39話 エルの冒険者デビュー
朝、下腹部に違和感を覚え目が覚める。
多分尻尾出てるなこれ……それよりも、何かごわごわしたものが顔に当たってるような……?
「んむぅ?」
目を開けると、そこには黒い翼があった。
それは細かく動いていて、エルの背中から出ていて……って
「お前は翼からか!」
尻尾を勢いよくエルに叩きつけ、それが今日の朝の合図になった。
「それで、クエストは何を選べばいいんですか?」
掲示板を見つつ、エルが聞いてくる。
「Dランクなら討伐は無いし、適当でいいよ。採取なんざどれも難しくないしね」
初のクエストにしては地味になってしまうが、ルールだからな。
「じゃあ報酬が少しでも高いのを……これですかね。キリルさんはどれにするんですか?」
「私も報酬優先かなー。討伐って倒せばいいだけだから楽だよねぇ」
手加減いらないしなー。
私はジャイアントトレントの討伐にした。こいつは木の魔物だから動かないし、捜索も簡単だ。
「パーティーは組めませんし、お互い頑張りましょうね!さーて、早速森に……」
「ちょい待ち。何も別々に行くことないでしょ」
一人で行こうとするエルの肩を掴み、引き留める。
「え?でもランクが……」
「パーティーだけが、一緒に行く方法じゃないんだよ」
皆知ってる裏技があるんよな。
受注を済ませ、二人で森に入る。
暑くなってきたから、木陰が涼しく感じられていい気分だ。
「あ、エルはどんなクエストにしたの?」
聞いてなかったな。
「ホウサンテングダケっていう、殺虫成分のある茸の採取です。少し奥にあるけど、見つけるのは簡単とのことです」
「そっか。私もトレント探さなきゃいけないし、ちゃっちゃと進むかー」
雑魚とはいえ、見つけなきゃ始まらない。日が暮れる前には帰りたいところだ。
「あのっ、結局一緒に行く方法ってなんなんですか?」
「簡単なことだよ。パーティーじゃなくてもクエストの場所は同じなんだから、一緒に動けばいいってわけ」
場所なんざ森か町中しか無いから、冒険者同士はよく鉢合わせするのだ。
「いいんですか、それ?クエストの達成は登録証があるから不正できませんが、だからと言って協力するのは……」
「ギルド側も黙認してることだよ。どうせ場所が被るんなら、協力した方が得だからね。足引っ張るような奴は自分が不利になるだけだし」
情報交換は冒険者の基本だ。それが拡大しただけのことである。
「ま、まぁ、キリルさんがいいんならそれでいいです。私が協力してもらう側ですしね」
頭が硬くないようで良かった。こういうのは慣れでしかない。
「今日はエルの実力の確認も兼ねてるからね。何匹かモンスター狩ってもらうよー」
「はーい!採取も忘れずにですね!」
……このテンションに着いていけるかな。
もうちょっと長めの方がいいでしょうか




