45話 赤い流星
いつの間にかブックマーク数が凄いことに。
皆さま本当にありがとうございます。
「何だよキリルー来るなら連絡ぐらいしろよー!」
山賊を気にもとめず、肩をばしばし叩いてくるこいつは能天気過ぎると思う。
「レンファ。今は先にやることがあるでしょ」
「ん?ああ、忘れてたな。よっしゃ来い!ぶちのめしてやる!」
無駄に高いテンションに、山賊もたじろいでいるようだ。一歩も寄ってこない。
この馬鹿の名前はレンファ。ガルムルクの冒険者だ。
好戦的な性格で、戦いこそが生き甲斐とか言うバトルジャンキー。頭おかしいな。
ま、今は戦力が増えるのは有難い。弱いものいじめになっちゃうけどな。
正面の敵はレンファに任せて、私は後ろのを……
「フレイムバーストォォ!」
あ、私要らねえや。山賊全員燃えたわ。
「ははははは!弱っちいなぁお前ら!」
とても上機嫌だが、このまま燃やすと死んじまうぞ。
「そのへんにしときな。死んだら報酬貰えないかもよ」
「おっと、そうだったな」
レンファが指を鳴らすと、周囲の炎が一瞬で消える。
そして真っ黒になった山賊達が姿を見せるが、一応生きてるな。マンガみたいにアフロにはならないか。
「よし終わった!じゃあ行こうぜキリル!」
「行かねーよ。馬車あんだろうが、よく見ろ」
炎には巻き込まれなかったが、馬はショックで気絶してしまっている。中は平気だろうが……。
「エルー。皆無事?」
ドアを開き、全員の様子を見る。
「き、キリルさん、外が真っ赤に……!」
どうやらレンファの魔法の方が効いたらしい。
「もう大丈夫だから。皆さんも、安心してくださーい。山賊は倒しましたー」
乗客はまだ不安そうだったが、外が静かなのに気づいてから少しずつ落ち着いていった。
「御者さん、馬はどうですか?」
「すっかり怯えてしまってますね。これじゃあ馬車は……」
目を覚ました馬だが、レンファを見て萎縮しきっている。
周りを炎で覆った張本人だしな。山賊より怖かっただろう。
その山賊は、レンファにより一纏めにされている。
ほとんど死にかけだが、自業自得だ。回復させる気は無い。
「あの、キリルさん。その人は……?」
エルがおずおずと尋ねる。
「例の知り合い。まさかこんなところで会うなんてねー」
レンファは山賊目当てだったらしいが、私達が襲われていたのは偶然だ。
それにしても何であんな速度で動いてたのか。森を手当たり次第に探してたっぽいけど、少しは頭を使ったらどうなのか。
当のレンファは、御者に自分が冒険者で、報酬目当てに山賊を探していたことを説明している。
「どうせ会うつもりだったし、手間が省けたね」
「キリルさんの知り合い……」
微妙な顔をするエルを引っ張り、レンファと会わせる。
「ん?何だそいつ。連れなんて初めてだな」
「少し前に拾った子。色々世話してんの」
「エルです、初めまして」
ぺこり、と頭を下げるエルを訝しそうに見る。とって食うなよ。
「あたしはレンファだ。キリルとは……そうだな、盟友?いや、ライバルか?」
「そんな深い関係じゃないだろ。一緒にクエスト行ったことも無いのに」
適当なことを言うのは相変わらずだ。頭空っぽだからなこいつ。
「取り敢えず馬車走らせようぜ。ここで話してても埒があかねえ」
「いや、馬があんたにびびって動かないんだよ」
「ああ?根性無ぇなぁ」
無茶言うな。
「ま、あたしに任せな。何とかしてみせるからよ」
どうせ力業なんだろうな。
「……もうちょっとやりようがあったろ、おい」
「そうかぁ?問題無いからいいだろ」
現在、私は土で台車を作り、山賊を運んでいる。
エルは後ろで馬を引いて、レンファは馬車を引いている。
……なんかおかしい。
「しょうがないだろ、馬が馬車引けねえぐらいの腰抜けなんだから」
「だからって、何で私達が運ぶんだよ。山賊はいいとして、馬の面倒まで……」
後ろにしているのは、レンファと離すためだ。エルには催眠で馬を落ち着かせてもらっている。
「あの……いいんでしょうか?本来は私の仕事なのですが……」
御者が申し訳なさそうに言ってくるが、実際これで解決してしまっている。乗客を置き去りにも出来ないし。
「気にすんな!ガルムルクまで結構あるが、体力には自信があるからな!」
「だそうなので、素直に任せた方がいいですよ。またトラブルがあるかもしれませんし」
てゆーか堂々と馬車引くなよ。明らかに人じゃないって思われるぞ。
……いや、こいつは隠す気があるのか分かんないな。何せ知能低いし。
「なんたって、私達は龍人ぞ……!」
「言わせねーよ!黙って歩け!」
ガルムルクに着いたら、エルにも説明するか。
龍人族は、私以外にもいるって。
レンファ「果たして、あたしは何の龍人族でしょうか!」
キリル「分かりきってる」




