに家持ちやがって……私達はホームレスなのに」

「ガルムルクは高ランク冒険者も多いから、そのぶん依頼も高額だ。変に金使わなかったら家ぐらい持てる」

意外だな、こいつ倹約家か。

「レンファさんのランクは何ですか?」

「B上位だな。冒険者やって結構長いんだぜ?」

「長くてもそんなもんか……」

ランクってほんと上がりにくいな。

「どうせ寿命は腐る程あるんだ。焦ることはないだろ」

「やっぱそういう考えになるよねー。のんびりでいいんだよね」

「余裕が出てくるんですね」

老人の気持ちが分かってきた気がする。


部屋まで着き、レンファは鍵を開けずにドアを開ける。

「鍵かけてないの?」

「何も無いしな。あ、武器はあったか」

「それ龍素材のでしょ?危ないな」

中は特に物もなく、生活に必要な最低限の家具しかない。

「荷物はその辺に置いとけ。言っとくが飯は無いぞ」

「肉持ってきたから大丈夫。レンファも食う?」

「んじゃ貰う」

荷物から三人分の肉を出す。早速それを焼き……

「あ、レンファがやってよ。火なら得意分野じゃん」

「あー?いいけどよ、ほれ」

軽く指が振るわれ、肉が燃える。持っている私も熱いが、いい感じの火力なので我慢できる。

「本当に炎龍なんですね」

「まあな。火って結構便利だぜ?」

「ちょっと羨ましいな」


「そういや、何でここに来たんだ?エル関係か?」

肉を食べつつ、雑談する。

「私のランクを上げようと思って、本部に昇格試験を受けに来たんです。私まだCランクなので」

「成る程なぁ。試験は見たことないが、難しいらしいぞ?大丈夫か?」

「能力は十分だと思うけど、内容によるね。力押しでいけるかどうか……」

頭は悪くないだろうが、人に頼りがちなエルでは不安が残る。

「あたしじゃ絶対無理だなー、馬鹿だし」

「私もだな。細かいことは嫌いだし」

「……お二人は似てますね」

「「そうでもない」」


「あたしはいつもソファで寝てるけど、お前らは床で寝るしかないか」

「ですね。スペースもないですし」

……床固いからやだな。布団も無いし……。

「私ソファがいい。譲ってくれない?」

「何でだよ。家主はあたしだぞ?」

言いくるめるか。

「私とエルはカイトから来たから、疲れてるんだよ。だからソファで寝かせて」

「そういえばそうか。なら仕方無いな」

よしちょろい。

「エルはいいのか?キリルに譲って」

「キリルさんがいいならそれで」

「お?おぅ……」

気にすんな、こういう子だ。


馬鹿キャラは扱いやすいですね

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