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44話 トラブルは必然に

しばらくミーアとセレスはお休みになります。

ガルムルクに行くと決めてから、私達は金稼ぎに走った。

浪費癖のある私と、それを止めないエル。

その二人が稼ぐのは、楽なことではない。


「うぐぅ、酒が飲みたい!」

「あぁ、キリルさんにお酒をあげたい!」

「あのへんてこな道具、買いたい……!ちくしょう!」

「あぁ、キリルさんにへんてこな道具を買ってあげたい!」

「裏路地行きたい……!皆で騒ぎたい、差し入れしたい!」

「あぁ、キリルさんを騒がせてあげたい!」


何て苦悩しながら、二週間ほど経ち。


「よし、これだけあれば十分!」

「やっとですね、キリルさん!」

私達はやっとこさ馬車代の確保に成功した。

馬車代、結構高いんだよな。護衛として雇われるって案もあったが、戦うのが前提とか嫌すぎる。こちとら楽に行きたいのだ。

……結局、苦労はしてるんだけどさ。楽するためなら努力を惜しまないのが、我々龍人族だ。これでいいのだ。


「ほんとに行くのね、どうせ途中で散財すると思ってたわ」

セレスが失礼なことを言う。

「そんなのするわけないじゃん、ちょっとだよちょっと」

「一部は使っちゃったのね」

いいんだよ、ちょっとだから!

「カイトにはいつ戻ってくるの?」

少し寂しいのか、耳を伏せながらミーアが聞いてくる。ああ可愛い。

「そのままあっちで稼ぐことになるかな。また馬車代いるし」

折角行くのだから、そこそこ滞在するつもりだ。

クエストの内容もあっちは違うからね、エルの修行にもなる。

「宿はどうするのよ。あっちでも森で暮らすの?」

「知り合いがいるから、寝床は確保してもらうよ。ガルムルクは森に隣接してないし」

「え、知り合いが向こうに?」

何回も行ってるから、知り合いぐらいいる。

ああ、あいつと一緒にクエストに行くのもありだな、エルの紹介もしておこう。

「荷造りも完璧、行くよエル」

「ガルムルク……どんな街なんでしょう」

空気は悪いな、工業都市だし。

「じゃ、行ってきまーす」

「お土産は期待しないでおくわ」

「気をつけてねー!」

見送られるって、そういや初めてだ。




「ガルムルク行きの馬車はこちらになります、お乗りの方は急いでくださーい」

 御者の案内に従い、馬車に乗り込む。他の乗客は、十人くらいか……ん?護衛がいない。

「あの、護衛は?」

「ご心配なく。先程冒険者の方への依頼で、道路周辺のモンスターは駆除されています。馬車にはモンスター避けの香水も付けておりますので、道中でのモンスター被害は無いかと」

 フラグじゃないか、それ。


「冒険者は私達だけですかね?」

 揺れる馬車の中で、エルは興味深そうに外を見ている。かれこれ一時間は乗ってるのに、よく飽きないもんだ

「多分ね。見た目だけで判断は出来ないけど」

 武器も見当たらないから、皆一般人だろう。もしくは商人。

「ガルムルクは無骨な工業都市でね。自然は少ないけど、人も多くて賑やかだよ。カイトよりも栄えてるね」

「ひ、人が……あれよりも多く……?」

 世間知らずだなぁ。人なんかその辺にうじゃうじゃいるぞ。

「で、知り合いって誰なんですか?」

「誰って……何人かいるけど、まず会いたいのは……?」

 答えようとしたその時、窓に黒い影が映った。


「ひいっ!?」

 御者の悲鳴が上がり、馬車が急停止する。

 勢いで一般客が転びそうになる中、私は警戒しながら外を伺う。そこには十数人の人相の悪い男達がいた。

「モンスターじゃない……山賊か。珍しいな」

「え!?山賊!?」

 人間相手にびびるなよ、龍人族。むしろモンスターの方が厄介だぞ。

「ったく、やっぱりこうなるか」

 短刀を取りだし、ドアに手を掛ける。

「戦うんですか!?」

「ったりめーでしょ、この人達見捨てるのも気分悪いし。それにむかつくじゃん。山賊とか生意気な」

 よくも私の邪魔をしてくれたな、お返しに地獄を見せてやる。

「わ、私も……」

「エルは中で乗客守ってて。外は一人で十分だから」

 敵の殲滅は楽に出来る。大事なのは他に人がいることだ。

 山賊程度なら、龍化しなくてもいいだろう。被害を出さなきゃ万事おっけーだ。

「何でこのタイミングで山賊が出るんだか……」


 馬車を降り、山賊と対峙する。

 御者は私の姿を見て冒険者だと分かったのか、後ろに隠れてくる。

「ぼ、冒険者の方ですよね……?」

「まあね。さっさと馬車に入りな」

 押し込む形で御者を放り込む。

 さて、相手は数十人か。山賊にしては多いか?

 私が戦う気なのを見て、山賊が舌打ちをする。

「ちっ、護衛がいねえから狙い目かと思ったが、冒険者がいやがったか」

「想定しとけよ。山賊なんてやってるから、頭が弱いんじゃないの?」

「んだとてめえ!」

 おーおー、単純な奴等だ。やっぱ馬鹿の集まりか。

「女だろうと容赦しねえぞ!命が惜しけりゃ大人しくしてろ!」

「そっちこそ、死にたくないなら今すぐ逃げるんだな!今ならプライドを捨てるだけで済むぞ?」

「お前の意思は分かった、後悔すんなよ!」

 安い挑発に乗り、山賊共が向かってくる。

 馬車を取り囲んでいるから、後方にも注意しないとな。取り敢えず魔法で周囲を囲むか……。

 何て思っていると、感知に反応があった。

(高速でこっちに向かってる……?大きさは……)

 調べる暇もなくその物体は視界内に入り、山賊の一人をぶっ飛ばしながらその場で停止する。どうやら人のようだ。

「な、何だ!?」

 仲間が突然吹き飛び、山賊は慌てふためく。こいつらには感知すら出来なかったか。


 飛んできたその人はゆったりと身を起こし、服に付いた砂を払う。

「あー、間に合ったか。ったく、山賊も暇だなあ」

 赤い髪をサイドで結び、軽装に身を包んだ少女がぼやく。

 そいつは私を見ると、不満げな顔を一気に笑顔に変えた。


「あれ、キリルじゃねえか。久し振りだな!」

「変わりないね、あんた」

 ていうか目的の知り合いだった。


新キャラ「ようやく出番か!」

キリル「名前すら出てないぞ」

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