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15話 シーサイド・クエスト

地球に似た環境なので、季節はあります。

少し暑さを感じる、初夏のある日。

私達三人は今日もクエストを求め、掲示板の前で悩んでいた。


「季節も変わってきたからか、依頼の傾向もちょっと違うね」

暑くなってから動くモンスターもいるしね。

「場所が海のものが多いわね。海難救助系は荷が重いし‥.」

セレスの言う通り、依頼は海や港を場所としたものが多かった。水場での活動は得意でもないので、前よりも達成が困難になるだろう。

不味いなあ‥.これは選り好みしてる場合じゃないかな。ちょっとめんどくさいクエストでも今は‥.


「ねっ、これどう?漁船の護衛だってさ!報酬は普通だけど、他よりはいいと思うよ!」

ミーアが急に一枚の依頼書を突き出してきた。なんか勢いがあるぞ。

「え、ええと何々‥.‥.うーん、まあ悪くはないけど‥.そこまで押すほどのものでも‥.」

「でも、水中が前提のクエストよりはいいんじゃない?何もなかったら、船に乗ってるだけでいいらしいし!」

ず、随分押すなあ‥.‥.とにかくセレスの意見も聞いてみるか。

「どう、セレス?私としてはこれでもいいんだけど」

「‥.‥.私も構わないわ」

おや、あっさり。

「やった!じゃあ受注するね!」

ミーアが受付に行こうとすると、セレスがその首根っこを掴んで引き寄せた。

「構わないけど‥.これ、追加報酬で釣れた魚の一部を上げるって書いてるわね。‥.‥.関係無いわよね?」

「な、な、ないよ?全然無いよ!?」

よろしい、とセレスが手を放し、ミーアはそそくさと受付に向かう。


ミーアも結構、欲望に忠実だなあ。




昼時。私達は港で依頼主の漁師さんのもとにやって来ていた。


「今回はよろしく頼むよ、まああんまり遠洋には出ねえからそこまで心配はいらねえぞ!」

漁師さんは正に海の男といった、筋肉ムキムキの色黒だった。お、男臭い‥.。

「護衛はお任せください。私はセレスと申します」

「ミーアです、お魚楽しみですね!」

「えー、キリルです。よろしく」

ミーアのテンションに押されつつ、自己紹介を済ませる。

「よし、それじゃあ行くぞ!今日の海は安定してるが、油断しないようにな!」

暑苦しい声を聞きつつ、船に乗り込む。

快適な船旅だといいんだけど。




「フィーーーーシュッ!」

雄叫びを上げつつ、竿を引いて魚を釣り上げる。これでもう何匹釣ったか、私には釣りの才があるかもしれない。

「キリルちゃん凄いね!今のところほとんどキリルちゃんが釣ったのだよ!」

魚の山に興奮しながら、ミーアが誉めてくる。ふふん、すごいだろう?


現在、私達は海の上にいる。遠洋には出ないとのことだったが、流石に陸が殆ど見えないほどの所には来ている。

そして何故釣りをしているかと言うと、護衛といってもまだモンスターなどは出ておらず、暇をもて余していたら漁師さんが許可してくれたのだ。一応は漁の手伝いという名目なのだが。

護衛を疎かには出来ないので、交代で持ち場についている。今はセレスが見張りをしているはずだ。


「キリルちゃんほんとに上手いね。スキルとか使ってるの?」

「ああ、隠密を使ってるよ。魚の警戒がゆるくなるんだよね~」

「じゃあ私も使おうかなあ。ヘイトコントロール辺りで注目を集めて‥.‥.」

私とミーアはすっかり釣りに没頭してしまっていた。海に出ると聞いて不安だったけど、楽しいもんじゃん。


「おーい、お疲れさん。そろそろ陸に戻るから、その辺にしときな」

漁師さんの声を聞き、少し物足りないが釣りをやめる。今度川ででもやろうかな。

「随分楽しそうだったわね。それもこんなに釣るなんて」

セレスが呆れ顔で言ってくるが、実際楽しかったので否定はしない。

「セレスはやらなくてよかったの?魔法使えば楽に捕れると思うけど」

「釣りをしにきたんじゃないわよ‥.私はいいの。ほら、帰りだからって気を抜かないようにね」

少しは遊んでもいいのに。


船が進路を変え、陸へと進んでいく。

ミーアはさっきから魚を食い入るように見ているが、本当に魚が好きなんだな。やっぱり猫だから?

呑気に構えていると、突然敵感知に大きな反応があった。

「!‥.‥.こいつはまずいことになったかな」

漁師さんが苦い顔で言う。すると左側の波が激しくなり、そこから蛇に似た巨大な体を持つ生物が海の中から出てくる。

「シーサーペントか‥.!厄介な奴が出やがったな!」


シーサーペント。海蛇をとにかくでかくしたようなモンスター。巨体を船体に巻き付け、船ごと破壊するような荒業をやってのける海でも特に危険な海獣だ。


「漁師さん、逃げ切れる!?」

「いや難しい!あいつの巨体のまえじゃ逃げてもすぐに追い付かれちまう!」

まぁ、軽く300メートルはあるもんなあ。

でも巨大なモンスターだが、討伐ではなく逃げるだけなら方法は幾らかある。当然戦う選択肢はこの場では選ばないが‥.‥.


「ねえ。あのモンスターって、確か食べられるよね?」

うん?突然何を言い出すんだミーアちゃん?

「え、ええ‥.特に肝は珍味として認知されているわね」

セレスの言葉を聞いたミーアの目の色が変わる。おい、まさか。


「‥.提案があるんだけど、あいつ倒してみる気無い?」


‥.そんなに魚が好きか、友人よ。


漁船はそこそこの大きさです

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