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23話 たまには人助けでも

サラマンダーの群れから逃げることに成功した後。

暫く探索を続け、珍しい鉱石なども手に入り、もうそろそろ戻ろうかと思った矢先。


「んおっ?明かりが‥.出口かな?」

前方に小さく光が射していた。


結構進んだし、どこに出るんだろうか。

ていうか帰り大丈夫かな。洞窟迷いそうなんだけど。

こんなことなら目印でも付けとくんだったなー。


そんなことを嘆きつつ、光の方へ歩く。

風も吹いているし、外で間違いない。

感知に反応は無いし、出会い頭にモンスターとばったり、何てことは無さそうだ。


注意を払いつつ、小走りで出口に向かう。

そして洞窟を抜けると‥.‥.辺りは森のままだった。


「意外とこの森広いんだな‥.」

景色も大体同じだから、生態も変わってなさそうだ。

うーん、真新しい物も無さそうだし、戻ろうかなあ‥.‥.一応探索はするべきか?

この辺は町からも遠いし、探っても仕方ないような‥.‥.。


そう迷っていると、感知に複数の反応があった。

「人間が3、それとでかいのが1‥.モンスターか」

恐らく、三人でモンスターと戦っているんだろう。

モンスターの動きは大きく、まだまだ元気なようだ。

対する人間は、二人が近づき、一人が後方にいる。

ちゃんとしたパーティーのようだし、問題無いか‥.‥.?


どことなく不安を感じ、現場に向かう。距離はそう遠くない。

『龍魔眼』で確認すると、三人の人間はどれも魔力が残り少なく、動きも悪い。

劣勢なのか‥.魔力から見るに、モンスターはかなり強い。

あのパーティー、運悪く遭遇したのだろうか。まさか最初から狩るつもりじゃないだろうし。


森を進み、目視できる距離から様子を見る。

そこには、黒々とした巨大な蠍がいた。

確かギガントスコルピオという、高難易度モンスターだ。

カイトの町周辺では見ないので情報だけだが、堅い装甲と鋭い鋏を持ち、尾の針には猛毒があるんだったか。


人間達は男が一人、残り二人が女で、見るからに疲弊しており、やられるのも時間の問題だろう。

正直見てみぬふりをしたいが、見殺しにするのも気分が悪い。ここは助けるとしよう。


「ばれないようにってのは無理っぽいし‥.正面突破だな」

一応隠密を使い、蠍に接近する。このレベルのモンスターなら、気づかれるだろうけどね。

案の定、蠍は私の気配を感じたようで、人間を無視してこちらに向く。

肝心の三人は、私のことが見えていないようだ。


間違っても毒は食らえないし、手加減する必要は無い。

「『グラヴィティ』」

重力を強くされ、蠍が地面にめり込む。

自重もあるし、さぞかし重いことだろうな。

さ、止めを刺そうか


「『ガイアメテオ』」

空中に岩石がいくつも浮かび、蠍へと降り注ぐ。

硬いもの同士が当たる音が響き、最初は岩石の方が砕かれていたが、やがて蠍の体が砕けていく。

蠍は重力から逃れようともがくが、岩石が当たるごとに緑色の体液が飛び散り、周りがそれに染まる頃には動かなくなっていた。


「死んだかな‥.‥.?この手のモンスターはしぶといからなあ」

死体を確認するが、問題なく死んでいるようだ。

素材は‥.剥ぎ取る必要あるかなあ‥.‥.?


助けた三人はポカンとした表情で私を見ているが、状況を理解できていないのだろうか。

助かったんだから、喜ぶなりなんなりすればいいのに。

とにかく、無事は確認しとくか。


「あんたたち大丈夫?危ないとこだったね」

出来るだけ優しく声を掛ける。警戒はされないとは思うが‥.‥.。


すると魔法使い系と思われる少女が、慌てて口を開く。

「あ、ありがとうございました!あのままだとどうなっていたか‥.‥.」

ふむ。助けは無駄じゃなかったようだ。


もう一人の槍を持った女も、頭を下げて礼を言ってくる。

「助かったわ‥.まさかこの森であんなのと遭遇するとは思わなくて‥.‥.」

やっぱり不意の遭遇だったか、間に合って良かった。


最後の剣を持った男は、さっきから俯いて肩を震わせている。怖かったのか?

怪訝な目で見ていると、ばっ!と顔を上げ、真剣な顔で私の肩を掴んでこう言った。


「すみません!あなた、俺たちの仲間になってくれませんか!?」

「やだよ、何言ってんのお前」


ばっさりと切り捨てると、男は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「うう‥.そこをなんとか‥.‥.」

「ちょっと、一旦落ち着いて。この人が困ってるから」

槍の女に諌められ、男は私から手を放す。

なんだこいつ、勘違いイケメンはもう足りてるぞ。

顔がいいやつは頭がおかしいやつしかいないのか?


「えっと、取り乱してごめんなさい。あなたが余りにも強いからつい‥.‥.」

そう言って、男だけでなく女二人まで頭をさげてくる。


「あー、何?パーティーに強い人が欲しいの?言っても私まだBランクだから、大したことないよ?」

「いえ、俺達は一応冒険者なんですが、クエストでここにいるんじゃあないんです」

ああ?じゃあなんだってんだ。


疑問符を浮かべていると、男は姿勢を正し私を見据える。

「申し遅れました、俺の名はシーザー。勇者をやっています」


「‥.‥.は?勇者?」

主人公の?


シーザーと名乗った勇者は、もう一度頭を下げて、

「どうか、魔王を倒すために、あなたの力を貸してくれませんか?」

そう頼んできた。今度は目的もふまえて。


‥.‥.嫌だよ?

この世界の主人公、ようやく登場です

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