14話 Bランクとサラマンダー討伐
長くなりましたね
「で、どうする?」
目標のポチはサラマンダーの群れにいるわけだが。
「‥.とにかく、誘き出す方法を考えましょう」
「だね、あの数と戦うのはちょっと‥.」
雑魚モンスターというわけでもないし、群れを相手取るのは危険だ。
かといって、一匹だけを群れから出すのは無理がある。つまり‥.
「少数を誘き出せばいいんだよね、それもポチを加えた」
「まあ、常に群れ全体で行動しているわけじゃないわ。ここはあくまで巣だからね。狩りの時なんかはいくらかのグループをつくって出ているはずよ」
セレスが冷静に分析する。
大丈夫、絶対にポチを確保するチャンスはある。
「それで作戦は?」
「そこは頭のいい私が考えよう‥.なにその目」
「いえ、もうつっこむ気もないわ」
解せぬ。
さーて、誘き出す方法かぁ。
まず、あいつらのうち少数が外に出るように仕向ければいいんだよね。なら、獲物となるモンスターを持ってくるとか‥.?
んー、あんまり細かく考えなくてもいいかもな。
「よし、ちょっと危険だけどやってみようか」
「き、危険‥.?」
「確実性も無い」
「全然安心できないわね。‥.まあ可能性があるならそれでいいわ。どんな作戦よ」
‥.ま、この二人なら心配ないかな、多分。
「キリルちゃん、外さないでね?お願いだからね?」
「心配性だなぁ。大丈夫だって」
二人を物陰に残し、隠密を使って群れに近づく。直前に消臭ポーションを浴びたので、かなり近くに行ってもばれる様子は無い。
このままポチを確保したいが、接触するのはまずい。焦らず、懐から小石を取り出して投げる。
(よーく狙って‥.ほいっと)
投げた小石は狙い通り、ポチの体に当たった。
ポチは身を起こし、小石が飛んできた方を見る。
すると何かに反応し、ポチがセレス達がいる物陰へとゆっくり近づく。
(よし、うまくいった)
私はさっさと元の場所に戻る。
物陰では、二人がモンスター寄せのお香を焚いていた。
「取り敢えずポチは動いたよ。今のうちにそれ消して」
「群れの近くで使うのはひやひやするわね‥.」
下手すれば全部のサラマンダーと戦うはめになるしね。
お香を消し、念のため消臭ポーションもかけて匂いを消す。
「あ、ポチちゃん出てきたよ‥.う、やっぱり一匹じゃない‥.」
そして奥から、ポチを含んだ十匹ほどのサラマンダーが出てくる。匂いは消したが、私達を獲物と判断したのか牙を向けながらこっちに向かってくる。
「よし、ここからは足の勝負だ!逃げろ!」
「ほんと力押しよね!‥.ってあいつら意外と速いわね!お、置いてかないでよ!?」
「大丈夫だよ!セレスちゃんでも十分逃げられるから!ほら、ちゃんと明かりつけないと!」
三人で必死に出口を目指す。いくら足の遅いサラマンダーといえど、気を抜けば追い付かれる。
「セレス、魔法の準備しといてよ!」
「分かってるから、急かさないで!」
「よっし、抜けた!」
洞窟から脱出し、振り替える。
サラマンダー達とはあまり距離が離れておらず、急いで武器の準備をする。
それぞれ配置につくうちに、ポチ含むサラマンダーが洞窟から出てくる。
「セレス!」
「いくわよ、『フレアボム』!」
セレスの手から炎が放たれ、洞窟入り口の天井を破壊する。
ガラガラと天井が崩れ、洞窟を封鎖した。これで追加のサラマンダーは出てこないだろう。
残ったのは、12匹のサラマンダー。後はこいつらを倒すだけ!
「それじゃあ、やろうか!」
「ポチは攻撃しちゃ駄目よ!分かってるわよね!?」
心外な、それは忘れてないぞ。
「手順通りいくよ!『ヘイトコントロール』!」
ミーアが囮スキルで敵の注意を引き付ける。危険だけど、セレスにはいかせないようにしないと。
私は隠密を使って隙ができた奴から始末していく。成る程、これが暗殺者のパーティーでの動きか。
ミーアは盾と片手剣で上手く攻撃をさばいているが、あまり負担はかけたくない。
巻き込みを避けるため、セレスは魔法を使えないので私がフォローしなくては。
「サポートくらいは出来るわよ。『ネガティブフィールド』!」
セレスが魔法を唱えると、ミーアの周りに黒いオーラが現れる。すると突然、サラマンダー達の動きが鈍くなる。
「相手を恐慌状態にする魔法よ。ほら今のうちに!」
「オッケー、いくよミーア!」
「うん!あと少しだしね!」
そして数分後、私達はポチ以外のサラマンダーの討伐に成功した。
「よし、確保っと‥.うわ、暴れるこいつ!」
ポチを抱き抱えるが、足を振って抵抗してくる。こいつめ、仲間が殺られてもまだ歯向かうか!
「大人しくさせたいなら、丁度いい魔法があるけど」
「あるの?じゃあ使ってよ。乱暴するわけにもいかないし」
ソーサラーって、意外と多様な魔法を使えるんだな。
「じゃあ‥.『ホラーエンチャント』」
黒い靄が私に飛んでくる。え、これ大丈夫?
不安になりながらポチを見ると、何故か怯えたように震えて大人しくなっていた。
「おー、すごい。どういう魔法これ?」
そう言って顔を上げるが、二人は目を逸らしていた。何、その微妙な顔。
「と、とにかく帰ろうよ。他のサラマンダーが出てこないとは限らないし」
「そ、そうね。ほら、早くそいつ繋いで。ずっと抱えてるわけにもいかないでしょ」
「う、うん‥.」
まあいいか。クエストは達成したしね。
「‥.軽い気持ちで使うんじゃあなかったわ」
ギルドで精算を済ませ、報酬を貰う。受付のお姉さんも様子がおかしかったが、一体何だ?
「あー、疲れたわ。一歩しくじれば大惨事だったわよ。次はちゃんとした作戦にしなさいよ?」
「無事で帰れたんだからいいじゃん。‥.ねえ、さっきからどうしたの?私の顔に何か付いてる?」
何故目を合わせないんだ。
「えーっと、セレスちゃん、教えてあげなよ‥.」
ミーアが促すと、セレスは苦い顔をしつつも話始めた。
「‥.さっきかけた魔法あったじゃない?あれって威圧感を上げる魔法なのよね」
「威圧感?私の?」
通りでポチが大人しくなるわけだ。‥.ってちょっと待て。
「それ、まだ効果続いてんの?」
セレスは重く頷く。そうか、私が怖く見えるから皆の態度が変なのか。そうかそうか。私が怖いのかあ。
「じゃ、じゃあ私達は帰るわね」
「う、うんまた明日ねキリルちゃん」
そうして立ち上がろうとした二人の手を握り、にっこり笑う。
「‥.なんか、言うことない?」
「や、やめて!今のあんたはどんな表情しても怖いから!」
「ごめんキリルちゃん!お祝いは明日にして!」
結局祝いは明日になったが、私は晩飯分の食費を確保することに成功した。
色々雑ですみません。
作者のINTは6です。