表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/121

97話 ヘヴィだぜ

ブクマ400件→(゜д゜)

本当にありがとうございます、感無量です。

活動報告も上げてます。

「これが魔界の街かぁ。あんま変わんないな」

 一夜明け、汚れたスラムから出て人通りの多い所までやって来た。


「街は私も来たことありませんね。人ってこんなにいたんですねぇ」

 エルがそんなことを言うが、こいつ魔界でどんな扱いだったんだろう。


 魔族っつっても、人と殆ど変わらない。

 ちらほらと角が生えていたり肌の色が独特な奴もいるが、人界でいう亜人みたいなもんだろう。

 あそこだって、獣人とかエルフとか混じってるもんな。種族間の軋轢はあまり無いようだ。


「因みにラトニアはなんか種族の特徴あんの?」

「私ですか?うーん、そういった話は聞かされていませんね」

 そうか。見た目は完全に人間だが、何かあったら知っておきたかったんだがな。

「となると、土壇場で『ラトニアの秘めたる力が目覚めた!』とかは期待出来ないか。ちょっとがっかり」

 はあー、自分の力に頼るしかないってことね。


「……これ、私が謝る必要はありませんよね?」

「ないない。キリルさんのいつものノリだって思って流した方がいいよ」

 なんか最近、ラトニアに距離をおかれているような。そしてラトニアとエルは近付いているような。




 駐屯兵を気にしつつ、ぶらりぶらりと街を巡る。

 美味しそうな匂いを発する店も多いが、生憎文無しだ。生殺しだこれ。


「物欲しそうな顔してんな嬢ちゃん。食ってくかい?」

 人当たりの良さそうなおっちゃんが、串に刺さった肉を向けてくる。

 おいやめろ、それは飯テロって奴だ。

「す、すいませんおじさん。買う余裕は無くて……ほら、行きますよ」

 エルがおっちゃんとの間に入り、やんわりと断って私の向きを変え背中を押し進める。

「キリルさん、涎拭いて下さい。それじゃあ食欲丸出しですよ」

「えっ……、あっ、ああ」

 口を拭うと確かに涎が付いていた。どうやら私の食欲は理性を簡単に凌駕するらしい。

 いかんいかん、こういう時こそ自制せねばな。二人に示しがつかない。

 ま、取り敢えず飯を買おう。話はそれからだ。


「金は……スラムの奴らからカツアゲでもしようか。はした金にしかならなそうだけど」

「カツアゲって何ですか?お金になることなら私も助力したいのですが」

 純粋な気持ちで聞いてくるラトニアに、今のは失言だったと気付かされる。

「いや、何でもない。金は他の手段でどうにかしようか」

 強盗とか、教育に悪いことはあまりしたくない。

 私にその義務は無いが、子どもは真っ直ぐ育ってなんぼだからな、うん。


「それで、街で何をするんです?お金が無いなら来た意味があまり無いような」

 私同様出店に視線を配りながらエルが聞いてくる。

「魔王軍についての評判とか知っときたいんだよね。結局私達、この戦争についてあんまり知らないからさ」

 人界側が押しているとか、そんな程度のことしか知らない。

 戦争を理解しようだなんて狂気の沙汰としか思えないが、関わってしまったならしょうがない。理解した上で壊してやろう。


「評判なら、私も調査しましたね……疑問を持っている方が多く見られました」

 ふむぅ?

 ラトニアが調査したのなら、恐らく魔界の中心部のデータだろう。そんなところでもその様子とは……。

 魔王は本当、何がしたいんだ。ただ勝ちたい、とは違う気がする?


(でもそれを考えるのは、まだ早いか)

 どうせ魔王は殺すだろうしなー、やりたくないけど。

 最終的に暴力以外の解決方法は見当たらないし、その時がくれば魔王に直接聞いてみよう。


「よっし、じゃあまずは街頭インタビューだ。いざって時に役立つかもしんないしな!」

 根掘り葉掘り聞き出そう。なるべく穏便に、強引にな!

「あっ、じゃああの人はどうです?見るからに怪しいですし」

 怪しい?


 エルが指差した方を見ると、白いローブで全身を包んだ謎の人物がいた。

 ていうか私とあと一歩ってくらいの距離にいた。


「えーっと、何?誰?」

 流石の私も急なコンタクトには焦る。

 その男か女かも分からない奴は更に接近してきて、私の匂いを嗅ぎ始めた。

「えと、お知り合いですか?」

 知らん知らん、こんな変態。


 寄りかかられたから分かったが、こいつ女だ。線が細い。

 女は何か確認するように私の体を観察した後、フードで隠れたままの顔を上げた。


「お前……転生者か……」

「……」

 おおっと、変態かと思ったらそっち関係か。

 嫌な予感がするので、答える前に距離を取る。

「魔王軍か、それとも同類か?」

 転生者ならさっきの奇行も納得出来るんだが。


 女は返答せず、何やら小刻みに体を震わせている。

 そして右手を広げ、こちらに向けた。

 その手は光を放っており、一線となってこっちに……


「ぷあっ、ぶなぁっ!」

 私の顔目掛けて一直線に放たれた光を間一髪で避ける。

 光線は奥の家に当たり、ぼっかりと穴を空けた。


「敵か、エル!」

「はっはい!ラトニア、逃げよう!」

 短刀を抜き、二人に離れるよう呼び掛ける。

「女ぁ!何とか言えよ、殺されてぇか!」

 恫喝するが、女は震えたままだ。

 やがて殺気を放ちながら、不安定な声を出した。


「お前は転生者……だと認めると。私の中では納得出来たよ。そうか転生者なんだな」

「うるせぇよ変態。人の匂い嗅いだと思ったらいきなり殺気放って攻撃たぁ、随分なご挨拶じゃねぇか。あ?」

 いきってみせるが、これは困ったな。

 街中であろうと構わず攻撃してきたあたり、魔王軍ではないのかもしれない。

 だったらまずいな、いざって時に住民を人質にとっても効果無いぞ。

 しかし女の殺気はどんとん膨れあがっていく。

 私構えてるだけだぞ?まさか転生者に恨みでもあるのか?


 女は私の質問に答えず、何か空を見上げ喋り出した。

「ああ、こうもまた会えるとは!神よ!この出会いに感謝いたします!」

「……ん?んん?」

「そしてご覧下さい、今に我が眼前に蔓延る悪しき者を消し去ってみせましょう!」

「ちょっ、待て!まず話をしろ!」

 何だこいつやべぇぞ!


「とぼけるな、お前が転生者であることは分かっている。神の使いである私の手によって、大人しく滅びろ」

「一言も理解出来ん。まずお前はなんだ、頭のおかしい奴か」

「はっ!やはり転生者はまともな思考が出来ないらしい。いいだろう、寛大な心を持って教えてやる。私はフェイダル・ドラライナ。偉大なる我が神、サリア様の使いである!」

「わかんねぇよ!あとサリア様って言ったな今!ふざけんな、あの人が現世に使いをよこす訳ねぇだろうが!」

「転生者風情がサリア様の名を語るなぁ!!!」

 女、フェイダルは突然大声を上げ、さっきの光線を周りに撒き散らした!


「無差別!?くそっ、ラトニアが危ない!」

 フェイダルは街を破壊しながら、尚もおかしなことを叫んでいる。

 こいつはクレイジーだ、放っておいたらどうなるか分からん!

「キリルさーん、私達はどうすれば!?」

「エルはラトニア連れて街の外出ろ!こいつは私が何とかする!」

 このままじゃ街が崩壊して多数の犠牲者が出る。

 騒ぎが大きくなったら魔王軍に動きを察知されるかもしれない。


「私は光龍だぞ!御使いだぞ!神の威光を目にして何故逃げ惑う、消えろぉっ!」

 今や奴の目に私は映っていないらしく、騒ぐ民衆を光線で焼きまくっている。

 てか光龍って、龍人族かよくそっ!化けもん相手とか聞いてねぇっ!


 土の砲弾を作り、何発もフェイダルに撃ち込む。

 弾は光線で消されたが、奴は私を捉えたようだ。

「おいイカれ野郎、お目当ての転生者はこっちだぞ。ついてこいっ!」

「転生者……?ああそうだった、冒涜者はお前か。消さねばならぬのは、お前かぁっ!」

 光線をこちらに集中させてきたので、壁をつくりつつ必死で逃げる。

 注意は引けた、取り敢えず今は逃げるのみっ!


 無茶苦茶な光線の軌道のせいでどんどん住民が死んでいくが、私はとにかく外へと走った。勿論エル達が逃げたのとは別方向に。


「消えろ、異物がぁ!」

「まずは落ち着けキ○ガイドラゴンっ!」

 ここまで話が通じないのは初めてだ!

地龍……自己中

炎龍……馬鹿

風龍……BBA

水龍……巨乳

闇龍……へたれ

光龍……狂信者 ←new!


もうやだこのドラゴン達

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ