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36話 ようこそ冒険者ギルド

遅くなりました

「では、今から町に行きます」

「はーい!」

元気があってよろしい。

何しろ今から冒険者ギルドに行くんだからな。荒くれ者相手だし、根性無いと舐められる。


あれから数日。怪我も完治し、ついにエルを森から出す時が来た。

その間に大分懐かれたが、私ってそんなに好感持たれる性格じゃないのに何で?


「キリルさん、早く行きましょう!ほらほら!」

昨日ギルドに行くと行ってから、エルはこんな調子だ。多分寝てないなこれ。

「わーってるよ。急いでもしょうがないぞー」




「おおー!ほんとに町があった!」

「あるよそりゃ。あんまり騒ぐなよ?」

カイトに着いてからも、エルは周りを見渡してはしゃいでいる。

私も最初はこんなだったなー。始まりの町ってテンション上がるよね。

「ギルドはあっちだよ。はぐれないでね?」

「キリルさん、人が!人がいます!」

聞けよ。


エルの耳を引っ張り、ようやくギルドまで着いた。観光なら後でやるから、今は大人しくしていてくれ。

「うおお……緊張してきました。キリルさん、私の格好変じゃないですよね?」

「ん?んー、多分」

今のエルは前に買った安物の服を着ている。

といっても冒険者用の物だが、最弱装備だ。いわゆる「布の服」だな。

「そんな畏まらなくてもいいって。どうせ皆気にしないから」

服程度、冒険者にはあまり関係無い。精々いい装備を見せびらかすくらいだ。

「とりあえず登録ね。ほら行くよ」

「ああっ、待って下さい」


ギルド内はいつも通りだ。

勇者が去ったから、人の出入りも戻ってきた。

「えーっと、受付ですよね」

「そうそう。私はここでクエスト見とくから」

泣きそうな顔をしながら、エルは受付に話し掛けにいった。

人慣れしてないのか……魔王軍てどんな環境だったんだ?


数分後、登録を終えたエルが帰ってきた。

「終わりました……これで私も冒険者、人界の住人になったんですね……」

それが基準ではないと思うが。自分でふんぎりをつけられたならそれでいいだろう。

「最初はDランクからだからね。私とパーティーを組むのはまだ先かな」

「それなんですよねえ……。しばらく一人ですか」

エルのスペックならBランクまで上がるのは苦労しないけど、問題は時間だな。

大物を仕留めたら手っ取り早いが、そんなことはそうそう無い。

「まあのんびりだよ、のんびり。先は長いんだから」

寿命的な意味でな。


「ですね!で、どのクエストがいいでしょうか?」

「待ちなって。今日は登録だけで、クエストには行かないよ」

慌てるんじゃあない。

「のんびりって言ったでしょ。町の観光でもしようよ」

「観光!いいですね、行きましょう!」

イエスマンになってないか、この子。


「あれ?キリル、誰よその子」

ギルドを出ようと振り返ったその時、怪訝な顔をしたセレスがいた。あー……。

「隠し子だけど」

「嘘おっしゃい」

何故ばれた。


ちょっと短いですかね

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