19話 療養中の町巡り 2
遅くなってすみません
海からの潮風を感じながら、行き先を考える。
「あっちが港でー、こっちが商業区でしょ。その辺は興味無いし‥.中央広場にでも行くかな」
一般人が多そうだし。
観光名所もあるけど、旅行客よりは住民の方が見たい。
普通の人にとって、冒険者はどんな印象なんだろ、粗暴とか思われてるんだろうか。だとしても、あながち間違ってないんだよなあ‥.。
住居区に近づくにつれ、喧騒は小さくなっていく。流石にこの辺は騒がしくないか。
住居はどれも同じようなもので、迷ったら道が分からなくなりそうな程だ。
白と青を基調にした建物は、港町らしい爽やかさを感じさせる。
そこかしこで子どもが遊んでいるが、ギルド周辺では見られない光景だ。
一般人にとっては危ない所という認識があるようだが、冒険者は悪く見られるものなのか。
まあ実際危険だけどね。たまに捕獲したモンスターが檻に入れられてるし。
そんなほのぼのとした町を眺めつつ、住居区を進む。
中央広場には大きな噴水があり、周囲にはこれまた露店があった。住民であろう人も多く、住居区では一番賑やかな場所だろう。
「のどかだなあ‥.」
もうすぐ魔王が復活するっていうのに、町は平和そのものだ。冒険者ものんびりしてはいるが、戦闘と無縁でもないので、落ち着きがない時も多い。
たまに殺伐とした雰囲気から離れるのも悪くはないな。
「ふわぁ‥.おっと、穏やかな空気にあてられたかな」
もうこのまま寝てしまおうかと思ったその時、
「あれ、キリルちゃんじゃないか!住居区にいるなんて珍しいね、どうしたんだい?」
──うざいイケメンが話し掛けてきた。
「‥.ちょっと気紛れでね。そういう気分だったから」
もう敬語など使わず、適当に答える。どっか行ってくれないかな。
「へぇ、そうなんだ。俺はまた教会に行ってきてね、祈りを捧げてきたんだんよ」
お前については聞いてないぞ‥.。
「あーそう。じゃ、私はこれで」
これ以上こいつに構うつもりはない。早々に立ち去らせてもらおう。
「あ、その‥.」
ん?まだ何か言うことでもあるのか。
「えーと、今暇かな?良ければ食事でもどうかと思って‥.」
歯切れが悪いな、前に殴ったのを気にしてるんだろうか。
「悪いけど、その気はないよ。というかいつも女の子に囲まれてるじゃん。そいつらを誘えばいいのに」
あのハーレムはどうした。
「あ、ああ‥.今日は一緒じゃないんだ」
「ふぅん‥.?」
言葉を濁されたが、何かあったのか。
見放されそうには見えなかったが‥.まあいいか。こいつがどうなろうと知ったことじゃない。
「ま、何あったか知らないけど誘いは断らせて貰うよ。達者でね」
ひらひらと手を振り、イケメンに背を向ける。正直そんなに話すほど仲良くないしね。
「あっうん‥.またね」
意外にもあっさりと引き下がったが、かえって不気味だな。
陰湿なタイプではなさそうだし、気にしなくていいか。
まったく、次に絡んできたときはそれこそグーパンでも‥.
「ん?あいつの名前なんだっけ」
今度殴るときにでも聞いておくか。
カリアンは割とお気に入りです。




