42話 職業談義
いつもより遅れてしまいました。祝日なんて無かったんや。
「ふーん、あの子頑張ってるのね」
「まあね。なついてくれるのはいいけど、何でも私任せってのはねぇ」
エルとの初クエストから数日。私とセレスはギルドで駄弁っていた。
肝心のエルはと言うと、一人でクエストに挑ませている。
もう何回もクエストをこなしているというのに、いつも私が一緒なのが前提に考えている。
いい加減自立しないと駄目っぽいので、無理矢理一人で行かせた。
泣いてたなー、エル。泣き顔も可愛くて良かったが、躊躇はしない。
ていうか私頼り過ぎだろ。私が何したってんだ。
「なんかにやけてるけど」
「いやー、いいもん見たなと」
笑顔なら常に見れるしな。
「あ、ミーア戻ってきた」
そうこうしていると、受付に行っていたミーアが寄ってきた。
「ジョブチェンジ終わった?」
「うん!無事に上級職になれたよー」
嬉しそうに登録証を見せてくる。そこには前の『戦士』の文字は無く、代わりに『傭兵』と書かれていた。
「どう違うんだろ……」
「その辺は結構適当なんじゃない?」
今回集まったのは、ミーアが晴れて上級職になれるというのでささやかながら祝おうというものだ。
エルだけクエストに行ってるが、もうすぐ帰ってくるはずだ。
「いいなー、上級職。それだけでステータスだもんね」
「一応私も上級職なんだけどね。ま、冒険者にとっては分かりやすいランクアップだものねぇ」
「えっへへー、私も一人前になったのかなぁ?」
くぅ、上級職ってだけでミーアが遠くに行ったように感じる。
私の職業熟練度は……35か。まだまだだなぁ。
「傭兵って基本は戦士と一緒だよね?」
「そうだねー、普通にグレードアップってところかな。他にも重戦士とかあったけど、私には似合わないしね」
あれは低機動の盾役だからな。折角機動力が高いのに選ぶ理由は無いか。
「さ、エルを待ちましょうか。クエストは簡単だったからすぐよね?」
「アクシデントが無ければねー」
自分から危険には突っ込まない子だから、平気だろうが。
一時間後、無事帰ってきたエルも加えて皆で飯を食べる。
お代はミーア以外が出すことになっている。なけなしの金が……。
「上級職ってどれだけ大変なんですか?」
肉を頬張りながらエルが問う。飲み込んでから喋りなさい。
「Bランク中位くらいにもなれば普通はなれるわ。時間はそこそこかかるけどね」
「私はちょっと遅めだったかな。熟練度って上げ方よく分かんないんだよね」
それっぽく行動したらいいらしいが、割と曖昧だ。
「ギルドも改善とかしないのかな。ギルドポイントも自分だけじゃ見れないしー」
職員に頼まないと分かんないんだよー。
「エルちゃんは、Cランクになったら職業どうするの?」
「うーん、後衛がいいですかね。前衛怖いですし」
「後衛だってつらいわよー。ろくな防御手段無いから攻撃喰らえないもの」
「それでも、やっぱり後衛ですよ。ウィザードからですね」
「……」
仲良くなったなぁ、エル。人見知りもまだましな方で良かった。
二人には警戒もしなくなったし、進歩するのはいいことだ。
「何ですか、キリルさん?じっと見て」
「エルは可愛いなぁ、と」
思ったことをそのまま口に出すと、エルは顔を真っ赤にする。おー、初心。
「何でそんなこと真顔で言うんですか……もう」
「でもエルちゃん可愛いよね!弄りたくなるって感じで」
言いながらミーアがエルの髪を撫でる。
「うー……ミーアさんまでそう言う……」
「諦めなって。エルはそんなキャラなんだよ」
「納得いかない……」
その後二人でエルをいじり倒したが、そう言えばミーアの祝いだったな、これ。本人も忘れてそうだけど。
エルの職は迷いましたが、やっぱり魔法職かなと。
差別化しやすいですし。




